プロット・アゲンスト・アメリカ の商品レビュー
【パラレルな「あの時以降」】世界史の決定的に重要なタイミングで,ルーズヴェルトの3選ではなく,ユダヤ人に対する偏見を抱いていたリンドバーグがアメリカ大統領に当選していたら......。卓越した想像力に基づいて描かれた歴史改変小説です。著者は,アメリカ文芸界の大御所とも言えるフィリ...
【パラレルな「あの時以降」】世界史の決定的に重要なタイミングで,ルーズヴェルトの3選ではなく,ユダヤ人に対する偏見を抱いていたリンドバーグがアメリカ大統領に当選していたら......。卓越した想像力に基づいて描かれた歴史改変小説です。著者は,アメリカ文芸界の大御所とも言えるフィリップ・ロス。訳者は,現代アメリカ文学の翻訳に関しては第一人者と言える柴田元幸。原題は,『The Plot against America』。 ひたひたと足元に迫るかのように描かれる憎悪や偏見の描写に、空恐ろしい気持ちにさせられること間違いなし。見事だなと思うのは,リンドバーグは背景として控える存在として描かれており,それに背中を押される形で悪しき世界が現場レベルで展開していくという構成になっている点。いつの時代に読んでも得るところの大きい小説だと思います。 〜不測の事態の恐ろしさこそ,災いを叙事詩に変えることで歴史学が隠してしまうものなのだ。〜 読みやすい翻訳も☆5つ
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今年の5月に亡くなったフィリップ・ロスの「ありえたかもしれないアメリカの歴史」を描いた小説である。 大きな政治的な動きを、市井の家族の生活が少しずつ変わっていく過程からとらえているが、実際に歴史の流れというのはそんなふうにわたしたちを取り巻きながら推移していくのだろうということを...
今年の5月に亡くなったフィリップ・ロスの「ありえたかもしれないアメリカの歴史」を描いた小説である。 大きな政治的な動きを、市井の家族の生活が少しずつ変わっていく過程からとらえているが、実際に歴史の流れというのはそんなふうにわたしたちを取り巻きながら推移していくのだろうということを実感させられる。
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単純に良くできた歴史解説書を読むように読みました。このようなフィクションによりもう一方の歴史というフィクションがどのように描かれ、成り立っていったのを理解する。
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リンドバーグねぇ、「翼よあれがパリの灯だ」と子どもが誘拐されて殺されたのは知ってたけどナチシンパやったのは知らんかった。で、そのナチシンパがアメリカ合衆国大統領になってたら、という歴史改変モノ。正直少年の成長物語って苦手なんだけど、その部分込みでもナチスドイツとはまた違う、真綿で...
リンドバーグねぇ、「翼よあれがパリの灯だ」と子どもが誘拐されて殺されたのは知ってたけどナチシンパやったのは知らんかった。で、そのナチシンパがアメリカ合衆国大統領になってたら、という歴史改変モノ。正直少年の成長物語って苦手なんだけど、その部分込みでもナチスドイツとはまた違う、真綿で首を絞めるような反ユダヤ策に追い詰められる感じが上手いなぁ。惜しむらくは最後がとってつけたようなドタバタなのがもったいないかなぁ。ストーリー展開が無理矢理なのは我慢できるにしても言葉足らず過ぎて。いや、主人公の目から見えてる話で書いてるからにしても。
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1940年。もしもアメリカが自由と民主主義の国ではなく、ヒトラーのドイツと同じく、ファシストの国になろうとしていたら。そして、もしもそのとき、自分がキリスト教徒の子供ではなく、ユダヤ人の子供だったら。7歳の子供の目から見える全世界、安らかだった社会から徐々に追い詰められていく様子...
1940年。もしもアメリカが自由と民主主義の国ではなく、ヒトラーのドイツと同じく、ファシストの国になろうとしていたら。そして、もしもそのとき、自分がキリスト教徒の子供ではなく、ユダヤ人の子供だったら。7歳の子供の目から見える全世界、安らかだった社会から徐々に追い詰められていく様子は、読んでいる自分まで不安になった。
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「好感度高い。戦争反対」 「実績十分、参戦やむなし」 自国のリーダとして、あなたならどちらを選びますか。 架空歴史小説である本作では、アメリカ大統領として前者が選ばれます。大部分の国民には、大統領がナチス信望者であることは、些細なことなのでしょう。 「だって私には関係ないから」...
「好感度高い。戦争反対」 「実績十分、参戦やむなし」 自国のリーダとして、あなたならどちらを選びますか。 架空歴史小説である本作では、アメリカ大統領として前者が選ばれます。大部分の国民には、大統領がナチス信望者であることは、些細なことなのでしょう。 「だって私には関係ないから」 「だって私はユダヤ人ではないから」 という出来事が、ユダヤ人家族を通して描かれる。生活がじわじわ変質し追い詰められていく様はホラー小説より怖い。それも露骨ではなく、緩やかに進んでいくことで、世論に浸透していく様も恐ろしい。 なにより、同じよう状況が起きたとき、私自身がどっちに転ぶかわからないことがたまらない。何を判断基準にすべきなのか。共感の力がこんなに容易く奪われるなら、「迫害」を容認してしまうんじゃないかと恐れてしまうのだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
世界ではじめて大西洋横断単独飛行を成功させた英雄、リンドバーグ。しかし、反ユダヤ主義者でナチスのシンパである彼の政治的な一面はあまり知られていないようです(というかこの本を知るまで僕も知らなかった…)。そして、次期大統領の呼び声も高かったリンドバーグがアメリカ大統領に実際に選出されていたら…、という架空の歴史で描かれる小説。 子どもたちの懐柔からはじまり、少しずつユダヤ人のコミュニティを破壊していく政策は、突然強制収容所に連行するほど暴力的なものではありませんが、それだけに気味の悪いリアリティを感じました。大統領の思想に後押しされる形で、国民の間にも露骨な差別感情が広まり、ユダヤ人のゴシップ・キャスターが公然と大統領批判をアメリカ各地ではじめたことをきっかけに、暴動にまで発展します。 物語の性質上、政治的な社会状況が多く語られますが、これはあくまで家族の物語。保険の営業マンとして成功しつつあった父は職を失い、母は頑固な夫に冷笑を浴びせ、叔母の感化をうけた兄は大統領支持者として家族から離れていく…。不条理な世界に投げ込まれ、変わっていく人々の姿はカフカの小説を彷彿とさせます。 終始希望は語られませんが、暴動後に毅然とした対応をとる母親はとても感動的。追い詰められても、保身に走らずヒューマニズムを発揮することってできるんですね…。 ありえたかもしれない恐ろしい過去は、これまでずっと起こってきた過去だし、これから起こりうる未来なのだと、そんなことを読後に感じました。
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もしもあのときあの選択をしていたら起こった歴史とは。第二次世界大戦へ参戦をきめたルーズベルト大統領、時は1940年、ルーズベルトは再選されず、大西洋横断したアメリカの英雄がリンドバーグが大統領に選ばれている。ルーズベルトがポリオで半身不随の車いす生活であったことをこの本の主人公の...
もしもあのときあの選択をしていたら起こった歴史とは。第二次世界大戦へ参戦をきめたルーズベルト大統領、時は1940年、ルーズベルトは再選されず、大西洋横断したアメリカの英雄がリンドバーグが大統領に選ばれている。ルーズベルトがポリオで半身不随の車いす生活であったことをこの本の主人公のロス少年(作者と同姓同名)は知っている。“ポリオの不具者より健康的なヒーローが後任になる”ことを求めたアメリカ国民。しかしリンドバーグはヒットラーに勲章を与えられた反ユダヤ主義者とされ、アメリカ在住のユダヤ人は差別されるようになっていく。 ----- 読者として想定されているであろう今のアメリカ国民がルーズベルト大統領をどういう位置付けで見ているのだろうか。ルーズベルトでなければ戦争はなかったか?リンドバーグが大統領になれば戦争はなかったか?いやいや、ユダヤ人排斥は加熱し、戦争は起こる。著者はおそらくオーウェルの『一九八四年』を意識したのではないか。 アメリカでの出版は2004年、大統領はまだ息子ブッシュであった。これいつか映画化になるんじゃないかな。日本人が面白がるかどうかは分からないけれど。タイトルはあえてそのまま。(現在の)アメリカに反するプロット。もうちょっと分かりやすい日本語にしてもよかったんじゃなかろうかと思うのだがそのままにしたかった柴田氏の意図があるんだろうな。
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おそらく作者が想定している読者、大人のアメリカ国民、に比べて、日本生まれ日本育ちの我々は幾分「人種差別」への感度が鈍いと思うが、子どもの視点で書かれている分、その曖昧模糊さ加減の焦点が合ってたみたいで、がっつり不安を掻き立てられる。ラスト1/4から衝撃の展開。そう来るか!!!
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1940年、もし反ユダヤ主義のリンドバーグが大統領になっていたら、という歴史改変小説。じわじわくる恐怖、中でも、希望や正義を信じているうちにいつの間にか逃げ道がどんどんふさがれていく様が恐ろしい。とはいえ、8,9歳の少年の視点のため、どことなくユーモラスな雰囲気も漂い、さすがに手...
1940年、もし反ユダヤ主義のリンドバーグが大統領になっていたら、という歴史改変小説。じわじわくる恐怖、中でも、希望や正義を信じているうちにいつの間にか逃げ道がどんどんふさがれていく様が恐ろしい。とはいえ、8,9歳の少年の視点のため、どことなくユーモラスな雰囲気も漂い、さすがに手練の小説。よその国の、しかも想像上のできごととは読めないところが哀しい..
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