美味しくたべてね の商品レビュー
単に料理店を舞台としただけでないアイデアあり
基本的な構成は過去の作品と大体似ている。構造的にはほぼ同じと言ってよい。しかし、そんな中でも何かとユニークなアイデアを盛り込んでくるのが美野作品の良いところであり、本作もまた単に料理店を舞台しただけに止まらない主人公とヒロインの過去が綴られている。 25歳の社会人主人公に対...
基本的な構成は過去の作品と大体似ている。構造的にはほぼ同じと言ってよい。しかし、そんな中でも何かとユニークなアイデアを盛り込んでくるのが美野作品の良いところであり、本作もまた単に料理店を舞台しただけに止まらない主人公とヒロインの過去が綴られている。 25歳の社会人主人公に対して直属の女上司【玲子】とその友人にして経理部門に配属されている【美鈴】という三十路越えの熟女2人に、庶務担当で美鈴と机を並べる22歳の若手社員【綾乃】というサブヒロイン3人体制は、物語の幅を広げるための各エピソードを受け持つ意味では割と適した布陣と言える。勝気な玲子が抱える過度なストレスだったり、美鈴の離婚の理由ともなった不感症だったり、彼氏に別れを告げられた綾乃の極度なダイエットだったりと、いかにも女性ならではの悩みをメインヒロイン【紅蘭】が供する薬膳料理で解決していく序盤から中盤までの流れは想定内ながら官能面との絡みも良好に進んでいたと思う。何より全7章立てのうち第二章から第五章までの4章でサブヒロイン3人との直接的な官能描写が計6度も描かれており、中でも玲子と美鈴とは章を跨いでも関係が続いていることで1章1ヒロインといった薄っぺらな展開では得られない奥深さを物語と官能の両面で感じることができた。 しかし、この中盤までのサブヒロイン達とのやり取りはお膳立てに過ぎない。過去の美野作品でも同様の構成ではあるのだが、第六章で明らかにされる主人公と紅蘭の、およそ官能小説らしくない過去の諸々を読むと、これまでの美野作品とは一線を画すスケールの大きさも感じられてくるのが本作の特徴と言えよう。まぁ、その節々にはファンタジーな設定も混じってくるので若干の苦笑い的微笑ましさも禁じ得ないのだが、官能小説の背景としてここまでアイデアを膨らませたことに感心したいと思う。 曖昧だった過去と現在が繋がった主人公とその本来の姿を心待ちにしていた紅蘭とが晴れてお互いに愛情を確認し合い、さらに深めていく終盤は、クールで落ち着きのあった紅蘭が恥じらい乙女のごとく様変わりしていくギャップが魅力である。当初はチェリーだった主人公も3人のサブヒロインとの逢瀬を重ねた結果、紅蘭を責め立てられるまでになっており、30歳の紅蘭を悶え喘ぎ捲らせる淫猥さがイイ感じでしっかり描かれているのは実に良かった。 作者の得意とする構成が今回は上手くフィットしており、登場人物のキャラ立ちの良さと物語の良さが噛み合ったことで官能面の底上げにも成功した作品の1つと言えるのではなかろうか。
DSK
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