逃げる中高年、欲望のない若者たち の商品レビュー
読み始めた最初のページから何やら不思議な違和感があったのだ。 何か文章のトーンやモノを見る視点がいつもと違わないか?とか。 それが決定的になったのは、巻頭から10数ページ読み進めたところで登場した「テレビ『カンブリア宮殿』の司会を務めている」云々。 アレ?この著者ってあの番組の司...
読み始めた最初のページから何やら不思議な違和感があったのだ。 何か文章のトーンやモノを見る視点がいつもと違わないか?とか。 それが決定的になったのは、巻頭から10数ページ読み進めたところで登場した「テレビ『カンブリア宮殿』の司会を務めている」云々。 アレ?この著者ってあの番組の司会なんてしてたっけ?と。 ...そこで初めて気が付いた。 あ、そっか。オレ勝手に、この本の著者は村上「春樹」だとカンチガイしてたわ!と。お恥ずかしい!!! 要は、ブックオフの書棚で手に取ってカゴに放り込んだ時点で既にカンチガイしてたのだ。だってオレ、普段、村上龍の本なんて殆ど読まないからね。てっきり「春樹」の方が書いたエッセイだと思い込んで買い求めちまったらしい。 閑話休題。 気を取り直し、きちんと「龍」サマの著書としてしっかり読ませていただきました。 結論から言えば、面白い。著者の独自の視点、切り口、主張が良く分かる。なるほど確かに、世の常識や多数派に流されることなく、自らが考えた内容を自らの言葉でしっかり発信する、骨太のエッセイだ。頷かされる意見も少なくなかった。 これを機会に、ここはひとつ、村上龍の作品もきちんと本腰入れて読んでみるのも面白そうだ。 そう思うと、今回の恥ずかしいカンチガイも、怪我の功名とも云えるかも。
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10年以上前の本だが日本の状況は変わらず、もしかしたらまだ下がっているかもしれないと思った。昔より余裕がなくなってしまっているみたいだ。 正当な怒りを言葉や行動で表現する事を示せない。とあるのが印象に残ったがSNSの発達で表現する人達も増えたが、分断が進んでしまった様に思える。
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2009年ごろに村上龍氏が連載したエッセイを書籍化したもの。なので、10年以上前のネタなのに、今読んでも全然古くなくて、立派な「中年」になった私自身はまさに今、「逃げようとしてる」ところ。しかしもう、逃げ切れないかもしれないな。 若者が夢も欲望も抱けず、自死を選んでしまうような日本社会。一応自立した一人の大人として、私にも社会のために何かする責任があるとしても、どうすりゃいい? あくせく働き、長時間労働にも文句は言わず、税金を納め、選挙にも行っているけど、どうすればいいんだろう? 表題通り、世代間のギャップについて考えさせられる。自分の価値観、自分が子供の頃に植え付けられた価値観や固定観念を、我が子に押しつけてはいけないし、「最近の若い人は!」なんて野暮なことも言わないようにしよう、自殺よりはSEX、くらいな考えを持とう、とは思った。 しかし最近の若者はSEXもしないらしい。リアルな異性よりバーチャルな世界の方がラク、みたいな。終わったな・・・・。
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最後の書評にもあるように、現実的に社会の有り様を見据えたエッセイだった。私はこの中に登場するいわゆる「若者」に該当していて、まさに「死人」だと言うことを自覚した。再確認したと言っても良いだろう。今まで自分の中でモヤモヤしていた社会に対しての失望や将来に対しての悲観などが明確に文章...
最後の書評にもあるように、現実的に社会の有り様を見据えたエッセイだった。私はこの中に登場するいわゆる「若者」に該当していて、まさに「死人」だと言うことを自覚した。再確認したと言っても良いだろう。今まで自分の中でモヤモヤしていた社会に対しての失望や将来に対しての悲観などが明確に文章で書かれているのはいい意味でショックだった。ただその現実的な物の見方は時に救われることもある。運や偶然で片付けられることなく、どのような歴史と社会により今の死人のような若者が形成されたのか理解することはこれから生き返るために必要な通過儀礼だと思う。当事者である「若者」としてこのエッセイに出会えたのは幸運であり、「死人」から生き返るための第一歩にすることをまずは目標としたい。
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あっせりと読める。基本的に、欲望がない冷めた日本の若者に対する考え、そして今の日本に対して鋭い評価を述べている。 ただし、やっぱり若者ダメだ的なことはほとんど言わない、もうしょうがないよね、こんな国だもんというような感じの意見がほとんどだ。 一番印象に残ったのは、これだけ不安定で厳しい現状の若者が怒らないのは、怒りをアクションに表す訓練を受けてこなかったという指摘だ。そうなのかもしれない。今、私は薄給で、よく深夜まで残業がある職種だ。でも、しょうがないか。という感じで現状に甘んじている。外にこの感情を表すよりも、内側に隠して、どうにか現実と折り合いをつけている。なぜそうしているのかは、正直自分でもわからない。ただ、どう表現していいのかわからないのということは確かだ。今までそうしてきたからそうしている。
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現代の社会を村上龍の視点で浮き彫りにしている。批判するではなく、現代そのものである。 なんとなく最近思っていたことが、この本で整理され理解できた。
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2015年の31冊目です。 欲望が無く怒らない若者に対し、手厳しかった村上龍も、 うつや引きこもりや自殺するよりも、閉塞的で希望は無い草食的生き方の方がましだと書いている。 彼自身が年を取って丸くなったことが理由でなく、考える優先順位が変わっただけだとしている。 そうは言っても、これからの時代に、若者が期待が持てないことに対しての諦念が強く感じられる。 逃げる中高年といわれると、自分を名指しされたようで後ろめたさを感じるのは、人生逃げ腰になっている証拠かな? 私自身は、彼の相変わらずシニカルな見方が嫌いではない。 いろんなことを包含するような表現より、事の核心にある事を抉り出そうとする考えや表現に共感を覚えます。 私自身の中を抉り出すことはできないが、今までいろんなことが、”包む込まれたまま”同一に論じてきた気がします。 彼の主張には、若者は、”こう生きてほしい”といった具体的な要望はありません。 人生、単線的な聞き方以外にも多くの複線的な生き方があることを、「13歳のハローワーク」の新刊で紹介している。 多くの若者の生き方やあり様が画一的で、個性を失っていること、 言い換えれば輝く原石が見当たらないという嘆きのように思えます。 おわり
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村上龍さんも、公園で犬を散歩している集団には入れない。集団の圧力みたいなものがある。私も同じだ。 他にも共感できるところが沢山。
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タイトルと書き出しを見て買った。年配でも元気な経営者は、好奇心に満ちていて、いつも恋をしてないとという。海外にいきたいとも、車が欲しいとも思わない若者。その対比が世代間ギャップだとか、貧困格差となって 現れている。職業訓練が施されず、社会に放り出される若者たちや、失業率の改善が政...
タイトルと書き出しを見て買った。年配でも元気な経営者は、好奇心に満ちていて、いつも恋をしてないとという。海外にいきたいとも、車が欲しいとも思わない若者。その対比が世代間ギャップだとか、貧困格差となって 現れている。職業訓練が施されず、社会に放り出される若者たちや、失業率の改善が政治問題とならない日本。これから子供を社会に送り出す親として考えさせらられた。
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日本の将来は「孤独死」に重ねられるのではないかと考えたことがある。 元気のある時は海外(特にアジア)に工場つくったり技術供与なりと支援する事ができた。 たとえそれが人件費が安いから、という理由があったにせよ。 そして時は過ぎて国力が衰えていくにつれて、これからどうしようというビジョンも目的もなく、虚言妄言を振りまいて周りの国から呆れられる。 そして面倒を見てやっていると思っていた国には追い越されて、昔は良かったと一人愚痴りながら懐古趣味に走って死んでいく。 孤独死は社会問題であるが、日本という国家自体が孤独死のように衰えていくのではないかと思う。 そんなワタクシ、会社員27才、独身。 ご多分にもれず無気力な若者(そろそろオッサン?)である。 村上龍は熱烈な愛国者であると書いたのは佐藤優だったか。そんな村上龍が書く現代を冷静に描いている。 「若者は欲望がなく死人のようだ」 「生きている」ということは「死んでいない」ということではない、とどの本で読んだんだっけ。 「若者の○○離れ」というマスコミのレッテルを聞くたびにうんざりするけど、これには若者には欲望が無いという事を示している。金も時間もないし。よく言う。俺も言う。 でも、本当にやりたいものだったら、やろうとして稼ごうとするし、寝る暇惜しんでのめり込むはずだ。 やりたいことがない。欲望が無い。なぜか、ロールモデルが無いからと考える。 本書で村上龍が指摘する、この部分に問題があるのではないか。 「政治的に、自分は何事かを成すことができると思っている若者は、よほど自信があるか、バカか、どちらかだが、日本社会では、たとえば坂本龍馬に憧れるというような、バカの割合が多いように思う」 小学校や中学校で「尊敬する人物」は誰ですか?という問いに困惑した人は多いのではないだろうか。 なにせ、いないから。 尊敬する人は親です、なんて本気で言えるのはよほどいい家庭だったんだろうね。 尊敬する人物、なりたい人物、こんな人になりたい、そんなロールモデルがいないから若者は欲望がなく、その欲望は個人のささやかな幸福へと向けられる。 そんな死人たちに対して、村上龍は批判もしなければ同情もしない。 読んでいて、じゃあどうすればいいんだよ!?と反発していたが、古市憲寿の解説を読んで納得した。 本書は、そう言った死人に対するショック療法である。
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