デザインがイノベーションを伝える の商品レビュー
「デザインがイノベーションを伝える」鷲田祐一(著) 日本は、デザインを軽視していることで、世界の競争に負けているのではないか? という鋭い指摘をする。改めて、「デザイン」の経営戦略の中でどう位置づけるか? ということを考えさせてくれる本だった。 経営者に見られる「思考の落とし穴」...
「デザインがイノベーションを伝える」鷲田祐一(著) 日本は、デザインを軽視していることで、世界の競争に負けているのではないか? という鋭い指摘をする。改めて、「デザイン」の経営戦略の中でどう位置づけるか? ということを考えさせてくれる本だった。 経営者に見られる「思考の落とし穴」として、「機能は理性、デザインは感性」という分類は正しいと言えるのか?。デザインそれ自体が、高度な機能であり、感性だけでなく理性にも強く訴える力を持っていると指摘する。 この本の中で、興味を引いたのは、日本の歴史ある伝統工芸産業が、デザインを極めているように見えるが、海外にも進出できるデザイン産業になり得ていないことを指摘する。 「色やカタチをつくる行為」「コンセプトを作る過程」という域を超えて、産業論として捉えるべきという。 伝統産業の陶磁器、鋳物、木工品、金箔、和紙、刃物などは、室町時代から江戸時代初期に創生・形成された産業。この産業は、日本独自の文化に取り組まれ、伝統の象徴として形成されていった。 芸術・伝統工芸産業従事者は、3万人余の状況となっている。 そういう中で、現代のライフスタイルに適合させる、輸出促進、ものづくりとしての再評価が行われている。しかし、なぜ弱体化したのか。1960年代までの細かすぎる分業体制と硬直な問屋制度にあった。それを束ねたのが「販売協同組合組織」が強い影響力を持ちすぎて、新しい創造を阻害する例が少なくなかったと指摘する。その組織が、産地内での競争原理が働かなくした。つまり、伝統を守る壁を産地で作ってしまったという。 伝統工芸品を現代の生活に適合させ、生活の道具としての価値を見つめ直す。ライフスタイルにあった伝統工芸品の創出。九谷焼の新しい取り組みでは、ワイングラスの足の部分を九谷焼として、フランスに輸出する。文化の違いの相互理解のなかで生まれる。伝統工芸は、「大人っぽく、落ち着いた雰囲気で、シブい」という取り組みだけでなく、「カワイイ、若々しい雰囲気」にもデザインできるという。日本ユニシスの海外への伝統工芸品の販売ネットワーク、物流の取り組みもおもしろい。 結局は、伝統職人の能力が高いにもかかわらず、作家性(自己主張や個性)をもっとアピールする。 日本では、マイナスの美学を理解させる方法の開発。「手作り」は、付加価値を産まない。 デザインというものを、個々ではなく、産業全体に志向すべきだという指摘は面白かった。 この伝統産業への指摘が、日本の産業にも指摘できることだと思う。 なぜデザインが重視されないか?5つの戦略提案がなされている。①文系と理系という知識戦略の構造改革。アブダクションによる創造行為の重視。②ジレンマの克服。アップルの高付加価値大量生産商品はデザインが支えている。作家性の重視か市場性の重視の2者択一でない取り組み。③特許などは知的財産権があり、会計上でも優遇されているが、デザインはそうでなく、消費される経費となっている。そのことの改正。④公共開発にデザインを投入する。⑤「オタク」「カワイイ」は、サブカルチャーではなく、日本のデザイン産業の中心であるという理解。を挙げている。 なるほど、と納得した次第。かなり大きな視点でデザインを捉え直して、日本のイノベーションをはかることが、創造日本を作り上げていくことになるだろう。いい本だった。 デザインの本なのに、画像など少なく、デザイン性がないのが残念だった。 題名の「デザインがイノベーションを伝える」というより、「デザインが産業を変革する」でしょうね。
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・戦略シナリオの策定にデザイナーが関与すれば、文字や数字、あるいはグラフだらけの発表書類に加えて、その戦略シナリオが指し示す顧客像のイラストが付け加えられたり、理想とする商品のイメージが書き添えられたりする。「アブダクション」を用いる
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デジタルインパクトは日本企業にとって逆風になってしまった。 デザインは大学で学んできたことはあまり役立っていない。 理系人材の問題として想定額から目をそむけない勇気が必要。 文系人材の問題としては未来を見る勇気を持つ必要性。
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