西田幾多郎と仏教 の商品レビュー
浄土真宗を信仰する母に育てられ、長じて禅に親しむことになった哲学者の西田幾多郎について、その生涯と思想における仏教とのかかわりを論じた本です。 本書は二部構成になっており、第一部では西田がどのようなしかたで仏教に関心をいだくようになったのかということを、とりわけ鈴木大拙とのあい...
浄土真宗を信仰する母に育てられ、長じて禅に親しむことになった哲学者の西田幾多郎について、その生涯と思想における仏教とのかかわりを論じた本です。 本書は二部構成になっており、第一部では西田がどのようなしかたで仏教に関心をいだくようになったのかということを、とりわけ鈴木大拙とのあいだの思想的影響関係などについても目配りをしながらたどっています。第二部では西田の思想に立ち入り、仏教との関係について論じています。とくに西田の最後の論文「場所的論理と宗教的世界観」のテクストを参照して、「逆対応」と「平常底」という概念が仏教の考えかたとどのような対応関係にあるのかということを解き明かす試みがなされています。 西田幾多郎といえば、参禅の経験をもつ哲学者であり、その思想にも禅の影響があることはしばしば指摘されていますが、著者は禅とともに親鸞の思想が西田に影響をあたえていることを重視しています。西田は、宗教を自己自身を問う営みとして理解しており、絶対者の自己否定と「個」としての自己の「逆対応」の関係を解明することをめざすとともに、そのような自己が「作られたものから作るものへ」というしかたで世界における実践へと向かうことを重視しており、著者はそうした自己に対するまなざしが西田を親鸞の思想に近づく理由となっていたのではないかという解釈を示しています。 西田のテクストからの引用がかなり多くおこなわれているのですが、それぞれの文章の意味について充分な解説がなされていないように思われるところもあり、やや難解に感じられました。
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