イエス・キリストは実在したのか? の商品レビュー
邦題がずいぶんとミスリードを誘うが、イエス・キリストが実在したか否かの検証本ではなく、聖書に描かれた救世主・イエスとは異なる実像を追究した本。 米国ではベストセラーになり、ずいぶんと物議を醸したらしいが、そりゃそうだろうな。 紀元1世紀のパレスチナはユダヤ人がローマ帝国の支配に...
邦題がずいぶんとミスリードを誘うが、イエス・キリストが実在したか否かの検証本ではなく、聖書に描かれた救世主・イエスとは異なる実像を追究した本。 米国ではベストセラーになり、ずいぶんと物議を醸したらしいが、そりゃそうだろうな。 紀元1世紀のパレスチナはユダヤ人がローマ帝国の支配に抵抗した激動の時代。 その時代に人々を扇動した、貧民出身の過激な革命家がイエスであった。 イエスの死後、パウロらによる布教活動を経る中、ローマ帝国の中でキリスト教が宗教として成熟していく中で、史実が変容して書かれていくことにより新約聖書が成立した。 …というのが著者の解釈の本筋。 本編だけ読んでも、論拠があまり明確に論じられていない(巻末の膨大な参考資料を読めば違うのだろうが)ので、その解釈の正当性を判断することはまったくできないのだけれど。 前提となる基礎知識が乏しすぎて、著者が明らかにするイエス像に衝撃を受けるとまではいかなかったが、著者および訳者の流麗な文体も相俟って、イエス像とイエスが生きた時代感が鮮やかに展開し、新鮮さを覚えたというのが正直な印象。
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イエス、パウロ、ヤコブ像が身近に感じられました。 トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めると公言したタイミングだったこともあり、当時のエルサレムの状況を理解し、中東の紛争の根深さや歴史の重みを感じることが出来ました。
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ユダヤ人であり、ユダヤ教徒であり、ユダヤ教の改革者を 目指した「ナザレのイエス」が、いかにして、ローマ帝国で ギリシア語を使い、異教徒への布教を図ったヘレニストたち が作り上げた「イエス・キリスト」へと変容したかを、 様々な、そして大量の研究・論文を元に見事に描いてみせた 著者の...
ユダヤ人であり、ユダヤ教徒であり、ユダヤ教の改革者を 目指した「ナザレのイエス」が、いかにして、ローマ帝国で ギリシア語を使い、異教徒への布教を図ったヘレニストたち が作り上げた「イエス・キリスト」へと変容したかを、 様々な、そして大量の研究・論文を元に見事に描いてみせた 著者の20年をかけたライフワークとも呼べる本。原注では 自説とは違う文献もしっかりと触れているあたり、誠実な 著作であることがうかがえ、現時点の史的イエスの研究と しては最も正確なものとなっているのではないかと思う。 もっとも私にとっては確認作業のような読書だったことも 事実だが。 キリスト者にとっては受け入れられないことも多いだろうが 「信仰」と「歴史・科学」という違う文脈の話だということ を忘れてはいけない。極端に言えばボクサーと力士、どちら が強いかという話に似ている。ルールが違う以上簡単に 比較は出来ない。ボクシングで戦うか、相撲を取るか、 新たなルールで新たな競技を作るか。どちらにせよ、冷静な 態度がお互いに要求されるのは間違いない。
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聖書を読んでいて、いつも不思議に思うことがあった。何故、ピラトはイエスを助けようとしたのか? 何故ユダヤの民は、イエスでなく、バラバを恩赦することを選んだのか?イエスを産んだユダヤ人は何故キリスト教を選ばなかったのか?本書を読んで、様々な疑問に対する作者の仮定が、僕にはストンと腑...
聖書を読んでいて、いつも不思議に思うことがあった。何故、ピラトはイエスを助けようとしたのか? 何故ユダヤの民は、イエスでなく、バラバを恩赦することを選んだのか?イエスを産んだユダヤ人は何故キリスト教を選ばなかったのか?本書を読んで、様々な疑問に対する作者の仮定が、僕にはストンと腑に落ちるような気がした。中東出身でアメリカの教育をうけ、一時は敬虔なクリスチャンであり、今はムスリムの作者だからこそ書けた作品ではないだろうか。
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近所の本屋でたまたま目に入りタイトルにつられて思わず購入。 イスラム教徒による研究の成果だと言うことでますます興味をそそられた。 イエスの活躍した時代の時代背景、イエスや同時期にたくさん現れた予言者の活動、そしてキリスト教の成立について検討し、聖書の福音書の他に当時のいろいろな文...
近所の本屋でたまたま目に入りタイトルにつられて思わず購入。 イスラム教徒による研究の成果だと言うことでますます興味をそそられた。 イエスの活躍した時代の時代背景、イエスや同時期にたくさん現れた予言者の活動、そしてキリスト教の成立について検討し、聖書の福音書の他に当時のいろいろな文献からキリスト教信仰の対象としてのイエスではなく、実在のイエスについてその実像をとらえようとしている。 当時イスラエルはローマ帝国に支配されている。ローマの統治はその地域の支配層を使った間接統治であり、ユダヤ人あるいはユダヤ教の支配層と結託している。それに不満を持ち現政権を倒しローマから独立してユダヤの王国を作ろうとする革命家の一人がイエスだったということである。現代でもよくある話だ。 従ってイエスは暴力を否定しないし、ローマ人から見れば世間を騒がす過激派の指導者者と見られて不思議はない。 イエスはユダヤ教徒で、ユダヤ人にしか説教をしていないし、奇跡も行っていない。言ってみればキリスト教徒は何の関係もないわけである。 奇跡と言っても現代の目で見ればやらせ、まやかし、奇術の類だったようなので少々笑える。 結局、イエスをキリスト教の信仰の対象にしたのはパウロであり。パウロ教と言ってもいいくらいである。そのパウロでさえもユダヤ教徒からは異端扱いされて、異教徒に信仰を広めてキリスト教という世界宗教になったというわけである。 本書は冷静な視点から書かれている。巻末に約70ページにわたり注釈があり、論拠や見解の相違点などが記されている。 著者はイラン革命の時にアメリカに亡命して成人になっており、高校の時にキリスト教に触れて一旦はキリスト教徒に改宗してキリスト教を学んでいる。そこで、聖書が矛盾だらけであり、イエスの実像が全くわからないと言うことが本書作成のきっかけの一つである。著者の20年に及ぶ研究の成果であり非常におもしろく読めた。 ただ、翻訳が時々おかしなところがあり、一度読んだだけでは理解できないようなところがいくつかあり少々残念だった。
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タイトル通り、イエス・キリストの実像に迫る。当時の記録、習慣などなどから、実在したイエスはどんな生き方をして、いかに死んでいったか、そして神になったのか。 当然ながら聖書の知識があったほうがより楽しめる。 図書館から借りて、途中で挫折。
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本書の原題は『Zealot』“熱情”とかいう意味らしい。 そして副題は『The Life and Times of Jesus of Nazareth』たぶんナザレのイエスの生涯と時代とでも訳せばよいのだろう。 第1部「ローマ帝国とユダヤ教」、第2部「革命家、イエス」、第3部「...
本書の原題は『Zealot』“熱情”とかいう意味らしい。 そして副題は『The Life and Times of Jesus of Nazareth』たぶんナザレのイエスの生涯と時代とでも訳せばよいのだろう。 第1部「ローマ帝国とユダヤ教」、第2部「革命家、イエス」、第3部「キリスト教の誕生」に分かれた本文は約250ページ。その後に2段組で約70ページの膨大な原注が付く。(この原注が本文以上に面白い) 帯には「イスラム教徒による実証研究で全米騒然の大ベストセラー」「“聖書”から落とされた史実」「捏造された物語」などの惹句が書かれている。 本書は、聖書やその基になった記録からの文献学的歴史学的アプローチである。 新約の諸福音書にある記述を、時代や資料や風俗などを勘案した上で事実と創作に分類していく。福音書も著作物である以上著者の思想が反映され、それを政治的に利用する上で、事実は恣意的に解釈され、求められる形になるよう不都合な部分は削られ創作部分が付け足されていく。 イエスの処刑から40年後に書かれたマルコ、60~70年後に書かれたマタイとルカ、70~90年後に書かれたヨハネ。あたりまえのことだがその時代によりキリスト教はその立場が変わっている。その後も様々な文書が付け加えられ現在我々が手にする聖書となっている。 本書は、聖書の記載にあるイエスの物語や思想の虚実を明確にして、実像に迫ろうとしている。またその内容も邦題や帯の文言にあるような扇情的で下品なものではなく、至極穏当な文献学的な研究内容となっている。もちろん信仰や宗教を否定するものではないことは言うまでもない。 本書を読んで最も重要と感じたのは、イエスの言動が、統治者の代表であるローマの総督にとって、また大祭司などの宗教者にとって、更には各階級や各民族に属する民衆にとってどうだったか、という状況を推察することであろう。その政治的立場の違いによりイエスは予言者にも宗教家にも革命家にもテロリストにもそして神にもなり得るのである。それは彼がそうであることを周りが望んだからなのである。 信仰がどのようにして生まれ育っていくのか。宗教がどのように求められそれに成っていくのか。興味は尽きない。本書はとてもエキサイティングな内容の良書である。
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ローマ帝国に於いて磔刑はどのような犯罪に対して科された刑罰なのかを明らかにするところから、イエスがどのような存在であったかを読み解く。 ローマの資料などから新約聖書の虚構を崩し、史実の人としてのイエスに迫る。 総督ピラトがイエスを裁判で救おうとしたエピソードがあるがこれも虚構であ...
ローマ帝国に於いて磔刑はどのような犯罪に対して科された刑罰なのかを明らかにするところから、イエスがどのような存在であったかを読み解く。 ローマの資料などから新約聖書の虚構を崩し、史実の人としてのイエスに迫る。 総督ピラトがイエスを裁判で救おうとしたエピソードがあるがこれも虚構であるとする。ピラトは大多数のメシアをゴルゴダの丘に送り、イエスもその一人でしかなかった。 イエスはローマによるパレスチナ占領及び、神殿の司祭等によるローマへの協力を否定し反旗を翻した革命家であったという。 この本を読んで感じたことは、パレスチナのユダヤ人の気性の荒さである。この地を治めることはローマ帝国でも難儀したようで、小規模の反乱の連続だった。イエス没後に起こった大反乱でローマ帝国によりイスラエルは滅ぼされユダヤ人はイスラエルから追い出されてしまうことになる。 今のパレスチナ問題を考えるに、ユダヤ人独自の信仰と自尊心、排他性、他国の意見を受け入れないなどは現代に受け継がれているように思えてならない。それと同時にパレスチナ問題はイスラエルを滅ぼし、ユダヤ人から国土を奪うまで解決しないように思える。
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久々にキリスト教関連の本を読んだ.ふしぎなキリスト教という新書を数年前に読んだけど,比較するのが憚られる.こちらは,きちんとした本.ユダヤ教とキリスト教の断裂していることが,歴史的に説明されていて,勉強になった.
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紀元30年頃のユダヤがどのようだったかが良くわかる.イエスは意外とナショナリストだった.でもやっぱり主な資料が聖書だからなあ.もうすこし突っ込んで人間イエスを描いてほしかった.
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