トマス・アクィナスの政治思想 の商品レビュー
中世ヨーロッパを代表する神学者トマス・アクィナスの政治思想を包括的に論じる研究書。『神学大全』や『君主の統治について』など、トマスのテキストをふんだんに引照しつつ、トマスに見られる政治に対する考え方を浮き彫りにしようとしている。とりわけ著者が重視しているのは、国家と野盗集団をある...
中世ヨーロッパを代表する神学者トマス・アクィナスの政治思想を包括的に論じる研究書。『神学大全』や『君主の統治について』など、トマスのテキストをふんだんに引照しつつ、トマスに見られる政治に対する考え方を浮き彫りにしようとしている。とりわけ著者が重視しているのは、国家と野盗集団をある程度同一視するようなアウグスティヌス的な国家観という中世ヨーロッパの知的伝統に対して、トマスの考え方の根底には、世俗と宗教が調和して一つの全体――キリスト教共同体――をなすという相対的に世俗的領域を高評価する視点があることである。そのため本書では、トマスのテキストの緻密な読解に加えて、中世盛期における知的枠組みの変容についても触れるところが多く、中世思想についてそれほど知らない人間にとって勉強になることが多かった。
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