道草 の商品レビュー
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2024.10.25読了。 「門」のあとだから少し物足りなく感じたが、解説を読んでいたたまれなくなる。 思っていた以上に自伝的小説だったのだね…養家と実家のどちらにも穏やかな居場所はない主人公は、きっと漱石自身の体験なのだと思うとつらいね…。 これまで読んだ「門」と「こころ」は主人公と妻の仲は良いけどこちらは仲が悪い。 それにダントツで腹立つ性格な主人公。漱石は自身の嫌なところを盛ってこの主人公に仕立て上げたのかな。 本当にこんな嫌な奴全開だったら、こんな風に自分のこと書けないはず。 酷い夫だと思うけど、夫側が完全に悪いわけではない。そういう描き方をしているのが良い。 お互いに対して冷淡な夫婦。どちらも自分から優しくしようとはしない。ムズムズモヤモヤする〜〜! また、過去の環境が現在の自分やその状況を形成している点を強く感じるところは、「門」や「こころ」と少し似ている。 とにかく「解説」と「鑑賞」を読んでこの小説の魅力がよくわかった。
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夏目漱石の自伝的小説とされる作品。主人公・健三と妻・お住を中心に、平凡な日々の暮らしを描いている。経済的に困窮している健三の養父・島田にお金を工面してやるかやらぬか、ということをひたすら思慮する物語。全体的に暗い印象で、ストーリーの大きな展開は特にない。夏目漱石の作品の中では、あ...
夏目漱石の自伝的小説とされる作品。主人公・健三と妻・お住を中心に、平凡な日々の暮らしを描いている。経済的に困窮している健三の養父・島田にお金を工面してやるかやらぬか、ということをひたすら思慮する物語。全体的に暗い印象で、ストーリーの大きな展開は特にない。夏目漱石の作品の中では、あまり面白くない方だというのが正直な感想である。 印象に残ったセリフを以下に挙げる。 - お住「もし尊敬を受けたければ、受けられるだけの実質をもった人間になって自分の前に出て来るがいい」 - 健三「世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない。一ぺん起こったことはいつまでも続くのさ。ただいろいろな形に変るから他にも自分にも解らなくなるだけのことさ」
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漱石の作品の中で、一番好きかもしれない。 日々を淡々と綴るだけ、という雰囲気はなんとなく谷崎の『細雪』と似ていると感じた。 ただ、『道草』は退屈で憂鬱な日常を過ごすことの重さがすごい伝わってくる本。 退屈で同じような日々の繰り返しといえども、そこにものすごーく濃密ないろいろが詰ま...
漱石の作品の中で、一番好きかもしれない。 日々を淡々と綴るだけ、という雰囲気はなんとなく谷崎の『細雪』と似ていると感じた。 ただ、『道草』は退屈で憂鬱な日常を過ごすことの重さがすごい伝わってくる本。 退屈で同じような日々の繰り返しといえども、そこにものすごーく濃密ないろいろが詰まっていて、粛々とページをめくってました。 それがとっても楽しかったしいい時間だった。 内容としては別にそんな大したことは書いてないんです。主人公の健三は大学教授で、奥さん(不仲)と子供のために毎日仕事に出てお金を得てる。 教授といえども生活は決して楽じゃないのに、腹違いの兄弟から義父、縁を切ったはずの養父母まで色んな人からお金を無心されて、ヒステリー気味の奥さんともうまくいってなくて……… いや重いし、なんかリアル…! それもそのはず、これは漱石の半私小説とも言われている作品で健三の生い立ちや立場はかなり漱石とリンクするところがあります。 ていうか、お話の重さは置いといて、私が漱石の立場に立ったらこんなに綺麗に自分の作品に昇華できるんですかね…?(絶対できません) これができることが漱石が文豪たる所以なんだなぁと偉そうに思ったり。 私の日常も漱石の手にかかれば魔法のように小説になるのかもしれない。健三≒漱石ということもあって、今までちょっと距離の遠かった彼をちょっと近くに感じられるようになった気がした。
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夫婦のどちらもが「そう思った」ことを口にはしないでいる。 始まってしまったことは終わらない。 どこまでいっても、生きている限り。 真面目に頑張って頑張って生きているだけなのに、たかられる側になっちゃうのが切なくて身にしみる。ほんっっとうに身にしみる。 「わたし、どんな夫でもかまいませんわ、ただ自分によくしてくれさえすれば」 「泥棒でもかまわないのかい」 「ええええ、泥棒だろうが、詐欺師だろうが何でもいいわ。ただ女房を大事にしてくれれば、それでたくさんなのよ。いくら偉い男だって、立派な人間だって、宅で不親切じゃわたしにゃ何にもならないんですもの」
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漱石への興味は、私の場合、まず明治に確立されて今なおそのまま名文と感じられる文体です。これは主語動詞がかっちりした英語に堪能だったこと、新聞小説としてのひきしまった章だてをとっていたことなどの影響なのでしょうか。 自伝的な「道草」も、「片付かない日常」を描きながらも、やはり読ま...
漱石への興味は、私の場合、まず明治に確立されて今なおそのまま名文と感じられる文体です。これは主語動詞がかっちりした英語に堪能だったこと、新聞小説としてのひきしまった章だてをとっていたことなどの影響なのでしょうか。 自伝的な「道草」も、「片付かない日常」を描きながらも、やはり読ませるなあと感心します。 幼少時は里子にだされた、ロンドン留学をへて帰国その後はー、経歴では短く語られる間の事情を本人は書き残しています。 ぎりぎりの線で折り合いをつけていかなくてはならない親戚や縁者、反りの会わない妻。目指すところがあるのにという気持ちが「道草」の題名ににじみます。 しかし奥さんは、結構近代的で似た者同士のよう、意見あわないなりに、よくやりとりしているし、健三はヒステリーの介護もお産の介助までしていて、夫婦はしっかりした関わりを持っていると感じました。子供の描写も遠慮ないけれど、最終場面は奥さんと子供の様子だし、苦渋に満ちながらも家庭愛をかんじます。 彼は姉よりも、かえって自分のほうを憐れんだ。「おれのは黙ってなし崩しに自殺するのた。気の毒だといってくれるものは一人もありゃしない」(六十八) 年齢を重ねた読者に、より共感と励ましを感じさせる作品とは思われます。再読を楽しみにするのもよいのではないでしょうか。昔!高校現国の恩師が漱石を読むことをイチオシで勧められていました。漱石は研究するとまた、たいへん興味深いとも。先生に感謝です。
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前半、伏せられてる部分が、明らかになってくるまで、誤解してた、、夏目さんが亡くなる前に書き上げた作品で、唯一の自伝的作品。
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