チューリングの妄想 の商品レビュー
面白い。ボリビアと暗号とハッカー。ボリビアだけが異質にも感じるけど、ボリビアだからこその歴史と問題の中での物語。章ごとに7人の登場人物の視点から語られ、文体もそれぞれ変わるのに先ず面食らうけど、それぞれの登場人物の立ち位置を受け入れられるとぐっと物語に引き込まれる。ただし閉塞的な...
面白い。ボリビアと暗号とハッカー。ボリビアだけが異質にも感じるけど、ボリビアだからこその歴史と問題の中での物語。章ごとに7人の登場人物の視点から語られ、文体もそれぞれ変わるのに先ず面食らうけど、それぞれの登場人物の立ち位置を受け入れられるとぐっと物語に引き込まれる。ただし閉塞的なボリビアの社会で目指す世界はよく見えない。あまりにも現実と過去に足を引っ張られてしまう。チューリングの暗号解読を大きな一助として連合国が打倒したナチスが現代にも影をさすのは南米ボリビアならでは。
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ボリビアのテクノスリラー、と言う耳慣れないキャッチコピーが気になり気になり手に取った瞬間から一気に読了。凄腕の暗号解読士として「チューリング」の二つ名を持つ「お前」は、アナログの暗号通信からネット回線を使ったコミュニケーションへと時代が変遷するにつれ、機密組織ブラック・チェンバー...
ボリビアのテクノスリラー、と言う耳慣れないキャッチコピーが気になり気になり手に取った瞬間から一気に読了。凄腕の暗号解読士として「チューリング」の二つ名を持つ「お前」は、アナログの暗号通信からネット回線を使ったコミュニケーションへと時代が変遷するにつれ、機密組織ブラック・チェンバーでのかつての地位を追われ、過去の遺物を整理する閑職に追いやられていた。そこで同時期に発生する反民営化・反グローバリゼーションを謳う<抵抗運動>のサイバーテロと<連合>のデモ。チューリング、そして彼を取り巻く人々の72時間は。マジックリアリズムや軍事的暴力で捉えられがちなラテンアメリカ文学とは一線を画す雰囲気。トラディショナルな街頭行進や投石によるデモ行為と対照的な現代的サイバーテロ運動だが、結局現状の政権への異を唱えるだけで代替案を用意出来ていない点では同じ、という誰かの言葉に耳が痛くなった。暗号を生成する側、そして解読する側…と繰り返し転生し続けた電気蟻の存在の無為さと通ずる点があるのでは…。目的のための手段に過ぎない「行為」に人生を捧げてしまった男達の嘆きのエレジーにも思えた。
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ボリビアを舞台にしたサイバーSF。 帯にはテクノスリラー小説って書いてあったけど、テクノスリラーってなんだろ? ラテン文学的な要素+SF+ミステリという面白要素たくさんなので、楽しめたっちゃあ楽しめた。 ただ、登場人物の客観的描写→登場人物の心の声、ていうスタイルがずーと律儀に...
ボリビアを舞台にしたサイバーSF。 帯にはテクノスリラー小説って書いてあったけど、テクノスリラーってなんだろ? ラテン文学的な要素+SF+ミステリという面白要素たくさんなので、楽しめたっちゃあ楽しめた。 ただ、登場人物の客観的描写→登場人物の心の声、ていうスタイルがずーと律儀に最初から最後まで守り通されているんだけど、「心の声」いるかな、、、て感じででした。 こんな感じ 「彼は目が覚めるとすぐにコーヒーを一口飲んで顔をしかめた。 ”いつもより苦いな。あぁ、そうだった。昨日の帰りがけにコーヒー屋に寄ったときに、手持ちが足りなくてスーパーの安売り品を買ったんだった。最近の物価高は困ったもんだ。いったい政府は何をやっているんだ。”」 説明されすぎて想像の入る余地が無くなっちゃう。 あと誤植が多い。
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ラテンアメリカと暗合とITと。 かつて諜報機関で暗号解読者として活躍し、今はIT音痴で閑職に追いやられている初老の主人公(頻尿)。 ハッカーたちがゲームの仮想空間でグローバリゼーションに対して革命を起こすのだけれど、その道具立てと行動自体がグローバリゼーション進行の証左でしかない...
ラテンアメリカと暗合とITと。 かつて諜報機関で暗号解読者として活躍し、今はIT音痴で閑職に追いやられている初老の主人公(頻尿)。 ハッカーたちがゲームの仮想空間でグローバリゼーションに対して革命を起こすのだけれど、その道具立てと行動自体がグローバリゼーション進行の証左でしかないのがもの悲しい。 ITテクノスリラーと銘打たれているけれど、まだるっこしいDaniel SuarezのDeamonといった風情。 ラテンアメリカの歴史や、暗号解読、IT技術などの本をあまり読んだことがない人なら面白いかもしれない。
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ボリビア人作家による小説は初めて読んだ。SFとして紹介するべきか、正統的にラテンアメリカ文学と冠するべきか悩んだと思われる、「テクノスリラー小説!」という新刊の帯。娯楽か文学か、その躊躇する感じが理解できるハイブリッドな作風だったが、文学要素やや強し、なのではないでしょうか。 ボ...
ボリビア人作家による小説は初めて読んだ。SFとして紹介するべきか、正統的にラテンアメリカ文学と冠するべきか悩んだと思われる、「テクノスリラー小説!」という新刊の帯。娯楽か文学か、その躊躇する感じが理解できるハイブリッドな作風だったが、文学要素やや強し、なのではないでしょうか。 ボリビアの架空都市を舞台にしている。暗号解読を巡るしっかりとしたストーリー展開を追いかけながら、あまりに既成のボリビアのイメージを裏切る小説象にのけぞる。リャマや高山など皆無。 作中にも、ボリビアが抱える経済成長の遅れ、軍政の空白期間などこの国ならではの事情が語られる。しかしながら「いま」の姿は、グローバル化に抗う世代がおり、生きる手応えの希薄になった個人がおり、何とも現代的。疑いようもなくいま我々の問題が書かれている。 地球の真裏、我々よりも数千メートル高い標高に住む人々の憂鬱が我々と符合すること。その驚きと、悪い予感が当たったような薄気味悪さを同時に感じた。
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