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民主主義を学習する の商品レビュー

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2件のお客様レビュー

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2021/09/14

『民主主義を学習する』ことはいかなることなのか。骨太の議論を学べる。民主主義、教育に携わる人は必読。 でも、教育現場の寄与を意識して読んだ人は物足りない部分もあるかもしれない。

Posted byブクログ

2019/03/11

 ガート・ビースタは教育哲学者です。他の著作も邦訳で出ています。  本書では、主にヨーロッパのシティズンシップ教育政策を批判的に検討しています。教育目標を要素で分けたり、それをスキルのように扱うことにビースタは強い批判をしています。これは、今の日本の文脈に置き換えれば、コンピテン...

 ガート・ビースタは教育哲学者です。他の著作も邦訳で出ています。  本書では、主にヨーロッパのシティズンシップ教育政策を批判的に検討しています。教育目標を要素で分けたり、それをスキルのように扱うことにビースタは強い批判をしています。これは、今の日本の文脈に置き換えれば、コンピテンシーベースの授業作りへの批判だし、新学習指導要領への批判という意味も読み取れるかもしれません。必要な知識、スキル、態度などを習得しているのが良い市民。それは裏返せば、その条件がそろっていないのは良くない市民ということになります。子どもは未熟だから学ぶべき。そういった発想では、未熟な人と成熟した人との対比になってしまう。  要するに、ビースタは、シティズンシップ(市民性)をめぐって、資質能力の「優劣」のような視点から論じることを徹底的に危険視しているのだと思います。もちろん、資質能力を類型的に考える人も、それが優劣を意図したものではないとは思うのですが、そこに実は隠蔽されている自己責任論や優劣の発想をビースタは暴き出しているのでしょう。  こういう立場に立てば、通り一遍な評価方法ではシティズンシップ教育や民主主義教育は評価できないことになるし、評価してはいけないことになる。むしろ、集団として評価するとどうか。個人がコンピテンスから見て民主的かどうかではなく、その集団が民主的かどうかを評価する。本書は、そういう在り方を提起しているのかもしれません。個人の出来不出来の責任を個人に押し付けない学級づくり。そういう在り方もあるのかもしれません。  また、民主主義教育は、本質的に生涯学習であるというビースタの主張も、非常に納得のいくものでした。民主的な資質を育成しようとする際に、「大人‐子ども」という壁を乗り越える必要があるのかもしれません。 「大人‐子ども」の対比の裏に、何かしらの「優劣」の発想が内在しやすいのだとすれば、それをどう乗り越えるか。  子どもを主権者として扱うことや、市民として扱うことの意味を考えさせられました。学びの自治をどう作り上げていくか。そういう問いとも繋がっていくと思います。

Posted byブクログ