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〈在る〉ことの不思議 の商品レビュー

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2023/11/05

ハイデガーを中心に存在論を解こうという前半はわかる〜わからないのちょうど境界線上を行ったり来たりするような内容で、すんなり飲み込めるわけではないが理解できないわけではないという、ある意味復習のようなテストのような哲学であった。難しくはあったが読んでいて楽しかった。後半、存在論から...

ハイデガーを中心に存在論を解こうという前半はわかる〜わからないのちょうど境界線上を行ったり来たりするような内容で、すんなり飲み込めるわけではないが理解できないわけではないという、ある意味復習のようなテストのような哲学であった。難しくはあったが読んでいて楽しかった。後半、存在論から人の在り方、そして能や仏教に話が進むにつれて著者の信仰告白のようなものを読んでいるのではないか、という気になった。詩的な哲学書と呼びたい。

Posted byブクログ

2012/08/02

西谷啓治、辻村公一といった京都の哲学者たちは、存在の「無-底」(Ab-grund)についてのハイデガーの思索に着目してきた。本書は、そうした京都の伝統を引く著者の思索を、あまりにも詩的な言葉でつづった研究書である。とはいえ、本書は読者を煙に巻くだけのこけおどしの難解さとは無縁だ。...

西谷啓治、辻村公一といった京都の哲学者たちは、存在の「無-底」(Ab-grund)についてのハイデガーの思索に着目してきた。本書は、そうした京都の伝統を引く著者の思索を、あまりにも詩的な言葉でつづった研究書である。とはいえ、本書は読者を煙に巻くだけのこけおどしの難解さとは無縁だ。むしろ明晰に語られているといってよい。 現実は、それを手にしたと思ったとたんに、私たちの手許からたえず逃れ去ってゆくような性格をもっている。非存在へと譲り渡され続けることにおいてのみ、私たちは存在に接することができる。こうした仕方で私たちが現実との出会いを果たす場を、著者は「現」(Da、うつつ)と呼ぶ。むろんここには、ハイデガーの「存在の明るみ」の思想が踏まえられている。「現」は、存在の根拠であるとともに、現実が理由なしに生起する場でもある。現実の根底に存するこうした原事実が、根拠=無根拠としての「無底」である。 さて、「現」において存在は、つねに非存在へとみずからを譲り渡し続ける限りで存在することができる。いま・ここにおいて私たちが出会うこの現実は、まさにこの瞬間において死にゆく。存在は、不断に死にさらされている。『存在と時間』におけるハイデガーの「死の分析」は、こうした事実に私たちが覚醒することを求めていると著者は理解する。 こうした仕方で、私たちははじめて現実との出会いを果たすことができるのであり、このことを著者は「存在神秘」と呼ぶ。本書は、刹那的に生起している「存在神秘」への覚醒を、読者へ呼びかけている。

Posted byブクログ