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書簡で読み解くゴッホ の商品レビュー

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2019/12/08

上野の森美術館で開催されている「ゴッホ展」の鑑賞前に手に取った。 38年間の生涯で彼は弟テオと膨大な数の手紙のやり取りをしている。 病気で苦しんだ狂気の人。 偏屈で社会に適合できなかった。 生前はまったくその画業が評価されなかった。 著者は、彼の作品と手紙のやり取りを...

上野の森美術館で開催されている「ゴッホ展」の鑑賞前に手に取った。 38年間の生涯で彼は弟テオと膨大な数の手紙のやり取りをしている。 病気で苦しんだ狂気の人。 偏屈で社会に適合できなかった。 生前はまったくその画業が評価されなかった。 著者は、彼の作品と手紙のやり取りを丁寧に追いながら、その見方がほんの一部の偏見であることを丁寧に明かしていく。 そして画家の本質を的確に捉えていく。 自然に立ち向かう農民。 汗を流し懸命に働く労働者。 その人たちに寄り添ってこその、芸術であり、信仰であり、絵画だった。 庶民の苦しみに寄り添ったイエス・キリストを敬虔に信仰しながらも、形骸化した教会のあり方に失望し、絵の道を貫くことを決断する。 それは、壮絶な病という宿命との闘争でもあった。 膨大な書簡の中から溢れ出る情熱と理性と忍耐の結晶。 短い生涯の中で全精力を注いだ作品の一つ一つが、時空を超えて人々の心の中の「何か」に訴えかけ、揺さぶり続ける。 それこそがこの書のサブタイトル「逆境を生きぬく力」だ。

Posted byブクログ