きんきら屋敷の花嫁 の商品レビュー

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2021/01/29
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天涯孤独の身だった知花に突然、見合いの話が舞い込む。相手は資産家の長男。とんとん拍子に話は進み、玉の輿に乗る形となった知花だったが、嫁ぎ先の飯盛家は極端に外部との交流を避ける奇妙な家だった。 *** 角川ホラー小説であるが、心がすっと冷えるような怖い話ではない。とある一つの資産一家に嫁入りした知花という女性の視線から、この一族の繁栄と衰退の日々を見ていく話だった。ただひたすらに、知花を通して飯森家の日常の有様を見ていく。日常の有様といっても、私たちが日々過ごしている日常とは全く異なるものであった。まず、外部との交流を嫌っているため、資産家だというのにお手伝いさんの類はいない。この家に住まう女性たちが日々の掃除や炊事を行う。この外部との交流をほとんど行わないという姿勢は非常に徹底されている。買い出し以外で外部に出ることはほとんどない程だ。いつもなら読んでいて、非常に閉塞的で嫌な感じだなと感じるのだが、不思議とこの小説はそう思わなかった。読み進めて行けばいくほど、それが普通の事だと思わされてしまう。外部から嫁いできたにもかかわらず、この家に溶け込もうと努力をする知花に感化されてそう思うのかもしれないが。溶け込もうと努力をしている、にしても知花は順応力がありすぎ。普通なら、なんでそんな事をするのかと疑問に思ったり、怒りを覚えたりするようなことでも、あるがままに受け入れ、あるいは受け流しこの家にとっての理想の嫁の形をとって生きる。本人はそれを苦痛に思っていないようだ。時々感情の振れはあるのだが、大きく振れることはなく一瞬誤作動の様に振れたりするだけで、少し異様さも感じだ。それは、この物語の主たる部分である、この家の富をもたらす人間とは似て非なるものを、1人で洞窟の奥から連れてこいといわれた時もそんな感じだった。洞窟へ至るまでの道や、洞窟内に現れた、人間とは似て非なるその『何かを』目撃した最初の方だけ恐怖心を持っていた。でも、それだけだった。普通、目の前に人間の形をした土くれが泥状の土の中から現れたらもっと取り乱しそうな気がするが、それがない。あまりに知花が動揺しないものだから、それも全くそう感じなかった。一番の盛り上がりである、緩やかに衰退していく飯盛家の有様の場面でもそう思ったのだから、読んでいて非常に変な気分になった。かといって、盛り上がりどころにかけるのかといわれると、そういう訳ではない。今まで読んだ事がない雰囲気をまとった小説だった。 最後の最後に色濃く出た主人公の感情も、やっと主人公の人間らしい感情が見れたと思ったのだが、どこかこの家と土地に囚われているような風だった。そこが一番怖かったような気もする。読了後も頭の中にもやがかかったような、フワフワするような心地だった。数日後に、この小説の内容を思い返すとこの一家が素晴らしく異常だと気付くことは、自分でもわかっているのだが、不思議と今はそう思えない気分。 本当に奇妙な小説だった。

Posted byブクログ

2014/06/16

「幽」怪談文学賞特別賞受賞作。 いわくありげな資産家に嫁いだ新妻。その家の奇妙なしきたりと、彼女に課せられる使命。一族の抱える秘密の正体は……? と、あらすじを見ればいかにもなゴシックホラー的展開を期待してしまうんだけど。 ……何これ。あまりに変。あまりに奇想天外。とことん奇妙で...

「幽」怪談文学賞特別賞受賞作。 いわくありげな資産家に嫁いだ新妻。その家の奇妙なしきたりと、彼女に課せられる使命。一族の抱える秘密の正体は……? と、あらすじを見ればいかにもなゴシックホラー的展開を期待してしまうんだけど。 ……何これ。あまりに変。あまりに奇想天外。とことん奇妙でずれた世界観、なのにあっさりすべてを受け入れて受け流しちゃう主人公、見事すぎるぞ! 最初から最後まで、かなりシュールで独特な雰囲気の一作でした。

Posted byブクログ

2022/08/21

期待してた怖さと違った~って感じだけれど、帯の言葉通り総じて「変」なお話で旧家の設定や雰囲気は好みだった。「変」なまま粛々と話が進んじゃうのがなんか凄い。所々描写は分かりにくい。 結局アレの正体は何だったんだろう。消化不良な印象も残りつつ、嫁という立場の危うさとどんな人間も隠し持...

期待してた怖さと違った~って感じだけれど、帯の言葉通り総じて「変」なお話で旧家の設定や雰囲気は好みだった。「変」なまま粛々と話が進んじゃうのがなんか凄い。所々描写は分かりにくい。 結局アレの正体は何だったんだろう。消化不良な印象も残りつつ、嫁という立場の危うさとどんな人間も隠し持っている金への執着にヒヤリ。

Posted byブクログ