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南朝の真実 の商品レビュー

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2018/08/16

 表面上は南朝の間断のない内紛・抗争や非「道徳」性を取り上げ、皇国史観以来の「南朝=忠臣」幻想を打ち砕いているが、実は手の込んだ建武政権・後醍醐天皇再評価論である。恩賞宛行における施行状の発給システムが建武政権と室町幕府で継続していることを根拠として建武新政を再評価し、足利尊氏こ...

 表面上は南朝の間断のない内紛・抗争や非「道徳」性を取り上げ、皇国史観以来の「南朝=忠臣」幻想を打ち砕いているが、実は手の込んだ建武政権・後醍醐天皇再評価論である。恩賞宛行における施行状の発給システムが建武政権と室町幕府で継続していることを根拠として建武新政を再評価し、足利尊氏こそ後醍醐天皇の政治的後継者であったとするが、「建武政権は時代の先端を行きすぎた権力であり、周囲に理解されない先駆者の悲劇を味わった」(p.174)という政権の失敗を「周囲」に求める評価は、本書が批判対象とする皇国史観の平泉澄のものと変わりなく、極めて危険な考え方である。  一般に知られていない、あるいは忘却されていた史実を再発掘して固定された南北朝時代像を克服しようとする意欲は認めるが、いくら一般向けとはいえあまりにくだけた語り口や、性急に現代の政治状況に類似性を見出して「教訓」(文字通りそういう1章を設けている)を導く方法も正直不愉快だった。「歴史学とは高度な知的娯楽」(p.212)と断言してしまう歴史学研究者が京都大学のようなアカデミズムの中心から出現したことは、はっきり言って歴史学の将来に不安を抱かせる。

Posted byブクログ

2014/06/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

南朝には忠臣がたくさんいて、内紛ばかり繰り返していた室町幕府とは違うーーという認識は本当なのか?という出発点の本。 結論的には、南朝も幕府と変わらず(むしろそれ以上?)、内紛の繰り返しだった。 大塔宮とその子供たち、大覚寺統嫡流康仁親王、鎌倉幕府を再興しようとした?西園寺公宗、北陸へ下向した「天皇」恒良と新田義貞などなど。 これまであまり論じられてこなかった「忠臣なのか?」(後醍醐の政治思想に賛同していたのか、南朝を裏切らなかったのか…等)の視点で書かれていてとても面白かった。 文章も読み易くすらすら読める。

Posted byブクログ