短歌的生活 の商品レビュー
高森邦明(1930年~)氏は、広島大学教育学部卒、東京教育大学大学院博士課程修了、富山大学、筑波大学の教員、国語科教育学担当等を経て、筑波大学名誉教授。茨城歌人会、土浦短歌同好会などに所属。 私は50代の会社員で、近年短歌に興味を持ち始め、俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍...
高森邦明(1930年~)氏は、広島大学教育学部卒、東京教育大学大学院博士課程修了、富山大学、筑波大学の教員、国語科教育学担当等を経て、筑波大学名誉教授。茨城歌人会、土浦短歌同好会などに所属。 私は50代の会社員で、近年短歌に興味を持ち始め、俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら等の歌集や短歌入門書、また、山田航の『桜前線開架宣言』、瀬戸夏子の『はつなつみずうみ分光器』、東直子/佐藤弓生/千葉聡の『短歌タイムカプセル』等の現代短歌アンソロジーを読み、1年ほど前から投稿を始めた新聞歌壇では、多数の歌を選んでいただいてもいる。 本書については、短歌関係の本をネットで物色している中で、題名から、(プロではない)歌人が短歌や短歌を詠む生活の楽しさを綴った本を想像して購入した。 目次は以下である。 <生き方> 1.歌を作る生き方「同好会的活動」 2.歌作りを楽しむ生活 <詩性> 3.詩性とは何か「批評から学ぶ」 4.自然詠は詩性をどう捉えているか <叙情> 5.叙情とは何か「短歌と俳句」 6.悲傷の歌「叙情の極み」 <写実> 7.事実と虚構「写実に始まる」 8.写実「絵画的と余情的」 9.写生の方法「事実と映像」 <歌種> 10.人間を詠む「仕事詠・生活詠」 11.スポーツと旅を詠む「非日常の行動詠」 12.社会の出来事を詠む「社会詠」 <感動> 13.詩的感動力の修練「感性を研く」 14.歌作り三原則と感動案内 <想> 15.虚構力の修練「写実と空想」 16.疑問語と文展開語「発想転換の契機」 17.短歌の表現カンバス「表現の自由さ」 <論> 18.風狂の生き方「芭蕉に従う」 19.短歌は下手でよい 読み終えて、全体としては、著者の短歌論的な性格が強い内容で、少し期待とは違ったのだが、それでも、自分より一世代上で、地域の短歌会や新聞歌壇を中心に活動している、おそらく日本の短歌人口の大勢を占める人々を代表するような著者が、短歌についてどのような考えを持ち、どのような歌作りをしているのかを知ることができて、それなりに役に立った。 そして、同時に、短歌というのは本当に自由なものだということ、裏を返せば、歌の作り方や評価は、人や集団や場によって大いに異なるものであることを、改めて感じた。(著者は、今や最も人気のある歌人の一人である穂村弘の歌を全く評価していない。短歌論としては、似たことも言っているのだが。。。) また、最後に書かれていた次のようなセンテンスは、心に留めておきたいと思った。 「言葉の表現が読者に感動を与えるのは、その内容如何にあるということは、言うまでもない。感動を与えるということは、要するに話題になりうること、面白いと思われることである。何が面白いかといえば、作者が表現するものの見方、生活法、人間性そのものである。「短歌はつまるところ人間の問題だ」ということである。作者という人間の在り方が短歌の題材であり、内容である。短歌をして文学という場合でも同じことである。ただ、短歌は自分の思想を理解させる手段ではなくて、動作・情況をそのまま提示して心に感じさせるだけのものである。」
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