たとえ傾いた世界でも の商品レビュー
2024年3冊目。 インガソルがメチャクチャ好きでマジでカッコいい。 映画化してほしい。 年齢がだいぶ違うけどインガソルはクリスチャンベイルで想像してました。
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「自分は通り過ぎていく人間だと思っていた。 上を通り、下を通り、通り過ぎる。」 孤児で第一次大戦で兵役を経て、密造酒取締官を業としている主人公インガソルは、自分の人生をそう考えていた……一人の赤ちゃんを拾い、一人の女性と出会うまでは。 1926年から27年夏までに幾度も発生した...
「自分は通り過ぎていく人間だと思っていた。 上を通り、下を通り、通り過ぎる。」 孤児で第一次大戦で兵役を経て、密造酒取締官を業としている主人公インガソルは、自分の人生をそう考えていた……一人の赤ちゃんを拾い、一人の女性と出会うまでは。 1926年から27年夏までに幾度も発生したミシシッピ川流域の記録的な洪水。 いつ終わるともしれない長い雨によって、繰り返しミシシッピ川とその支流が氾濫し、人人の生活を壊していった。 特に、農業労働力であるアフリカ系アメリカ人の被害は甚大で、直接被害がなくても農場が駄目になり職を失うことにもなった。 物語は1927年4月、アメリカは有名な「禁酒法」の時代、弱弱しい太陽と刻々と高まる川の水位のなか、インガソルは相棒のハムとともに行方不明になった同僚の調査のために潜入捜査にはいる。 そこで偶然拾うことになる孤児の赤ん坊が縁で、密造酒作りの女性と出会う。 ハヤカワ・ミステリ新書版の帯にあるように「これは、愛の物語」。 特に、終盤は息をつかせない展開で、パニック映画さながらのアクションシーンが満載。 少し表現が気になったり描写がくどく感じるかもしれないけど、エンディングがとてもよいので、すべて許される……そんな物語でした。
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「ねじれた・・・」が大好きなので、心待ちにしていた一冊。面白かった。その場にいるかのようなリアルな情景描写や、過去の回想を挟んでくるところが、印象的。楽しませていただきました。
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1920年代のアメリカ ミシシッピ川大洪水 洪水のシーンは凄い迫力。二百人以上の犠牲者と記録にはあるが、本当はもっとかもしれないらしい。黒人の労働者は記録に残っていなかったのだろう。 赤ちゃんの愛らしさと、母になりたい切実な女の気持ちがリアル。
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1927年にミシシッピ川流域でアメリカ史上最大の洪水が起こったことはとても有名な史実であるにも関わらず、米国民の大方からは忘れられているという。その時代、その災害のさなかで密造酒作りを稼業に選んだ夫を持ったディキシー・クレイは、幼い子を洪水で失い、今では自ら密造酒作りの日々を送...
1927年にミシシッピ川流域でアメリカ史上最大の洪水が起こったことはとても有名な史実であるにも関わらず、米国民の大方からは忘れられているという。その時代、その災害のさなかで密造酒作りを稼業に選んだ夫を持ったディキシー・クレイは、幼い子を洪水で失い、今では自ら密造酒作りの日々を送っている。 そこに一家惨殺の生存者である赤ん坊をひょんなことから連れ歩いていた密造酒取締官インガソルが現れ、ディキシー・クレイのもとに神の子を授ける。それが皮肉な運命の出逢い。水は方々で土手を決壊させ、多くの街を水底に呑み込んでゆく。この世の終わりとも言うべき1927年の世界の中で葛藤する男と女の出逢いを描く、南部の叙事詩が本書である。 この骨太の愛の物語を書き綴った語り部は、衝撃の短編集『密猟者たち』で、凄まじくぼくの心臓を打ち抜いたトム・フランクリン。ただし、今回は夫人との共同名義であり、その婦人は詩人であるという。そう言われてみれば、このフランクリンの初めて目にする長編作品、とても骨太でありながらたまらなく叙情的だ。映像で言うならばサム・ペキンパの世界。 常に轟轟と流れる大量の水の重低音をバック・ミュージックにして、時折り流れる硝煙の匂い。そこに生き抜こうとする大自然と戦う人間たちの姿。命を玩具のようにジャグルする非情な悪党たちと、南部男を象徴するような圧倒的存在感を見せる先輩取締官ハム・ジョンソン。 アメリカの歴史と時間とその世界の空気をまでも包括して表現しようとする作家の意気込みに溢れたペンワーク。これぞ小説! と言いたいくらいに印象的で、セピア色したノスタルジー・カラーいっぱいの力作活劇であり、大仕掛けな恋愛物語なのである。モルト・ウイスキーのストレートみたいな作品をお求めの方に!
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