ナショナリズム入門 の商品レビュー
「入門」の通り、ナショナリズムの理解に不可欠な「ネイション」という概念を軸にして解説している。非常に理解が容易。
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〝ナショナリズム〟という思想が、日本だけでなく東西ヨーロッパや南北アメリカ、ロシア、中東のアラブ諸国でどのように考えられているか、どのように扱われているかが紹介されている。最初に読者層の大半をなすであろう日本に居住する日本人がおおよそイメージする〝ナショナリズム〟を扱い、そこか...
〝ナショナリズム〟という思想が、日本だけでなく東西ヨーロッパや南北アメリカ、ロシア、中東のアラブ諸国でどのように考えられているか、どのように扱われているかが紹介されている。最初に読者層の大半をなすであろう日本に居住する日本人がおおよそイメージする〝ナショナリズム〟を扱い、そこから日本のナショナリズムと比較する形で世界各国でナショナリズムがどのように考えられているかが解説されていく。 易しい文体で書かれていながらも、詳しい事例が引用されており分かりやすかった。何より、事例の引用元や詳細な資料となる書籍が紹介されているのが、これから更に学習していくうえでとても助かった。
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「ナショナリズム」を、民族と領土と国家という三つのファクターが複雑にせめぎあう現象としてとらえ、日本のほか、ドイツやユーゴスラビア、カナダ、アメリカ、イタリア、ロシア、中国など、さまざまな国家を例に、そうしたせめぎあいの諸相を解説している本です。 「ネイションとは何かを多くの人...
「ナショナリズム」を、民族と領土と国家という三つのファクターが複雑にせめぎあう現象としてとらえ、日本のほか、ドイツやユーゴスラビア、カナダ、アメリカ、イタリア、ロシア、中国など、さまざまな国家を例に、そうしたせめぎあいの諸相を解説している本です。 「ネイションとは何かを多くの人がさまざまに問うことが、ネイションの内容を豊かにし、その魅力を高めてきた」と著者はいいます。「そのような言論の自由と創造的な姿勢こそは、ネイションを支えるものであり、それらを失えば、ネイションはその勢いを失っていきます」という著者の警告も、個人的には賛同できるように感じられました。 ただし本書は、著者自身の考えるナショナリズムについての入門書としての性格が強く、ナショナリズムをめぐる言説について読者に紹介するような内容の本ではありません。もちろんこのことは本書の欠陥というべきものではありませんが、「ナショナリズム入門」というタイトルから、そうした内容を期待する読者もいるのではないかという気もします。
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ハズレの少ない講談社新書。あまり馴染みのなかったナショナリズムについても本書でとりあえず基礎はわかった。 まず「形の見えるネイション」として、島国である日本が世界でも特異なネイションである点を説明してくれるあたりが良い。 また淡々と「東欧はアメリカのような合衆国にはなりませんでし...
ハズレの少ない講談社新書。あまり馴染みのなかったナショナリズムについても本書でとりあえず基礎はわかった。 まず「形の見えるネイション」として、島国である日本が世界でも特異なネイションである点を説明してくれるあたりが良い。 また淡々と「東欧はアメリカのような合衆国にはなりませんでした」と説明してしまうのも読んでいて気持ちがいい。そのほか、ネイション内部での主導権争い、なぜネイションは増え続けるのか、についても理解できたのでよかった。 でも地政学の本って言われたら、地政学の本な気もするのだけど、ナショナリズムの起源というか本質は地域であるのだから、地政的な事実を語らずにナショナリズムだけ取り出すとおかしなことになるんだろうなと勝手に解釈。 また結構な数の参考文献が記載されていてこういう著者には好感が持てた。
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本書ではナショナリズムをネイションへのこだわりと捉え、ネイションを中心に紐解いていく。特にネイションの形成が人間集団単位の形成と地域単位の形成とふたつに区分し、それぞれのこだわりと、両者のせめぎ合いによる紛争やネイション形成について、さまざまな事例をもって解説する。 ナショナリ...
本書ではナショナリズムをネイションへのこだわりと捉え、ネイションを中心に紐解いていく。特にネイションの形成が人間集団単位の形成と地域単位の形成とふたつに区分し、それぞれのこだわりと、両者のせめぎ合いによる紛争やネイション形成について、さまざまな事例をもって解説する。 ナショナリズムや民主主義は人間集団を動かそうとするアクセル役であり、自由主義は個人の自由を守ろうとするブレーキ役となるという視点は自分にとって新しいものだった。 改めて思うのは、日本人にとってネイションという概念を理解するのは簡単ではない。ネイション=民族=国家=地域という類稀な条件に置かれるからだ。同時に日本ネイションへのこだわりに対する拒否感は、大戦の記憶ゆえなのか、自由主義による抵抗感なのか、まだよく整理ができていない。 淡々と論じる中で最後の一文は大変印象に残る。 「ナショナリズムの流行はネイションの流行であり、それはつまり、世界の分裂です。世界を分裂させていくネイションをまとめ、意味のある世界を新たに作り出していく知恵を出すことが、二一世紀の人類の課題ではないでしょうか。」
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非常勤で「エスニシティ・地域・境界」というテーマを持った社会学の講義を担当しているが、最後の事例でヨーロッパの話をする予定である。国民国家という政治システムは近代期にヨーロッパで誕生した、みたいないい加減な話をしているが、じゃあ、実際にヨーロッパ内部で国境の変動がどのようなもので...
非常勤で「エスニシティ・地域・境界」というテーマを持った社会学の講義を担当しているが、最後の事例でヨーロッパの話をする予定である。国民国家という政治システムは近代期にヨーロッパで誕生した、みたいないい加減な話をしているが、じゃあ、実際にヨーロッパ内部で国境の変動がどのようなものであったのかという知識を私はあまりもっていない。 それこそ、最近は授業の補足資料として高校の世界史の教科書を使っているが、そこにそれぞれの時代のヨーロッパの地図が載っている。しかし、地図を見せただけではなんの説明にもならないので、これから勉強していくつもり。そんなつもりで手を出した、講談社現代新書の1冊が本書。別の大学では前期にナショナリズムをテーマとした講義をしたが、本書はナショナリズムについてはあまり書かれていないようなきがする。 以下、目次で分かるように、事例を挙げて説明されているのは「ネイション」についてである。 はじめに——ナショナリズムを見た日 第一章 ネイションの作り方 第二章 ネイションの自明性──日本の形 第三章 ネイションの多義性──ドイツの変形 第四章 人間集団単位のネイション形成(一)──ドイツと東欧 第五章 人間集団単位のネイション形成(二)──ユーゴスラヴィアの滅亡 第六章 地域単位のネイション形成(一)──アメリカ大陸の状況 第七章 地域単位のネイション形成(二)──ヨーロッパの西と南 第八章 ネイション形成のせめぎ合い──重複と複雑化 第九章 ナショナリズムのせめぎ合い──東アジアの未来 第一〇章 政治的仕組みとネイション 本書では、nationを国民とは訳さず、もちろん民族とも訳さず、ネイションというカナ表記にしている。ナショナリズムを考える前提としてのネイションの理解である。そういう意味では、本書のタイトルは相応しいが、一般的な理解としての「入門」とはいえないかもしれない。ともかく、内容をパラパラめくって購入した私の必要とする知識には十二分に応えてくれる内容だった。 ナショナリズムや国家論に関しては、著者の専門分野である政治学(法学部所属)が最も中心だと思うが、私が読んできたのは社会学や歴史学が中心だったので、本書はちょっと読みにくい。加えて、新書ということで「ですます」調を使っていることも、私のような読者には読みにくい点。しかし、読みにくい分、第一章で示される著者の立場、認識をさらっと読み流すのではなく、何か違和感が残るまま読み進めることができる。 その違和感は第二章以降の事例の話で解消されていき、説得されていきます。「おわりに」にも書かれているように、著者の専門はドイツと日本、多少の東欧ということですから、本書の第六章以降は専門外ということになります。ただ、だからこそ翻訳のある文献からの説明を中心とした内容は、それ以上知りたい場合には参考文献にあたるという形で理解を深められるようになっていて、新書らしい内容だといえます。 内容に関しては目次にほとんど示されているので、詳しく説明しませんが、国民国家は国土という空間的に連続する範域を必要としますので、地域というのは必須です。しかし、一方では国民を形成する人間集団はなるべく均質であることが望まれますから、人間集団単位でまとめることが要求されます。このある意味では相容れないものを整合させようという試みがさまざまな問題を生んでいるということになります。
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文章がところどころ細かすぎる部分があるが、ナショナリズムという抽象的かつ複雑な概念(特に日本人には感覚的に理解しにくいもの)を入門者に理解できるように書かれている。 昨今のISISの動きや異文化を考える際には役に立つ本
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・ナショナリズム・・・ネイションに対するこだわり →ネイションには、人間集団単位のネイション形成と地域単位のネイション形成がある 第一章 ・ネイション・・・何らかのまとまりであり、ある人間集団にとって特別な土地 →日本は、形がわかりやすく、歴史の堆積が分厚いので、ネイションとしての自明性がとても高い。 第十章 ・ネイションによって、国家と住民のつながりができる。住民の心が入り込み、国民国家の国民が名実ともに成立して、国家は支配の根拠と発展への推進力を獲得する →警察や、国家で秩序をつくったとしても服従しないのはこれが理由 ・民主主義は、公的な事柄について「自分たちの国を自分たちでつくる」ということ。これは、ネイションへのこだわりからくる。他方、自由主義は個人の権利を尊重しているので、民主主義やナショナリズムとは対にある、 →やはり、歴史的にみても自由主義が尊重されない国は、打倒されている ・自己の生きる枠組みを自分で確保する上で、ネイションが最も低コスト
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※このレビューにはネタバレを含みます
負の歴史は、世界の至るところにあります。横目で見れば争いは絶えず、悲劇が繰り返されるだけでしょう。多くの人がネイションにしがみつかないようにするには、しがみつかなくても生きていける、あるいはより良く生きていける展望が必要です。(p.146) 近代化が中途半端な時期にこそ、ナショナリズムは盛り上がるのではないかと思うのです。それは簡単に言えば、普通の人が外国のことを知っていても、現実にはまだ行ったことがない時期です。近代化が成功して強大化した実感はあるものの、自分自身の生活に関して言えば、まだそれほどでもない、という頃合いになります。ネイションへのこだわりが大衆にまで普及し浸透するこの時期は、力強さと一体性へのこだわりが強くなり、ネイションにすがって暮らしを良くしてもらおうと期待しがちな時期なのです。(p.248) 近代化の進展は、近代国家の権力を急速に増殖させていきました。軍事力にせよ経済力にせよ、近代国家が動員することのできる権力資源は、時とともに増大し、近代国家は政治的に一人勝ちしていったのです。ネイションは、そのような国家と結びつくことによって、絶大な力への通路を確保しました。その結果、ネイションは、国家の力に直接アクセスできない人々にとって、権力への迂回通路となったのです。(p.270)
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ナショナリズムを、「土地を持ち、その土地の上に文化的なものや国家的なもので歴史的に形成され、ネイションへの命式と意欲が目覚めて、ネイションとして広く認知されたもの」という定義(フリードリッヒ・マイネッケによる 本書P.36より)を、いろいろな実例で検証し紹介している。 日本の形...
ナショナリズムを、「土地を持ち、その土地の上に文化的なものや国家的なもので歴史的に形成され、ネイションへの命式と意欲が目覚めて、ネイションとして広く認知されたもの」という定義(フリードリッヒ・マイネッケによる 本書P.36より)を、いろいろな実例で検証し紹介している。 日本の形、ドイツの変形、ドイツと東欧、ユーゴスラヴィアの滅亡、アメリカ大陸の状況、ヨーロッパの西と南、重複と複雑化(ロシアやトルコやアラブ)、東アジアの未来、政治的な仕組みの各章に分けて解説している。 個人的には章末の参考資料が最近の著作が多く、筆者が持論を展開するのではなく、啓蒙書の新書としてまとめているように感じられた。
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