シテミタイ の商品レビュー
片想いをしていた颯太に告白し、念願かなって両想いになることができた瑠衣。幸せに満ちた日々を送る瑠衣であったが、颯太の部屋で見つけた気味の悪いファイルからひとつの疑念を抱くようになる。その疑念は大きくなり続け心を蝕んでいく。 *** こちらは携帯ホラー小説。昔読んだ「Hの消し...
片想いをしていた颯太に告白し、念願かなって両想いになることができた瑠衣。幸せに満ちた日々を送る瑠衣であったが、颯太の部屋で見つけた気味の悪いファイルからひとつの疑念を抱くようになる。その疑念は大きくなり続け心を蝕んでいく。 *** こちらは携帯ホラー小説。昔読んだ「Hの消し方教えるスレ」という小説の同作者である。前の本も先が気になってページをくる手が止まらなかったが、こちらの本も手が止まらず一気に読み切ってしまった。 ある体質を持つ人間に物理的に体を狙われるというサスペンス色の強いホラー小説。怖いというよりもゾッとしたという表現がふさわしい一冊。周りの人間があまりにアグレッシブで瑠衣が可哀相すぎる。ちょっとみんな一旦落ち着こうぜ!と何度思いながら読んだことか。一番落ち着いてほしかったのは、瑠衣の親友であるマナミの恋人である太陽。この男があらゆる意味で諸悪の根源だった。瑠衣と颯太が恋人になる以前からマナミの恋人であり、瑠衣の友人であった太陽であったが、瑠衣が颯太と恋人同士になった途端に、謎アプローチ。 当然、颯太とマナミを優先したい瑠衣。太陽を傷つけないようにかわし続けるが、何度なだめても太陽は諦めようとしない。その時点で大分太陽に対して「は?」いう感じだった。その所為で、マナミとの関係もギクシャクしてしまい、仲が良かった二人の関係は、あっけなく終わりを告げてしまった。親友も失い、恋人からも距離を置かざるを得なくなった状況に付け込むように瑠衣に言い寄る太陽。なんてかわいそうな主人公だ。読んでいて、すべての原因を作り出した太陽に対してかなりヘイトがたまっていく。 言い寄る太陽を突っぱねられない、瑠衣の優柔不断さも原因の一部だろうが、そもそも恋人がいるのに別の女の子(しかも最近恋人ができたばかり)にアプローチを仕掛ける太陽がどう考えても一番悪いし、気持ち悪い。何故ここまで太陽が瑠衣に執着するのかというのは後述される展開によってわかるのだが、本当に最悪すぎる。お前さえおらんかったらみんな幸せだったのに……。つい思ってしまった。ここまでホラー小説の登場人物に感情移入するのは久しぶりだ。瑠衣やマナミ、颯太が喜んだり苦しんだり、悲しんだりする姿を小説を通して感じたからだろう。 この作者さんの前作もそうだったが、主要人物の心情や行動が丁寧に書かれていて、共感を生みやすい。方向性が違うが恋人を想って苦しむ瑠衣もマナミも颯太も非常に人間らしくてよかった。(ただし太陽は論外)そこも魅力的な一冊なのだろうと思う。もう一冊この作者の本があるようなので、入手して今度読んでみようと思う。
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