日本の思想とは何か の商品レビュー
〈もの〉神と〈たま〉神という対概念を軸に、古代から近代に至るまでの日本の倫理思想史を読み解く試みです。 著者は「現存」という概念を中心に、日本という文化的環境における実存のありようについての考察をおこないます。ここでの議論は、「「倫」をひととひととのかかわりである間柄と捉え、「...
〈もの〉神と〈たま〉神という対概念を軸に、古代から近代に至るまでの日本の倫理思想史を読み解く試みです。 著者は「現存」という概念を中心に、日本という文化的環境における実存のありようについての考察をおこないます。ここでの議論は、「「倫」をひととひととのかかわりである間柄と捉え、「倫理」を間柄を存立させている条理、すなわちあるべき秩序であると解し」た和辻倫理学からの影響が見られます。ただし著者は、「さらに一歩踏みこんで「倫理」とは、ひとという類の「生」を存立させている条理はどのような条理なのか、いいかえれば、現存としてのよい「生」はどのような「生」であるのか」を問うべきだといい、「倫理学は現存の根本構造を解明し、よい「生」への衝迫の様態を論究する学問である」と結論づけています。これは、和辻倫理学の遺産を受け継ぎつつ、その問題点を克服する試みというべきでしょう。 そのうえで著者は、上述の観点から日本倫理思想史を読み解いていきます。教科書的でややそっけない叙述になっているところもありますが、一定の方法論に基づいて日本の倫理思想史の全体像を把握しようとする著者の意図は十分に理解できます。
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