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借りの哲学 の商品レビュー

4.4

10件のお客様レビュー

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2023/12/31
  • ネタバレ

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誰もが日常的に周囲の人とやり取りしている「貸し借り」の感覚。著者は資本主義社会においては、お金ですべてが清算できるようになった反面、お金がなければ自律できず、社会や制度、人間関係に頼る「借り」でも解決できなくなっているため、信頼や相互扶助意識で社会が成立していた時代の「借り」の概念を復活させる必要があるのではないか、とまず問題提起する。 その後はシェイクスピア『ヴェニスの商人』、マルセル・モース『贈与論』、ニーチェ『道徳の系譜』などを用いつつ、交換や贈与や借りといった概念について、その時代や著作における理解を整理していく。 著者は、現在の世界は借り(相互扶助)ではなく等価交換(負債)の概念で動いているが、これは負債を返せない限り、負い目とマイナスを背負い続けることになるため、国家が「生きていくための最低限の負担」を貧困層に対して肩代わりすることで、貧困層は受けた「借り」を返し、再び社会に組み込まれることができるようになる、と主張する。個人対個人の関係と考えがちな「借り」の概念を、国家対個人でも成立させられると考えているのは面白い。 著者は最後に、「等価交換は一対一の関係しか作らず、将来、関わっていく未知の人々には貢献しない。借りを受けた人が、他者に何かを与えていけばいい。前の世代からの借りを、価値を加えて次の世代に渡していく。そのような、「与えてくれた人に返さなくてもいい借り」をシステムの中心に据えていく必要がある」と述べて、この本の結論としている。そのような関係性が成立しているのは、現代では親と子の関係ぐらい。経済主眼の資本主義システムそのものはこの先も不変だと思われる中、世界そのものが持続していくためには、確かに著者が言うような「借り」の復権が必要なのかもしれない、と感じた。

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2022/03/15

貸し借り▶等価交換が金融資本主義になり、負債になった。 等価交換があれば、関係性が続く。人は一人で自律して生きることはできず、人は関係性の中で生きられる。 借りが負債になったことで、奴隷関係になるようになった。 そして人は、社会システムのパーツとなって組み込まれるようになった。顕...

貸し借り▶等価交換が金融資本主義になり、負債になった。 等価交換があれば、関係性が続く。人は一人で自律して生きることはできず、人は関係性の中で生きられる。 借りが負債になったことで、奴隷関係になるようになった。 そして人は、社会システムのパーツとなって組み込まれるようになった。顕著な例はただ株の売買をして金銭を稼ぐデイトレーダーである。 人は愛と感謝を忘れずにいれば、返す借りと返さなくてよい借りが判断、選択できる。人との関係性の中で、選択すれば良い。 そうすうることで、人は自由になることができる。 そういう借りに基づく社会システムが必要である。 本書は金融資本主義を激しく避難し、借りに基づく新しい社会システムが必要であると警鐘を鳴らしている。 ただ、新しい社会システムが何か、がもっと知りたい。

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2021/01/02

まず、哲学の本なのにこれだけ分かりやすいのにちょっと感動しました。 これからは共感と思いやりの世界、それは恩送りがキーと思っており、「借り」の概念を考察し論理を発展させていく本書の内容は素晴らしいの一言です。 封建主義から資本主義へ、そして次の段階へと進む流れが理解できます。...

まず、哲学の本なのにこれだけ分かりやすいのにちょっと感動しました。 これからは共感と思いやりの世界、それは恩送りがキーと思っており、「借り」の概念を考察し論理を発展させていく本書の内容は素晴らしいの一言です。 封建主義から資本主義へ、そして次の段階へと進む流れが理解できます。どうやれば実現できるのか、読後みんなが考えるべきテーマです。

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2020/11/23

借りの概念を考察する前に、著者は贈与に対する哲学的な捉え方と社会学的な捉え方の違いに言及している。そして、この2つの考え方の対立を解消するためには、肯定的に捉えた借りを復活させることだと提案している。

Posted byブクログ

2018/10/28

【由来】 ・原先生から8/7に借りた。もともとは内田樹がモースの贈与論ということで言及しているのをどこかで読んだのがきっかけだった記憶が。 【期待したもの】 ・ 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】

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2017/01/03

話としては面白い。だが細かい部分がよく分からない。 ・家族のところがよく分からなかった。 ・「借りを拒否する人々」が批判されているようだったが、その内実があまり明確でなかった。 借りを否認する者としての自律信奉者と、借りから逃走する者としての機会主義者が批判されていたように思われ...

話としては面白い。だが細かい部分がよく分からない。 ・家族のところがよく分からなかった。 ・「借りを拒否する人々」が批判されているようだったが、その内実があまり明確でなかった。 借りを否認する者としての自律信奉者と、借りから逃走する者としての機会主義者が批判されていたように思われる。前者に関して、批判のポイントはわかりやすい。完全な自律というのはありえず、誰にも借りを負わないということは不可能であるし、目指すべき理想としても不適切である、だから、借りなしに完全に自律していると信じることやそれを理想と見なすことは誤りである、と。 しかし、後者に関してはよく分からない。借りから逃走しても、孤立的な生を歩んでしまってよくないとか、社会のネットワークにタダ乗りすることは自らを部品化してしまうことになるとか、いつかは最大の借りを返さなければいけなくなるという点が書かれていたが、別に良いのではないか。さまざまな部品に生成変化しながら生きて何が悪いのか。いつかは返さなければいけなくなるのが良くないのだとすれば、逃げおおせるならそれで良いのか? この批判の不明確さは、結論部と合わせるとさらに際立つ。借りや負債によって奴隷化してしまうような人間関係や、借りを否認する人間と対照して、「借りを返さなくてよい」というあり方を主張する。それは、他人の借りについての態度としてはお互いに借りを取り立てないようにする、自分の借りについてはそれからの逃亡の可能性(ある借りをそのまま相手に返せなくても、別の形でどこかに返す)を考えられるようにする、個人の態度とそれを保証する制度の導入を主張するということである。 だが、機会主義者であることを全面的に保証することではないのか? 現代の機会主義者と、著者の理想とする「返さなくてよい借り」論者は、借りを元のところにちゃんと返さないということでは同じである。どこかに返すという意識の有無が、重要な差なのだろうか。うーむ。

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2016/12/19
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※このレビューにはネタバレを含みます

大人の道徳の教科書という印象。作者がフランスの方なので仕方ないのではあるが、西洋のキリスト教的価値観から語られている部分が多いため、あまり馴染めなかった箇所も少なくない。また、一定数存在するであろうフリーライダー(本書でおけるところの「機会主義者」が適当だろう)に関しては、その悲劇性を語るだけであり、対策については語られなかったのは物足りなさを感じざるをおえない。 ただ、本書全般に関しては十分に面白いと思える内容だったので満足はしている。

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2014/08/10

この本は、千夜千冊で「ここ数年で一番ボクをさわやかにさせてくれた本」と紹介されていた。そりゃ、読むしかないじゃないか! http://1000ya.isis.ne.jp/1542.html 著者のナタリー・アルトゥ=ラジュは哲学専攻で、フランスの雑誌副編集長らしい。千夜千冊から...

この本は、千夜千冊で「ここ数年で一番ボクをさわやかにさせてくれた本」と紹介されていた。そりゃ、読むしかないじゃないか! http://1000ya.isis.ne.jp/1542.html 著者のナタリー・アルトゥ=ラジュは哲学専攻で、フランスの雑誌副編集長らしい。千夜千冊から引用させてもらうと、「人間はつねに他者からの借りで生きている」「どんな時代の者も先行する世代からの借りの中にいる」「借りのない生などありえない」ということだ。 もともと、この手の議論は「贈与」という視点になる。「贈与」は「返礼」を求めるのか、求めないのか。ボクの感覚でいえば、恩義は感じるかもしれないが、「返礼」をするときも、しないときも、それはあるとなる。この「恩義」をここでは「借り」というらしい。 「贈与」は「借り」とセットであり、「返礼」をもとめなくとも「借り」と一緒に贈られる。もしくは、受け取られると著者は言っているようだ。その「借り」は、ときに本人に返す場合もあるが、本人に返さずとも、別の人や、世代に返すことにも繋がる。始点を変えれば社会的責任を果たす、後世に伝えるということにもつながっていくと思う。 ボクは本書の最後の部分も印象的だった。引用しておく。 ------------------------------------------------------- 人は新しい自分の可能性を追求するために、ほかの人との関係を弱めたり、ちがうものに変えたり、あるいは「関係」そのものを断ち切ったりしなければならないのだ。それによって、人はあらかじめ決められた人生から自由になり、自分だけ未知の人生を切り開いていくことができる。私たちはそうやって新しい自分を目指し、これまでとはちがった存在になるのである。「《借り》をもとにした社会」をつくることは、そのためにこそ必要なのである。 (引用終わり) ----------------------------------------------------------

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2014/05/04

主張している内容も丁寧で分かりやすく、哲学に免疫のない私でもサラサラと読めました。確かに具体性に欠ける部分もあるかもしれませんが、ポスト資本主義を考える上で、重要なヒントとなる希望に満ちた内容であると思います。 エッセンスだけでも知りたい人は千夜千冊でも○ http://1000...

主張している内容も丁寧で分かりやすく、哲学に免疫のない私でもサラサラと読めました。確かに具体性に欠ける部分もあるかもしれませんが、ポスト資本主義を考える上で、重要なヒントとなる希望に満ちた内容であると思います。 エッセンスだけでも知りたい人は千夜千冊でも○ http://1000ya.isis.ne.jp/1542.html

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2014/03/25

人は自らの力だけで生きているのではない、生まれたときから大きな「借り」を持って生きている。 そのことを自覚しようという教え。 金儲けという形でエゴ丸出しの資本主義への警鐘的な一冊。 等価交換では貸し借りが発生しない、借りを解放するための取引であってそれは社会的には関係が断絶し...

人は自らの力だけで生きているのではない、生まれたときから大きな「借り」を持って生きている。 そのことを自覚しようという教え。 金儲けという形でエゴ丸出しの資本主義への警鐘的な一冊。 等価交換では貸し借りが発生しない、借りを解放するための取引であってそれは社会的には関係が断絶してしまう原因だ、というあたりの部分が一番印象的で共感もした。

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