代表制という思想 の商品レビュー
すばらしかった。よりベーシックなテキストが充実してる上でうまく面白がれたのかもしれんけど、読みながら領域の問題意識がわかってく感じ。読むタイミングもよかった。
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代表制民主主義って、直接制民主主義の代替物じゃ無いと思うんだよね。別にIT技術が発展しようが、直接制民主主義に戻ることはあり得ないと思うんだよねえ。つうか、スイスじゃあるまいし前例が無いから『戻る』じゃ無いだろとか漠然と思ってるこのもやもやを整理してくれそうな本を発見して購入。 ...
代表制民主主義って、直接制民主主義の代替物じゃ無いと思うんだよね。別にIT技術が発展しようが、直接制民主主義に戻ることはあり得ないと思うんだよねえ。つうか、スイスじゃあるまいし前例が無いから『戻る』じゃ無いだろとか漠然と思ってるこのもやもやを整理してくれそうな本を発見して購入。 1 よく引き合いに出されるアテナイの直接民主主義って、発言も任官も立候補者限定なんだね。そして、失敗したときの訴訟リスクが抑止力としてあったとは知らなかった。 2 代表制は選挙が無くても成立する。一人で代表するという意味では君主制すら『代表制』の範疇である。そうか。ナチスでさえ『代表制』ではあるのか。 3 代表制民主主義は、代表が民意から切り離されるが、それは欠点では無く、むしろ長所である。「代表される者の意見を忠実に反映することと、代表者が代表される者の意見に束縛されずに一定の見解と行動の自由を得る。」この矛盾があってこそ、多様な民意を政策に体系化できるのではないか。 4 市民の間に意見の相違があることを尊重するからこそ、二重の討議の場を作って両者の相互作用の中で丁寧に民意を形成していく。これが代表制の基本。
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帯にあるように、代表制は直接民主政の次善策という「神話」を再検討することを目的とする本。全体の流れとしては、まず第一章「首相公選と世論」で、中曽根内閣以降日本でも話題に登ることの多い首相公選制が、直接民主主義を実現する制度として語られてきた事実を取り上げ、しかしこの制度もまた議会...
帯にあるように、代表制は直接民主政の次善策という「神話」を再検討することを目的とする本。全体の流れとしては、まず第一章「首相公選と世論」で、中曽根内閣以降日本でも話題に登ることの多い首相公選制が、直接民主主義を実現する制度として語られてきた事実を取り上げ、しかしこの制度もまた議会制とは別の仕方で代表者を選出する制度に他ならないことを明らかにする。次に第二章「”デリバレーション”の意味するもの」では、もう少し学術的な方面で話題になることが多い「熟議」に話が進む。ここでも、熟議の制度化は「ポスト代表制」と簡単に言えるものではなく、むしろ代表制を補完する制度として位置づけられてきた事情を明らかにしつつ、他方で、「熟議」概念を突き詰めれば議会を不要とする制度構想にならざるを得ないのではないかとも指摘している。第3章と第4章はより理論的・思想史的な論述である。まず第3章では、ピトキンの代表概念研究に依拠しながら、権威付与型の代表概念によって想定される、一度正統性を得ればその後の行動の責任が問われることのない代表者像に修正を加える理解の提示が試みられる。また第4章では、シュミット、シュンペーター、ギリシャの都市国家の制度に話が広がり、直接民主制と代表制が必ずしも対立概念ではないことを明らかにしようとしている。最終的に、著者の結論としては、民意を反映しない代表制の存在こそが、かえって民主主義を活性化させるのである、というテーゼが提出される。昨今代表制の危機が叫ばれ、何らかのかたちで民意を直接政治に反映させる制度を構想する向きが多い中で、代表制の固有の意味を提示しようとする本書は極めて興味深い。
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