HOME の商品レビュー
夜間に長時間露光撮影し、デジタル処理を加えている『HOME』は、東京郊外の無人の住宅地の夜闇を、不思議な明るさのもとに照らし出す。別の時間枠に風景を定着させている、そんな写真群である。 普段見つめなくても構わない風景。そんな風景に出くわす人の居心地をも、一戸建ての面相にこめられ...
夜間に長時間露光撮影し、デジタル処理を加えている『HOME』は、東京郊外の無人の住宅地の夜闇を、不思議な明るさのもとに照らし出す。別の時間枠に風景を定着させている、そんな写真群である。 普段見つめなくても構わない風景。そんな風景に出くわす人の居心地をも、一戸建ての面相にこめられているようだ。その場で通り過ぎてしまうはずの一瞬の光景を、ぼんやりでも凝視してもよい時間帯には夜が向いている。ただ夜の無人の住宅地を撮りたかったわけではないのだろう。その証拠が、夜でも夕暮れでも朝方でももちろん日中でもない、どこにもない別の時間帯に風景を写し置いていることなのだと思う。 風景を写し撮るということは、そこに流れている〝はず〟の一定の時間という前提を突き崩すことでもある。坂口はそれをやってみせたのだろう。時間を少しずらすのではなく、時間を少しめくってみること。すると郊外の何でもない居住地や空き地の平凡な風景が、エドワード・ホッパーのロードサイトのような艶をたたえて見えてくるから不思議である。してみると、このHOMEたちはやはり郊外的なものでなくてはならなかったのか、別の好奇がむくむく湧いてくる、長津田やつくし野あたりの忘れられた風景に共振しつつ。
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以前住んでいた所に住んでいた作者。以前教わっていた人間が同じ作者。以前撮影していた所を撮影している作者。並々ならぬ共通項を持っている。という事はさておいて、この写真郡の違和感は何か。 一つに陰が複数あるという事であろう。スタジオワークではタブーとされている事であり自然界におい...
以前住んでいた所に住んでいた作者。以前教わっていた人間が同じ作者。以前撮影していた所を撮影している作者。並々ならぬ共通項を持っている。という事はさておいて、この写真郡の違和感は何か。 一つに陰が複数あるという事であろう。スタジオワークではタブーとされている事であり自然界においてあってはならない映像。それに加えてパンフォーカスというカメラであるからこその映像。この二つが大きな違和感の要因だと私は思う。 その映像から生まれる見る側の不信感というものを見事にかき立てる作品だと思う。
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