やがて秋茄子へと到る の商品レビュー
全体的に光の切り取り方が素敵だと思った。 好きだな〜と思ったやつ! ・ゆっくりと両手で裂いていく紙のそこに書かれている春の歌 →裂いてる紙に書かれているのか、裂いたところから春の歌が覗いたのか。私は最初に読んだ時に後者で情景が浮かんだ。紙を手で裂くのって学生の時を思い出す。 ...
全体的に光の切り取り方が素敵だと思った。 好きだな〜と思ったやつ! ・ゆっくりと両手で裂いていく紙のそこに書かれている春の歌 →裂いてる紙に書かれているのか、裂いたところから春の歌が覗いたのか。私は最初に読んだ時に後者で情景が浮かんだ。紙を手で裂くのって学生の時を思い出す。 ・揉め事をひとつ収めて昼過ぎのねじれたドーナツを買いに行く →ドーナツって他人に認めてもらいたいレベルじゃないけど個人的に頑張ったな〜て思った時、食べたい。 ・太陽が暮れてしまえばうつくしい文章を書かなくてはね、指 →私も人に手紙書く時とかなにか文章書く時って夜かも、と思った。自分の指に話しかけてる雰囲気好き。指先って頭とリンクしてない時ある気がする。 ・過ぎ去ればこの悲しみも喜びもすべては冬の光、冬蜂 →バッサリ切り捨てているようにも受け取れるし、優しく許してくてるようにも感じる。 ・追憶の岸辺はかもめで充ち続けひかりのあぶら揺れてかなしい →過去の情景をだんだん思い出せなくなっていく感じ、「かもめが充ち続け」て景色が見えなくなっていく光景が思い浮かんだ。 ・全世界の虚構の音楽室にある木琴をいま鳴らす力を →小学生の時、音楽室にあった木琴がすごく特別に感じていて、鳴らしてみたかったことを思い出した。鉄琴より木琴だったなあ。 ・冷たさの光のなかで刻まれる紫蘇、その紫蘇の放つ芳香 →紫蘇の不思議な香り好きだ。だからこの歌も好き。 ・なるべくなるべく花火のように息を吐く暗がりで君からも見えるよう →息が白く見えるの、花火のようって素敵。
Posted by
“初夏に心は実に遠くまで響くものだと遠雷を聴く” “透明な涙が胸に湧き出して目から零れるまで藤が咲く” 美しく詩を織りなす言葉たちが私を経験したことないところへ連れていってくれる。 時々、身体のどこかが知ってるような感覚になる。
Posted by
めちゃめちゃ良かったです . 過ぎ去ればこの悲しみも喜びもすべては冬の光、冬蜂 . 「今、この瞬間」のきれいでかけがえのない淡い色彩も、季節として、必ず流れていく、そのことへの深い諦念みたいなものが根底にあるように思う そういうのってけっこう共感できて、「ああこういうのって...
めちゃめちゃ良かったです . 過ぎ去ればこの悲しみも喜びもすべては冬の光、冬蜂 . 「今、この瞬間」のきれいでかけがえのない淡い色彩も、季節として、必ず流れていく、そのことへの深い諦念みたいなものが根底にあるように思う そういうのってけっこう共感できて、「ああこういうのって、後々懐かしくなるんだろうなあ」みたいな、その瞬間すでに距離をとってしまってるような寂しい感覚。読んでて懐かしく、同時に苦しくなる . 町中のあらゆるドアが色づきを深めて君を待っているのだ 生まれた瞬間懐かしくなる歌のように駅の周りで傘は開いた
Posted by
“春の明るい怒りを前に畑中の震えるビニール袋の切れっ端” “明け方の雲や烏や自転車が私の価値観を照らすなり”
Posted by
とても美しい言葉。 それは、どんな詩集にも短歌にも散りばめられているにちがいない。 でも、ここに収められている短歌は、美しいものでありながら、どこか親しみやすく、手に届きそうな感覚がある。 現代的な内容や言い回しにもその一因があるのかもしれない。 けれど、同じ今の世の中を生き...
とても美しい言葉。 それは、どんな詩集にも短歌にも散りばめられているにちがいない。 でも、ここに収められている短歌は、美しいものでありながら、どこか親しみやすく、手に届きそうな感覚がある。 現代的な内容や言い回しにもその一因があるのかもしれない。 けれど、同じ今の世の中を生きる作家が、同じように感じていることを、昔ながらの手法を交えて歌っていることが、とても言葉を響かせているのだと思う。 現代詩のようで、古典的でもあるような、不思議な短歌に、今を生きる人々の心情に訴えるものが感じられるのは、そうした作家の系統的な知と感性が見事な平面を織りなしているからなのだと思う。
Posted by
著者の20代~30代にかけての比較的広範な時期の詩を集めた歌集とあってか、前半の句と後半の句で受ける印象が異なるのは面白い。 客観的な評価軸を持たない私のような門外漢にとっては、どうしても主観的な「好き・嫌い」で判じなければならないわけだが、これは一個人の意見として、確かに言葉...
著者の20代~30代にかけての比較的広範な時期の詩を集めた歌集とあってか、前半の句と後半の句で受ける印象が異なるのは面白い。 客観的な評価軸を持たない私のような門外漢にとっては、どうしても主観的な「好き・嫌い」で判じなければならないわけだが、これは一個人の意見として、確かに言葉は美しい、チカラもある、ただ何故か全体を通して響いてくるものが少なかった、というのが感想である。 だから無価値だという気は毛頭なく、恐らくは読み手の浅学非才・美的センスの欠如に起因する問題なわけだが、言葉の美しさの向こう側にある想いや情念のところまで至れなかったことが非常に残念である。 歌人は何を思ってそれを歌ったのか。私は、秋茄子に出会えなかった。
Posted by
書店で本の装丁に惹かれて購入。ずっと気になっていました。 はじめて短歌というものを本でじっくり読みたいと思いました。 短歌という古めかしい形式の中に、わたしたちの暮らしの情景がすっかり掬いとられているのに感動しました。 読み終わるのが惜しくて、2回にわけて読みました。 活版印刷が...
書店で本の装丁に惹かれて購入。ずっと気になっていました。 はじめて短歌というものを本でじっくり読みたいと思いました。 短歌という古めかしい形式の中に、わたしたちの暮らしの情景がすっかり掬いとられているのに感動しました。 読み終わるのが惜しくて、2回にわけて読みました。 活版印刷が似合う、うつくしい短歌と、うつくしい本です。 だいじにします。
Posted by
好きな歌をひく。 春先の光に膝が影を持つ触って握る君の手のひら 秋茄子を両手に乗せて光らせてどうして死ぬんだろう僕たちは あなたは遠い被写体となりざわめきの王子駅へと太陽沈む 君は君のうつくしい胸にしまわれた機械で駆動する観覧車 太陽が暮れてしまえばうつくしい文章を書かなくては...
好きな歌をひく。 春先の光に膝が影を持つ触って握る君の手のひら 秋茄子を両手に乗せて光らせてどうして死ぬんだろう僕たちは あなたは遠い被写体となりざわめきの王子駅へと太陽沈む 君は君のうつくしい胸にしまわれた機械で駆動する観覧車 太陽が暮れてしまえばうつくしい文章を書かなくてはね、指 君は夢中で道路の脇のカタバミを見ている 本は本から生まれる 眠るときいつも瞳に降りてくる極彩色の雨垂れ、誰か 春の船、それからひかり溜め込んでゆっくり出航する夏の船 文字は花。あなたの淡い感情を散らした紙も枯野を祝う 燦々と月の光の差す道で僕が自分に手渡す桔梗 生きている限りは胸に茄子の花散らし続ける惑乱にいる ほほえんだあなたの中でたくさんの少女が二段ベッドに眠る 暗く優しいあなたの知識の泉からあらわれる敬虔なかたつむり
Posted by
装丁がすきで買ったら、一ページ一首という地球に大変やさしくないスタイルでした。けれどもその余白も大変あいしています。 きらきらと言語を味方につけた人だと思いました。最近読んだどんな歌集や歌人よりも好きかもしれません。
Posted by
- 1