リスボン坂と花の路地を抜けて の商品レビュー
リスボンの懐かしく、親しみやすさが感じられた。 写真がたくさんで眺めているだけで楽しい。 エッグタルト、魚介類、ファド、アズレージョ、坂の街、路面電車。
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「ヨーロッパ最後の田舎」と言われるリスボンはポルトガルの首都である。 本書は南ポルトガルに長く住む著者が、旅人の目でリスボンを見つめ直し、巡り歩いたフォトブックである。 行きずりの観光客でもリスボンっ子でもない著者による紹介は、ディープでありながら親しみやすい。美しい写真が満載な...
「ヨーロッパ最後の田舎」と言われるリスボンはポルトガルの首都である。 本書は南ポルトガルに長く住む著者が、旅人の目でリスボンを見つめ直し、巡り歩いたフォトブックである。 行きずりの観光客でもリスボンっ子でもない著者による紹介は、ディープでありながら親しみやすい。美しい写真が満載なのも楽しい。 有名な名所旧跡をくまなく回るわけでもなく、気の向くまま、ある意味、個人的嗜好の強い旅であるが、それだけに通り一遍ではなく、著者とともに旅をしている気分が味わえる。 鰯の塩焼きや、豆を煮込んだフェジョアーダ。カニみそにワインを注ぐのもおいしそう。リスボンにはさまざまな庶民の味がある。 パステル・デ・ナタ(エッグタルト)をつまみ、さくらんぼの酒を味わい、石畳の坂をそぞろ歩く。路面電車に乗ってスリに遭遇したり、香水を量り売りする小さなお店を見つけたり。 青い花に誘われてジャガランタの咲く通りを探しに行く。 イスラムの影響を受けたという、タイル装飾アズレージョを見つけながら歩く。 抜けるような青い空。鮮やかで色とりどりの花。照りつける日差し。 この美しい街にはしかし、底抜けの明るさだけが漂うわけではない。写真の中の街のそこここに、どこか、哀愁が感じられる。 それは古い歴史のゆえだろうか。かつての栄光のためだろうか。 エネルギーに任せた若さというよりも、酸いも甘いも噛み分けた大人の魅力をたたえた街、それがリスボンなのかもしれない。 著者はリスボンを旅するのに、リスボンをよく知るガイドの利用を薦めている。生身のガイドには及ばないかもしれないが、この本もまたよき「ガイド」だろう。 *著者あとがきに、「地理音痴」とある。なるほど、そうだろうなと思う。各章に地図は添えられているが、本文を読むと、地図を読み、あるいは地図を頭に入れて歩いているようにはあまり思えない。自分も方向音痴なので、ちょっと親近感が涌く。 *タブッキ『レクイエム』を読み直しつつ。リスボンには彷徨がよく似合うのかもしれない。
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