マンゴスチンの恋人 の商品レビュー
表題作「マンゴスチンの恋人」は読み応えがあった。 同性愛を扱った、若い人にも読んでもらえるような小説は少ないので本書は貴重だと思う。セクシャリティについて悩む十代が読むのにふさわしい。
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著者の名前から遠野なぎこが連想されるせいか、なんとなく手を出す気になれなかった遠野りりこ。無関係なのに連想されても困りますよね(笑)。全国の書店員が惚れ込んだという触れ込みに惹かれて読んでみることにしました。 4つの短編はいずれもセクシャルマイノリティが絡んでいます。 1話目...
著者の名前から遠野なぎこが連想されるせいか、なんとなく手を出す気になれなかった遠野りりこ。無関係なのに連想されても困りますよね(笑)。全国の書店員が惚れ込んだという触れ込みに惹かれて読んでみることにしました。 4つの短編はいずれもセクシャルマイノリティが絡んでいます。 1話目の表題作「マンゴスチンの恋人」は、年上の人妻と不倫関係に陥った女子高生の話。眼鏡女子が奔放な人妻に本気になる様子が妙に生々しく、正直なところこの1話目には不快感を抱き、苦手でした。 ところが2話目「テンナンショウの告白」からが面白い。1話目の女子高生の同級生で、市内全域の生徒がその名前を知っているような美少女が主人公。美人の運命か、普通にしていても上から目線だなどと陰口を叩かれる。心を開いてつきあえる友人はいないと思っていたところへ、音楽の好みが完璧に合う男子を発見。その男子はチビでオタクで地味、そのうえ自分の身体に悩みがあった。 3話目は「ブラックサレナの守人」。2話目の美少女のいわば取り巻き。美少女の機嫌を取っているが、腹の中は真っ黒。美少女から羨ましがられるようなものを持ちたくて援交を繰り返していたら、ある日、援交相手から脅迫を受ける。その相談をしたのが同級生で遅刻の常習犯、まるで覇気のない男子。トラブルを解決してくれたお礼に彼の頼みにつきあったところ、彼の秘密を知ってしまう。 4話目の「ヒガンバナの記憶」は、1~3話の高校に勤める生物教師が主人公。彼女はレズビアンで、生徒にカミングアウトするかどうかを悩んでいる。 それぞれこんな話です。タイトルとなっている植物は、生物教師の授業に出てくる、繁殖に特色のあるものばかり。それをセクシャルマイノリティと掛け合わせた描き方が巧い。 高校生の持つ孤独感、劣等感、焦燥感なども丁寧に書き上げられ、4話目を読み終えたときには1話目とまったく異なる印象を抱きました。特に2話目と3話目が好きです。切なくて○。
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2016、初読書。 やっぱり女は、面倒で、結局、女は面倒だ。 何してんだよと少し苦しくなりながら読んだ。 でも、愛おしく思ってしまうよ 女は男より幸せであってほしい。 とかね、ふいー。
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セクシャルマイノリティをよく描いている。心理描写もすごい。一人一人に合わせて、人格を変えている。やっぱ作家ってすごいな。高校生の心もよくとらえている。特に、三つ目の、幼馴染の女の子の心理の描き方、どんでん返しがすごい。見入った。最後の虚しさもすごい。一の方とかのが手は込んでるんだ...
セクシャルマイノリティをよく描いている。心理描写もすごい。一人一人に合わせて、人格を変えている。やっぱ作家ってすごいな。高校生の心もよくとらえている。特に、三つ目の、幼馴染の女の子の心理の描き方、どんでん返しがすごい。見入った。最後の虚しさもすごい。一の方とかのが手は込んでるんだろうけど、力抜いてるくらいが、読み手には読みやすかった。
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薄っぺらな「好き」ならいらない 帯に入った言葉で思わず手に取ってしまった土曜日の深夜。読了した朝5時。 セクシャルマイノリティのそれぞれの想いを描いた作品。実森と雪村の関係が一番好きだ。山本とキリコは勝手にやってろ!魚住天と葵はなんだか胸をナイフで刺された痛みの走る話だった...
薄っぺらな「好き」ならいらない 帯に入った言葉で思わず手に取ってしまった土曜日の深夜。読了した朝5時。 セクシャルマイノリティのそれぞれの想いを描いた作品。実森と雪村の関係が一番好きだ。山本とキリコは勝手にやってろ!魚住天と葵はなんだか胸をナイフで刺された痛みの走る話だった、天も葵も救いようがない。笙子と梢も勝手にやってろ。 ひとつの物語で4人の登場人物それぞれの事情を描いた作品だけど、感想は上の通り。 正直笙子と梢の話は蛇足だった。高校生の登場人物の話をもっと読みたかった。スズと塚田の話があってもよかったのに。 剥き出しの感情でする恋に、読んでいて懐かしさを覚えた。そんな恋は久しくしていないから。 キリコの「誰かを好きになる気持ちを具現化すると、わたしには取り出した内臓のようにグロテスクなものに見え」という表現、すごくしっくりくる。
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主人公がくるくると変わる連作小説というのが、あまり好きではなかった。 いくら主人公に感情移入していても、あっという間に断ち切られてしまう。 まだこの人物の物語を読んでいたいと思うのに、容赦なく別の人物の新たな物語をずいと無遠慮に差し出される感じ。 けれど、ここ数年で良質な作品...
主人公がくるくると変わる連作小説というのが、あまり好きではなかった。 いくら主人公に感情移入していても、あっという間に断ち切られてしまう。 まだこの人物の物語を読んでいたいと思うのに、容赦なく別の人物の新たな物語をずいと無遠慮に差し出される感じ。 けれど、ここ数年で良質な作品と出逢い、連作も良いものだと感じ始めている。 『桐島、部活やめるってよ』『終点のあの子』『太陽の坐る場所』、そして『マンゴスチンの恋人』。 肌に合う文章というのは、水をこくこく飲むように、心地よく読み進めてしまう。 セクシャルマイノリティの物語とあるけれど、教室の息苦しさや、ヒリヒリするような人間関係の痛みだったり、自分も昔むかしに経験したことがあるような懐かしさを感じながら読み終えた。
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