コレモ日本語アルカ? の商品レビュー
長年の疑問を一冊の本が解決してくれた一例。 日本の作品において、中国人キャラクターが語尾につける「〜ある」の起源を追う。本書ではそれを「アルヨことば」と呼び、調査対象は主に文学作品となっている。(1980年代以降は漫画紹介天国で、「よくここまで調べ上げたなー」と執念すら感じた) ...
長年の疑問を一冊の本が解決してくれた一例。 日本の作品において、中国人キャラクターが語尾につける「〜ある」の起源を追う。本書ではそれを「アルヨことば」と呼び、調査対象は主に文学作品となっている。(1980年代以降は漫画紹介天国で、「よくここまで調べ上げたなー」と執念すら感じた) 実際「アルヨことば」で話す中国人を見かけず、謎に思われている方も多いと思う。頭にこびりついていた疑問が少しずつ剥がれていくようなアハ体験になりました笑 文学作品における最初の記録は何と宮沢賢治作品の中にある。 作品名は「山男の四月」という童話で、あの『注文の多い料理店』に収録されている。山男が見た夢に六神丸という薬を売る中国人が現れ、仕方なくそれを飲んだ山男はたちまち縮小化、行李の中に閉じ込められてしまう。そこで同じく縮小化した別の中国人と会い、山男は彼の助言に従って近くにあった丸薬を飲んで元のサイズに戻り、そして… 同じ中国人でも薬売りは「アルヨことば」をガッツリ使い、一方縮小化された方は完璧な日本語を使われていたのが印象的だったし、(夢オチものではあるが)話自体今読んでも面白い… 同時代の文芸雑誌『赤い鳥』に登場する中国人像は、A.手品や超能力に長けている B.人さらい C.敵対すべき存在のいずれかで描かれていた。(『サイボーグ009』の006こと張々湖にAの要素が受け継がれているっぽい。火を吹くところとか特に。メディアがあまり発達していなかったから、多少時代を経てもイメージが変わらなかったのかな) 六神丸売りにも当時の中国人像が投影されていると思うが、中国人だからと一括りしないところに賢治さん元来の優しさを感じる。 更に時代を遡ると「アルヨことば」の起源、幕末の横浜に行き着く。 ここでまた新たに用語を一つ。「アルヨ」に限らず、二つ以上の言語が接触する場で自然発生的に用いられる奇形的な言語を「ピジン」と呼ぶ。 日本語辞書が発刊されていたものの、それもあまり完全ではなかった模様。「横浜で通じればOK」のノリだったようで、当時の語彙集にはバリバリ欧米訛りのワードが列挙されている。(例:「大丈夫」→”die job”) また文末に「〜あります」を加えること、更に中国人は発音上の問題から「〜ある」を付けることも明記されているという。(!) 以降「アルヨことば」は「四月の山男」や、日清戦争以降の文学作品に登場する。(かの「のらくろ」シリーズでは、敵の豚軍が階級関係なく「アルヨことば」を多用している) 一方満州に渡った日本人達の間にも「ピジン」は流布していた。現地語を覚える気のなかった彼らは日本語を中国語風に読んだり、「〜ある」に倣って語尾に「〜有(ユー)」を付けたりと好き放題。日本人(或いは関東軍)が残していった言葉が抗日映画に使用されたり今でも知っている人がいたりする等、後半はしばしば苦い気分でいた。 「何も知らなかった子供時代に真似するのが好きだった『アルヨことば』の歴史を描き出し、ある意味で永遠に供養したい」と著者は語る。「満州ピジン」のように、成仏させてはいけない事実も心に刻もう。
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役割後ってのはキャラクターづくりなんだね。ステレオタイプと、東アジア人蔑視。反省しきり。文庫版の表紙のほうが内容によく合っていると思いました。
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「ヴァーチャル日本語 役割語の謎」の金水敏による中国人 役割語である「アルヨことば」の研究。その内容は多岐詳細 にわたり、アルヨことばのみならず、役割語研究それ自体の 奥深さを知ることができる。わたしにとってのアルヨことば はやはりサイボーグ009の張々湖やゼンジー北京あたりが ...
「ヴァーチャル日本語 役割語の謎」の金水敏による中国人 役割語である「アルヨことば」の研究。その内容は多岐詳細 にわたり、アルヨことばのみならず、役割語研究それ自体の 奥深さを知ることができる。わたしにとってのアルヨことば はやはりサイボーグ009の張々湖やゼンジー北京あたりが 印象深いが、当時から中国人が実際にこのような言葉を使う イメージはなく、キャラクタライズの一環のような受け止め だったような気がする。
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「〜アルヨ」の起源と派生を辿る本。1859年の開港、横浜言葉、「あります」語法、宮沢賢治、夢野久作などの文学作品、のらくろ、手塚治虫、高橋留美子といった漫画などを紹介。ステレオタイプの形成と歴史との関連が分かる面白い本でした。
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日本人と外国人・中国人との接触によって生まれた横浜ことばや満州ピジンである<アルヨことば>の諸相を文献資料によって幕末から現代まで見ていく。 キャラクターの系譜は童話(成人男性)→漫画(成人男性)→漫画(チャイナ少女)となり、語尾の「アルヨ/よろし」が衰退し「ね(ネ)」に変わって...
日本人と外国人・中国人との接触によって生まれた横浜ことばや満州ピジンである<アルヨことば>の諸相を文献資料によって幕末から現代まで見ていく。 キャラクターの系譜は童話(成人男性)→漫画(成人男性)→漫画(チャイナ少女)となり、語尾の「アルヨ/よろし」が衰退し「ね(ネ)」に変わっていく。
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2015.1.24市立図書館 役割語研究の第一人者が、中国人の台詞のマーカーとして広く認知されている役割語の一つ<アルヨことば>にフォーカスして、その起源や変遷を詳しく追っていく。子どもたちにもおなじみのとぼけた異人ことばの背景にくっきりうかびあがる歴史的政治的文脈にわけいり、今...
2015.1.24市立図書館 役割語研究の第一人者が、中国人の台詞のマーカーとして広く認知されている役割語の一つ<アルヨことば>にフォーカスして、その起源や変遷を詳しく追っていく。子どもたちにもおなじみのとぼけた異人ことばの背景にくっきりうかびあがる歴史的政治的文脈にわけいり、今や衰退しつつあるとみられる<アルヨ言葉>を供養する一冊。 宮沢賢治など大正期の童話、文明開化期の日本語学習書などにみられる横浜のピジン、戦前戦中の大陸で発生した満洲ピジンや簡易日本語(協和語)、そして戦後のマンガを始めとする創作作品などの中での使用例など、豊富な用例をたどって、<アルヨ言葉>が中国人のイメージをもった役割言葉として定着してきた道をたどり、戦前からのアヤシゲな手品師というステレオタイプに加えて最近30年ほどでチャイナ少女・カンフーなどのイメージも加わったこと、リアリティが求められる現代の作品では使われ方が慎重になって代わりに「ネ」がよくみられるようになっていることなど、流れがわかりやすくまとまっている。 <アルヨ言葉>にかぎらず、コミックや創作作品の中で「非母語話者の日本語」がどのように現れているのかは書き手の意識/無意識や読み手のイメージ形成などさまざまな要素が絡み合ってとても興味深いテーマだと思う。片言風という意味では、動物はじめ人間以外のものの言葉というのも要観察かも。 読了後、たまたま『中国嫁日記』というコミックを読んで、現代のリアルな中国人が話す日本語の描写としては促音(小さい「っ」)や長音(形容詞の「い」)の脱落、助詞の省略、そして「マス・デス」などのカタカナ表記で表されていることがわかった。なるほど。国際結婚や異文化間理解をテーマにした(外国人が日本語を話す設定のある)コミックエッセイはいろいろあるからその台詞を調べれば論文一本書けそう。
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役割語の典型例として挙げられていた「アルヨ言葉」の由来を明らかにする。「横浜ことば」に加え、「満洲ピジン」の実態が紹介されている。戦後に映画などで使われた鬼子ピジンについても。言葉もさることながら、満洲入植の実情も見えて、考えさせられた。
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日本において、中国人を表象するのに気軽に使われる「○○アルヨ」という「アルヨ言葉」について、その起源から現在までの使用例をつぶさに追った一冊。 アルカ言葉の始まりを探す前半パートは面白く読めたが後半は使用例の列挙にとどまって社会事情との関連まで踏み込んでなかったのがちょっと残念だ...
日本において、中国人を表象するのに気軽に使われる「○○アルヨ」という「アルヨ言葉」について、その起源から現在までの使用例をつぶさに追った一冊。 アルカ言葉の始まりを探す前半パートは面白く読めたが後半は使用例の列挙にとどまって社会事情との関連まで踏み込んでなかったのがちょっと残念だったかな。
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第47回天満橋ビブリオバトル テーマ「目からウロコ」で紹介した本です。 https://www.facebook.com/events/1453864824889945/permalink/1468281210114973/
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中国人日本語話者が実際にそう話しているのを聞いたことがあるわけではないのに、どうして「〜アルカ?」という言いまわしが「中国人」と認知されてしまうのか。コンパクトな1冊の中で、近代日本語が「異人のことば」をいかに表象してきたかをたどる、非常に興味深い仕事。 フィクションの中で「...
中国人日本語話者が実際にそう話しているのを聞いたことがあるわけではないのに、どうして「〜アルカ?」という言いまわしが「中国人」と認知されてしまうのか。コンパクトな1冊の中で、近代日本語が「異人のことば」をいかに表象してきたかをたどる、非常に興味深い仕事。 フィクションの中で「アルヨことば」が中国人と結びつけられた最も早い例は、いまのところ宮沢賢治「山男の四月」らしい(!)。だが、生前の賢治のネームバリューを考えれば、賢治が使って以後広まったとは考えにくい。「アルヨことば」は、西洋人の表象としての「アリマスことば」と同様、開港地横浜でのピジン(横浜ことば)に由来する。 一方、中国大陸で発生した「満洲ピジン」のような片言中国語は、戦後の中国にあっては、抗日映画に登場する日本軍人の「奇妙な中国語」=「鬼子ピジン」として残存している。実際には失われたピジンが大衆文化の中で生き長らえているという点で、「鬼子ピジン」と「アルヨことば」とは相同的な関係にあると言える。 1960年代までは、「アルヨことば」は、いかがわしい・怪しい・少し間が抜けた中国人成人男性が用いることばとして表象されていたが、1980年代以後は、カンフーが強く、やや知的に幼い「チャイナ少女」の属性として意識されるように。こうした中国人の表象は、日本の大衆文化の中でのみ自閉的に継承されており、現実の中国や中国人との接触による変容・影響をほとんど受けていないところに特徴がある。
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