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帝国の構造 の商品レビュー

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2024/11/05
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哲学に対する、違和感から発して不信感にまで達した印象は、モデル化の失敗に負うところが大きいのではないかと思うようになった。抽象化は、間違うと目も当てられない惨状を引き起こす。 学問は、論者の声のデカさや気合い、論者への忖度で容易に権威と化すが、第三者による精査が機能しているのかどうか非常に不透明な人文学は、言ったもん勝ちの風潮が弱くないように感じる。 読み進めるにつれて、前述のような見解ではまだ足りなかったと感じるようになる。 哲学者、思想家は、根っこのところにイデア論が棲み着いているのだろう。ボクのかんがえたサイキョウに向かって収束するように自ら仕向けている。結論に合わせて証拠を集め、結論にそぐわない部分は無視する。 特に日本の開国から帝国化までの論には、弱肉強食の世界であったという事実には触れられておらず、帝国の亜周辺であったからという持論をただ強調するのみ。諸外国の圧力によって開国、倒幕に至ったという事実は、亜周辺論と噛み合わないのだろう。 歴史を紐解き、分析する。都合のいいところだけピックアップする。 歴史が積み重なっていくとき、論者が思い描くような恣意は働きうるだろうか? 否と思える。 何百ページも語った挙句に突きつけられた結論は突飛な飛躍。これが思想家の方法であるなら、利用者に都合良く使われもするだろう。隙がデカすぎる。

Posted byブクログ

2022/02/04

柄谷行人 「帝国の構造」  著者の「資本=ネーション=国家」概念や 4つの交換様式を用いて、帝国の原理を論じた本 帝国について、明確な定義はないが、帝国と帝国主義と明確に区別し、帝国とは 世界共和国やコスモポリス に近い意味なのだと思う 著者の「資本=ネーション=国家」...

柄谷行人 「帝国の構造」  著者の「資本=ネーション=国家」概念や 4つの交換様式を用いて、帝国の原理を論じた本 帝国について、明確な定義はないが、帝国と帝国主義と明確に区別し、帝国とは 世界共和国やコスモポリス に近い意味なのだと思う 著者の「資本=ネーション=国家」概念や 4つの交換様式を理解するのが かなりハード。この2つの概念でヘーゲル、マルクス、カント、レヴィ=ストロース、ブローデル、中国史、帝国主義 全てを説明するのだから守備範囲の広さに驚く 最後の「亜周辺としての日本」の論考は、日本の資本主義経済の発展論証として興味深い 帝国の原理(帝国である条件) *多くの国家が積極的に服従する *互酬性原理ともとづく遊牧民国家と定住農民国家と統合 *共同体間や国家間の交易が発展 *世界宗教、世界言語を持つ *帝国は、交換様式Bが優越している世界システムにおいて形成される 「資本=ネーション=国家」とは *資本主義的な市場経済が進み、階級格差など諸矛盾が生じても、国家が規制や援助により緩和しようとする体制 *この体制が出来上がると、革命は起きず、本質的な変化はない(歴史の終焉を意味) 社会構成体を説明する4つの交換様式 A 互酬(贈与と返礼)=ミニ世界システム=ネーション B 略取と再分配(支配と保護)=帝国=国家 C 商品交換(貨幣と商品)=経済〜近代世界システム=資本 D 資本=ネーション=国家 を越える新しいシステム〜カントの世界共和国 交換様式D *Dは交換様式Aを高次元で(=Aの原理を一度否定することを通して)回復すること *互酬原理によって成り立つ社会が、国家の支配や貨幣経済の浸透により解体されたとき、そこにあった互酬的=相互扶助的な関係を高次元で回復するものがD *Dはネーションと同様に想像的であっても、人間の願望や想像でなく、人間の意志に反して課される義務として生まれてくる〜Dは抑圧されたものの回帰としてあらわれる 交換様式A *農業によって定住したのでなく、定住した結果、農業が起きた *互酬の原理により、定住から生じる生じる不平等、階級、国家形成を抑制した *氏族社会は国家社会を回避する企てであり、高度な社会システム〜国家を越える道 *互酬原理は、神の命令(普遍宗教)として到来 AとDの共通点 それが生じるのは人が望むからでなく、人間の欲望や意志を越えて出現する〜自由の相互性への回帰 交換様式C *資本制社会では交換様式Cが支配的、封建制社会では交換様式Bが支配的 *マルクス「資本論」は資本主義経済を対象とし、交換様式Cのシステムを考察するために、Aと Bを度外視 *近代国家とは、交換様式Cが支配的なモードにあるときに、交換様式Bがとる形態 ブローデルが 世界=経済と呼ぶところでは、交換様式Cが優位にある *都市に市場経済が発展した〜帝国は成立しなかった *世界=帝国 と 世界=経済 は同時期に、相関的に存在した 西ヨーロッパでは、帝国ができなかった分、自立的な都市が増え、ヨーロッパの社会構成体における交換様式Cの優位〜世界=経済をもたらし、資本主義経済が生じたが〜帝国が生じたところでは、資本主義経済に至らなかった 帝国主義 *帝国主義とは、帝国の原理なしにネーション=国家 が拡大し、他のネーションを支配すること *帝国主義は交換様式Cにもとづく *他の国家から関税権を奪う〜交易の自由により利潤を得ることにより経済的に支配する *帝国の膨張が交換様式Bに対して、帝国主義の膨張は 交換様式C

Posted byブクログ

2015/04/19

「資本=ネーション=ステート」が確立されたのちは本質的な変化はあり得ない(=歴史の終焉)とするヘーゲル批判から始まつて、「帝国」論を展開する。 マルクスが国家やネーションを「上部構造」に置き、これらを規定するのは経済的土台すなはち「下部構造」とし、その下部構造は生産様式すなはち...

「資本=ネーション=ステート」が確立されたのちは本質的な変化はあり得ない(=歴史の終焉)とするヘーゲル批判から始まつて、「帝国」論を展開する。 マルクスが国家やネーションを「上部構造」に置き、これらを規定するのは経済的土台すなはち「下部構造」とし、その下部構造は生産様式すなはち「誰が生産手段を所有するか」のあり方に着目するのに対して、筆者は交換様式に着目する。 具体的には、交換様式をA(互酬…贈与と返礼)B(略取…支配と保護)C(商品交換…貨幣と商品)D(X…「それらを超えるなにか」)に区分する。 そして、遊動的狩猟採集民社会からの大きな社会変革を「定住」に求め、そこから農業や牧畜(さらには遊牧)…そしてさまざまな社会のあり方を見てゆく。 帝国…多数の民族・国家を統合する原理がある    ローマ法は根本において国際法…民族・国家の内   部だけでなくその間の問題にも適用される 国民国家…そのやうな原理はない。拡大して多民族・国家を支配する場合は「帝国」ではなく「帝国主義」 交換様式C…「世界=経済」が優位な社会…ギリシャ文明や西ヨーロッパの自立的な都市の繁栄は、帝国の周辺にあつてかつ選択的態度が可能だつた「亜周辺」にあつたことによる。 さらにその帝国の亜周辺に生まれたヨーロッパの主権国家が帝国を解体して、多数の民族国家を生み出してゆく歴史を振り返る。 そのうえで、国際連盟から始まつた諸国家の連合に、カントの言ふ諸国家連合から世界共和国への可能性を見出し、その過程に働く力として武力や金銭の力ではなく「贈与の力」にそれを求める。 ヘーゲル批判から始まつて、正直最後まで読み切れるか不安になつたが、世界史の流れをみるにも非常に面白い切り口と感じた。 あとは…昔、手にしたことのあるカントの「永遠平和のために」を読み返してみたくなつた。

Posted byブクログ

2014/09/09

柄谷行人さんの新刊ということで行きつけの本屋さんに予約し購入しました。買ってすぐには読みませんでした。じっくり読みたいので僕のバイオリズムが行けそうだと思えるところで読んでみました。 根気強く丁寧に書かれいます。今までの作品で表現があいまいでどういうことだろうかと考えていたと...

柄谷行人さんの新刊ということで行きつけの本屋さんに予約し購入しました。買ってすぐには読みませんでした。じっくり読みたいので僕のバイオリズムが行けそうだと思えるところで読んでみました。 根気強く丁寧に書かれいます。今までの作品で表現があいまいでどういうことだろうかと考えていたところが明確にされています。柄谷さんの本を読んできた人にとってこれほど理解の助けになる本はないでしょう。それにこの本から読み始めた人にとっても理解しやすいです。 痒いところに手が届く的なものです。僕的に購入して正解でした。大事なことの理解のために再読できるからです。 近いうちに再読したいですね。

Posted byブクログ

2014/09/06

国家は共同体が拡大しそこに階級対立が生じたときにしょうじるといわれる。 帝国はたんなる軍事的征服によって形成されるものではない。 ヘゲモニー国家が存在するとき、それは自由主義的な政策をとる。

Posted byブクログ