たまもの の商品レビュー
この本に書かれていること全てが私の心に突き刺さっていたたまれない気持ちでいっぱいになった。 母になること、子を育てること、いろんなことを諦めること、親が老いること、ままならない人生。 今の私の心境にあまりにもすっぽりと収まってぞわりとする。 例えばこんな文章。 ー惚けても万歳、...
この本に書かれていること全てが私の心に突き刺さっていたたまれない気持ちでいっぱいになった。 母になること、子を育てること、いろんなことを諦めること、親が老いること、ままならない人生。 今の私の心境にあまりにもすっぽりと収まってぞわりとする。 例えばこんな文章。 ー惚けても万歳、と思う。汚れも万歳。何もできなくても万歳。年老いておめでとう。父と母に、大きな、具のない、白い塩むすびみたいな肯定を送りたい、と思う。 いい文章だな。 私の気持ちを代弁してくれてありがとう。 さて、本題は別のところにある。 主人公の「わたし」は幼馴染から突然預けられた赤ん坊「山尾」を10年間育てている。 寝ている子はすべてかみさまの捨て子だと思いながら。 血のつながりがあってもなくても関係ない。産んでも産まなくても関係ない。 そう、子供は「たまもの」なのだ。 もちろんリアリティには欠ける。現実じゃこうはいかない。 でもね、正直母性なんて私自身が信じてないから。 生まれた途端、いやお腹にいる時から可愛いって思う母親ばかりじゃない。 子を育てながら自分も母親になるんだよ。 だからね「わたし」と私はそんなに変わらない。 だからこそ、山尾がもう子供じゃなくなることが怖いんだね。 でもきっと大丈夫。 二人の関係は何があったって壊れないんだから。 いい作品。言葉の美しさも情景描写もみんな好き。 でもきっと読む人を選ぶ。 あ、でも男の子の母は共感してくれるかな。 山尾があまりにも可愛いから。
Posted by
四十歳になる私の前にある日突然、幼なじみであり元恋人でもある男が現れて一歳にも満たない自分の息子とまとまったお金を私に預けて消息を絶つ。そこから物語は始まる。 「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ」 柿本人麻呂が詠んだとされる一首。山鳥の夫婦は昼間はい...
四十歳になる私の前にある日突然、幼なじみであり元恋人でもある男が現れて一歳にも満たない自分の息子とまとまったお金を私に預けて消息を絶つ。そこから物語は始まる。 「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ」 柿本人麻呂が詠んだとされる一首。山鳥の夫婦は昼間はいっしょに過ごすのに、夜になると別々に寝るという。私も山鳥のようにこの長い夜をひとりで寝るのだろうか、という歌意だそうだ。 幼なじみの男はこの歌が好きだそうで、息子の名前を「山尾」と付けた。山鳥のようにひとりでいることに違和感を感じさせない雰囲気の山尾は手のかからない男の子に成長していく。一方、未婚かつ出産未経験で母親となった私は進展することのない男性たちと関係を結んでいく。山尾の成長と私の現状。いつかは本当の父に返すつもりで山尾を育ててきた私だったが。。。 血のつながりを必要としない「たまもの」、天からの授かり物だ。
Posted by
- 1
- 2