クリスチャン・ケレツ 不確かな必然性 の商品レビュー
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スイスの建築家クリスチャン・ケレツによる作品集。タイトルにもつけられたキャッチコピーである「不確かな必然性と確かな確実性」これはケレツの建築論を表した文章である。完全に理解していないため、それぞれ二つに分けて推測してみる。 「不確かな必然性」について、ケレツは仕事を行う際に今までの仕事を一切忘れ、新しいプロジェクトごとに発想を変えていると言っている。過去を忘れることにより、「不確かな」状態から始まる。その不確かな状態だからこそ、生まれる新しい発想。それが「必然性」ではないだろうか。 不確かな状態であるからこそ、新しいアイデアが出るという必然性を「不確かな必然性」と表したのだろう。 次に「確かな不確実性」について、ケレツは自らの抽象的ルールを定めない。そのため建物が完成するか未完になるかは成り行き次第と言っている。 抽象的ルールとは各個人が持つ嗜好や美意識のことを指す。それを定めないと明言しており、そして建物の帰結は成り行き次第、つまり「確かな不確実」であることが分かる。 抽象的ルールを定めてしまうことは、同じようなデザインプロセスを経て、発見の無い似た建築を量産してしまうことだと考えたのだろう。そのようなことがないように過去を忘れ、新たなアイデアから出発する。どのような帰結になろうと、新たな発見をするために、危険を冒してまで冒険に出ているのだ。 本書最後にある一文がケレツの建築論を端的に表している。『建築とは冒険である。建築とは問いである。それはずばり「?」だ。』
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