コントロールされた線とされない線 の商品レビュー
本書はプロダクトやインスタレーションなどを収録した作品集。 興味深かった作品は「睡蓮」「泉」『「前髪」と「赤い鯨」』「ブロッサム」の4作品。 「睡蓮」はステンレスの丸棒で作られた格子状の椅子。丸棒の表面を方向ごとに色を変えて塗ることで、見える角度により色彩の比率が変化し、比率が...
本書はプロダクトやインスタレーションなどを収録した作品集。 興味深かった作品は「睡蓮」「泉」『「前髪」と「赤い鯨」』「ブロッサム」の4作品。 「睡蓮」はステンレスの丸棒で作られた格子状の椅子。丸棒の表面を方向ごとに色を変えて塗ることで、見える角度により色彩の比率が変化し、比率が大きい色が椅子全体の色を決める。 実際には色を同時に3色見ているはずが、角度によって色彩の比率が異なるため、比率の大部分を占める色が浮き上がって見える。物体(主)が見せる色を決めているのではなく、観察者(客)が見る色を決めているような感覚を持ち、面白いなと思った。 「泉」は0.3ミリのピアノワイヤーを格子状に重ねて作った長方形高さ2m の立体物。0.3ミリという極細の部材のため、遠くから見たらそこには何も無いように見えるが、近くで見たら巨大で繊細な立体物が現れる。また光の当て方によって見え方に変化が起きる。光の当て方を前面や波紋、スポットライトのように変えることで、光の軌跡に変化が起きる。 『「前髪」と「赤い鯨」』はリボン(帯状の紐?)で作られた一面の仕切りとインスタレーション。それぞれの作品自体に大きな変化がないためまとめる。 これらは一面を無数のリボンで作り、リボンの接合する開始点と終了点をずらすことで懸垂線と呼ばれる力学的な曲線を生む。角度と距離によって、その一面より奥に見える対象物の見え方が変わるというもの。 「ブロッサム」は花びらの形をした金属板や紙を壁に貼った作品。 金属板はレーザーカッターで熱すると縁が反り、紙は壁に鋲で止めると、収縮して反る。その反りの形自体ではなく、反ったものを平らな所に設置することで生まれる影に注目した着眼点が面白いと思った。 全ての作品に共通して、物と物を見る者、主と客の関係を考察しているようで面白かった。見る者の角度と距離によって変化する認識の違い、これは現象学的な視点とも言えるのだろうか。興味深い一冊だった。
Posted by
すごい緊張感がある。 私はまだこの本のタイトルを完全には理解できていないけれど、コントロールされない線をも包括するなにか、力のようなものが必要なんだと思った。
Posted by
- 1