朝の霧 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
長宗我部元親旗下の武将波川玄蕃を主人公とした連作短編。 有能な武将を部下とするジレンマ。目下に対する嫉妬羨望というのは醜いが、戦国時代の下剋上という習わしの元では、それが防衛本能にもつながり、元親の所業もやむを得ない部分もあったのかも知れない。 いや、今の時代においても、人の有能さや人望に嫉妬する元親タイプの人間って少なからずいて、そいつらが意外と出世階段の上段にいたりすることも多い。意外と妬み嫉み嫉妬羨望ってのは、のし上がっていくためのスキルだったりモチベーションになったるするのかも知れない。 俺もそういう気持ちをもったりするが、イヤなヤツになってるだろうなと思うし、そういう気持ちが重しになってかえって行動や習慣に悪く作用していると思うのだが、その重しを持ち上げるメンタルが出世階段を上る武器になるのかも。 そんなスキルならいらんけど。であれば、玄蕃のように爽快に生きたいと思うけど。
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長宗我部氏の有力家臣・波川玄蕃を主人公とした時代小説。謀反を企てたとして長宗我部元親に滅ぼされた。『朝の霧』では玄蕃は名将であったが、元親に嫉妬され、次々と失脚の罠を仕掛けられた描かれる。『朝の霧』では最後まで謀反を考えていないが、これに近いことがあれば謀反を企てたとしても自然と...
長宗我部氏の有力家臣・波川玄蕃を主人公とした時代小説。謀反を企てたとして長宗我部元親に滅ぼされた。『朝の霧』では玄蕃は名将であったが、元親に嫉妬され、次々と失脚の罠を仕掛けられた描かれる。『朝の霧』では最後まで謀反を考えていないが、これに近いことがあれば謀反を企てたとしても自然と思えるものである。前漢の韓信も同じであるが、最初は謀反を考えていなくても上の冷たい仕打ちで謀反に至ることは珍しくない。 『朝の霧』では元親のイメージが変わる。元親は「土佐の出来人」と呼ばれ、土佐を統一し、四国統一に迫った。英雄的な戦国大名と評される。しかし、『朝の霧』の元親は醜い。織田信長の評価「鳥なき里の蝙蝠」に近い。 群雄割拠する土佐や四国を短期間で統一することは、かなり無理を重ねなければできないことである。侵略された個々の勢力の不満は残存する。毛利元就のように大内と尼子という巨大勢力を滅ぼし、それがそのまま自分の領土になるというものではない。豊臣秀吉の四国平定で脆くも敗北した背景には、この不満もあるだろう。 『朝の霧』には「できもせんことを気合いだけで始めたりしたらいかん」との台詞がある(183頁)。昭和の精神論根性論に対する批判になる。21世紀から見ると昭和の精神論根性論は古いが、。昭和が異質であって、日本の伝統に立脚したものではない。もっと古い時代から見ても昭和が異常であった。
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武士社会の理不尽さとそれに付随する死に様、生き様を描いた時代小説。屍を片付ける兵士に手出しをしない軍、平服で臨む漢への対応。随所に滲む気高き情緒に、この心情が理解できる日本人で良かったと思わずにはいられない。
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山本一力作品としては珍しい歴史上の人物を扱った作品で戦国武将で有名な四国の長宗我部元親の家臣の波川玄蕃を主人公に扱った話で、どこまでが史実に基づいているのかは不明ですが、本作では、波川玄蕃という人格的にも知将としても素晴らしい才覚のある武将であったが、その人望と才覚ゆえに主君であ...
山本一力作品としては珍しい歴史上の人物を扱った作品で戦国武将で有名な四国の長宗我部元親の家臣の波川玄蕃を主人公に扱った話で、どこまでが史実に基づいているのかは不明ですが、本作では、波川玄蕃という人格的にも知将としても素晴らしい才覚のある武将であったが、その人望と才覚ゆえに主君である元親に妬まれたあげく、言いがかりで切腹を命じられ、それを甘んじて受け入れたにも関わらず、その後、波川一族が元親によって殲滅されられるという悲劇的な内容になっております。 この話だけ見れば元親という武将は肝の小さい男だったのだと思いますが、果たして真実はいかに?
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あまりに爽やかな武将とその一族。 なんでもありの戦国の世で、謀略や裏切りでのし上がったものも多いが、このような生き方を選んだ人もいたのだろう。
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機内Wi-Fi繋がらず、諦めて読書。ここで作業する予定だったからスケジュールの狂いは痛い。さて、この人の作品には珍しく、戦国武将とその妻、と言うプロット。波川玄蕃と言う、長宗我部元親支配下の武将の話。山本一力のもう一つのベースである土佐ものだが、時代と登場人物が普段と全く異なるの...
機内Wi-Fi繋がらず、諦めて読書。ここで作業する予定だったからスケジュールの狂いは痛い。さて、この人の作品には珍しく、戦国武将とその妻、と言うプロット。波川玄蕃と言う、長宗我部元親支配下の武将の話。山本一力のもう一つのベースである土佐ものだが、時代と登場人物が普段と全く異なるのに、機微の描き方が割と似通うのでちと違和感。史実に脚色を加えたものとは言え、元親があまりにも卑屈な人物に描かれるのもなぁ。この人のうまさは市井の人々の暮らしと心意気を文にするとこだから、やはり損料屋喜八郎シリーズとかのがフィット感は良い。まあでもたまには。江戸もの描き飽きたのか、最近土佐もの大作系多いよねえ、次はジョン万次郎の話あたり読んでみるかな。
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山路城の本丸から見上げる満月は、伸ばした手が届きそうなばあ近いところに・・あるらしい・・^^私もそこで、十五夜のお月見をしてみたいです。
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【長宗我部元親がもっとも恐れた男の悲劇】長宗我部元親の妹を娶った名将・波川玄蕃。幸せな日々はやがて、悲劇へと大きく舵を切る。戦乱に輝く夫婦の情愛が胸を打つ長編傑作。
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