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脳に棲む魔物 の商品レビュー

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15件のお客様レビュー

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2014/08/10

時間つぶしのため、たまたま入った新宿紀伊国屋1FLの新刊棚で手にした本。『脳に棲む魔物』というタイトルは仰々しいが、脳に障害を受けた人の性格が変わったのだろうと想像がつくネーミングだ。パラパラと読んでみて購入を決めた。帯にはNYタイムズのノンフィクションで1位になったとある。 ...

時間つぶしのため、たまたま入った新宿紀伊国屋1FLの新刊棚で手にした本。『脳に棲む魔物』というタイトルは仰々しいが、脳に障害を受けた人の性格が変わったのだろうと想像がつくネーミングだ。パラパラと読んでみて購入を決めた。帯にはNYタイムズのノンフィクションで1位になったとある。 本のカバー裏の写真でみる、著者のスザンナ・キャハランはなかなかの美人。「こんな綺麗な人がどんな魔物に?」という興味も惹かれる。日本ではスザンナ・キャハランで検索してもあまり出てこないようだが、Youtubeなどで「Susannah Cahalan」でググると沢山出てくる。TEDのURLを付けておく。 https://www.youtube.com/watch?v=bQvqAaOLBnw スザンナ・キャハランはワシントン・ポストの記者だ。そんな彼女はごくごく普通の生活を送っていたのだが、あるときからトコジラミが異常に気になったり、大切な仕事のインタビューで頓珍漢な質問をしたり、偏頭痛に悩まされたりし始める。そして最後は、全身を硬直させて、口から血の混じった泡を吹き出すまでの激しい発作まで起こす。 当初、病院で検査を進めるも、原因は分からなかった。だが、彼女にとって幸いだったのは、その数年前に「抗NMDA受容体脳炎」が発見されていて、それを疑う医師・ナジャー先生に巡りあったことだ。この病気は、神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体、NMDA型グルタミン酸受容体に自己抗体ができることよる急性型の脳炎だ。つまり、自分で自分を攻撃するようになり、脳内の神経伝達がうまくはたらかなくなるということだ。幸いなことに、この病気に気づいたナジャー先生の処置で、著者は徐々に回復に向かう。 この本を読んでいると、つくづく「自分とは何か?」と考える。頭の回路が少し不調をきたすだけで、まったく別の人格になる。心配でしかたなくなる。一つのことにこだわる。そして、疑う。本当にちょっとした神経回路に不具合が生じるだけで、まったく違う自分が浮かび上がる。繊細な脳神経システムがシンフォニーを奏でるが如く機能しているときに、普段の自分がいる。でも、それって、本当に自分なのか。実は自分だと思っているものは、単に脳が作り上げた虚像ではないのか。そんな風にも思えてくる。 だが、一方でこの本を読んでいて思うのは、そんな「自分」でも、大切なものがあるということだ。スザンナ・キャハランは、病気にかかり大変だった時期に、良心とボーイフレンドに助けられた。彼女の人生でとても困難だった時期に、「安心」と「意味」を与え続けてくれた。人は「安心」する場所が必要だし、そして「意味」も必要だ。 この本を読むと、自分自身がいまここにいる「意味」を考えさせられる。

Posted byブクログ

2014/08/11

ちょっとおどろおどろしさを感じる表紙写真でホラー小説か何かを想像してしまいそうだが、脳を侵すタイプの自己免疫疾患にかかった、ニューヨークポストの記者である著者の闘病記である。 著者が「映画『エクソシスト』の主人公の少女が私の症状とそっくり」と評しているのを読めばお分かりかと思う...

ちょっとおどろおどろしさを感じる表紙写真でホラー小説か何かを想像してしまいそうだが、脳を侵すタイプの自己免疫疾患にかかった、ニューヨークポストの記者である著者の闘病記である。 著者が「映画『エクソシスト』の主人公の少女が私の症状とそっくり」と評しているのを読めばお分かりかと思うが、想像を絶するほどの壮絶な症状の連続に、よくぞご家族は諦めず寄り添い、徹底的に原因の追求まで辿り着いたものだと思う。この病気が解明されたあとの発病だったことも幸運だったとは思うが、当時、まだ医療関係者にさえあまり知られていない病気だっただけに、本当にラッキーだったのだろう。 また、壮絶な闘病のなか、周囲の人々が日記やビデオなどで記録をとり続けていたことも驚きだ。結果、当時の記憶が欠落しているという著者が、この臨場感あふれるスリリングな闘病記を書き上げることができ、こうして世にこの病気を知らしめる機会を作ることができたわけだ。 著者もいうように、解明されたのが最近なだけで、病気そのものは必ずしも新しいものではなかったようだ。そう考えると、今までに何人の人が正しく治療を受けられないまま、悪化させたり命を落としたりしていたのかと暗澹たる気持ちにもさせられる。ひょっとして、今現在も、誤解されたまま正しい治療に結び着いていない人がいるかもしれない。著者が7ヶ月で仕事に復帰したことを思うと、その想像は恐ろしくすらある。 現在は記者の仕事をこなしつつ、この病気をより多くの人に知ってもらうための啓蒙活動にも奔走しているらしい。 再発の危険もそれなりにはあるらしいが、研究されてまだ年数が浅いこともあってまだまだわからないことも多いのだそう。 著者の活動が実を結び、病気の解明が進んで多くの人が救われることを願う。

Posted byブクログ

2014/07/23

「脳に棲む魔物」読んだhttp://www.kadokawa.co.jp/product/301404000029/ … 自己免疫疾患に苦しんだ著者自身によるノンフィクション。治療費1億に驚く(日本の皆保険制度は素晴らしい!)病名も原因も判らず治癒の希望もなく、ただ自己崩壊してい...

「脳に棲む魔物」読んだhttp://www.kadokawa.co.jp/product/301404000029/ … 自己免疫疾患に苦しんだ著者自身によるノンフィクション。治療費1億に驚く(日本の皆保険制度は素晴らしい!)病名も原因も判らず治癒の希望もなく、ただ自己崩壊していく。病気がそこにあるのに医学は太刀打ちできない(つづく 昔から存在している病気でもそれが認識されない限り病名はつかず治療できない。闘病記を新聞掲載したおかげでこの病気の存在が広く知られることになったのは、患者と家族にとっては救いだと思う。探究心や使命感が強い医者のおかげで医学の発展はあるのだ。怠慢な医者も多いけど!(つづく 両親はともかく彼の献身ぶりに胸を打たれる。よく半年以上信じて介護したと思う。言語機能などアウトプットのレベルが低いと狂人/精神薄弱と思うまではいかずとも幼児扱いはしがちだけど内部処理は通常の場合があるから接し方は充分考慮しないと。これは外国語での会話でも同様だと思う(おわり

Posted byブクログ

2014/07/18

一気に読めるミステリーを超えた一冊。 これがフィクションではないということも驚きだが、 この病を乗り越えた彼女が 偶然にも物書きであり、 のちに情報を集めて本書にまとめられたことは奇跡のようなものだ。 既存のミステリーに飽きた人にぜひおすすめしたい。

Posted byブクログ

2014/06/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ニューヨークポストの記者が自身の体験を書いた体験記です。 著者は2009年に病気になるまでは、社交的で話し好きな有能な記者だった。しかし徐々に精神的におかしくなっていく。部屋にシラミがいるという確信が離れず、彼氏の部屋をあさったりし、徐々に仕事がうまく運ばなくなる。かかりつけ医や神経内科医へかかるが、異常なし。しかしついに痙攣発作を起こす。そしてニューヨーク大学に入院するが、その後幻覚などが出現し・・・ 前半は謎解きのようなホラーミステリーのような感じ。後半は、疾患から立ち直っていく姿。自身とは何か?のような哲学的話もあり、疾患の解説も含まれています。 自身は、病気の間の記憶が曖昧のようで、様々な情報(病院のビデオなど)や、自身に浮かんだ心中を混ぜて、小説のようになっています。記者としての冷静な目も見られ、興味深く読める体験記です。目次にIVIGや脳生検などがあり、知る人は何かわかると思いますが、一般には知れれていない病気と思います。

Posted byブクログ