空襲警報 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
目次 ・クリアリー家からの手紙 ・空襲警報 ・マーブル・アーチの風 ・ナイルに死す ・最後のウィネベーゴ ・二〇〇六年世界SF大会ゲスト・オブ・オナー・スピーチ ・グランド・マスター賞受賞スピーチ予備原稿 ・グランド・マスター賞受賞スピーチ 正直に言いましょう。 『混沌ホテル』の方が好みでした。 多分コニー・ウィリスの作品のシリアス系は長編が、ユーモア系は中編が好きなのだと思います。 今回オックスフォード大学史学部シリーズの第1作である『空襲警報』が収録されていますが、主人公であるジョン・バーソロミューのルームメイトのキヴリンが主人公の『ドゥームズデイ・ブック』の方が断然面白いですし、『空襲警報』や『マーブル・アーチの風』で重要な出来事となるロンドン大空襲を描くなら『ブラックアウト』『オール・クリア』の方が読みごたえがある。 逆に、すべての登場人物がめいめい勝手にしゃべり続けるコニー・ウィリスのユーモア小説のスタイルが、長編ではうるさくて、周辺くらいがちょうどいいような気がします。 とか書きながら、やっぱり史学部シリーズである『空襲警報』は面白いのです。 いくら本を読んで勉強しても、実際に行ってみなければわからないことが、この作品にはちゃんと書かれています。 当時の常識過ぎて逆に本には書かれていないことも、たくさんあります。 だから想定外のことばかりが起こってしまうので、歴史という決められた枠組みの中でそれにどう対処するのかが、このシリーズの醍醐味なのですよ。 あとはシリアスというか、そこはかとなくホラーっぽい、ぞわぞわと不穏な空気を感じてしまうような作品でした。 特に『クリアリー家からの手紙』は、徐々に明かされる真相によって、どんどん怖さが増してくるの。 でもってなんか悲しくなりました。
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1作目と表題作と「ナイルに死す」まででいったん休憩。「ナイルに死す」はこれ悪夢だなあって焦りながら見ている夢みたい。二度寝したくないやつ。表題作は雰囲気は好きだけどよくわからなかった。
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混沌ホテルとあわせて新しい短篇集です。コニーウィルスの長篇は長すぎて辛いという人に、おすすめします。長編の要素や雰囲気がだいたい詰まってますね。?
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《目次》 ・「クリアリー家からの手紙」 ・「空襲警報」 ・「マーブル・アーチの風」 ・「ナイルに死す」 ・「最後のウィネベーゴ」
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どの話も面白く、有無を言わせない確固たる世界に連れて行かれる。 「ナイルに死す」の心理戦が怖かった。
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表題作の史学部シリーズの始まりである「空襲警報」を読むのが目的だった。他の作品は期待してなかったが、それは裏切られることとなった。全体を通して読むと、とてもコニー・ウィルスらしい短編集なのだと分かる。怒濤の文字の洪水が読者を襲い、脳みそをかき回される感覚に陥るが、それが楽しいのだ...
表題作の史学部シリーズの始まりである「空襲警報」を読むのが目的だった。他の作品は期待してなかったが、それは裏切られることとなった。全体を通して読むと、とてもコニー・ウィルスらしい短編集なのだと分かる。怒濤の文字の洪水が読者を襲い、脳みそをかき回される感覚に陥るが、それが楽しいのだ。面白い作品を挙げるのは野暮だが、あえて挙げると、「空襲警報」「ナイルに死す」といったところ。
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『マーブル・アーチの風』は清々しく『最後のウィネベーゴ』は美しいラスト。史学部シリーズの記念すべき第一作も入っててお得感満載。
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わたしはどうも、「しかけがある」っていう小説が苦手で。あと、「現状がどういう状態なのか説明がなされない」っていう小説も。絶対気づかない自信があるし、しかけがあるときいたら理解したと思っていてもいや気づいてないのかもって不安になるし。そういう意味で、「クリアリー家からの手紙」とか「...
わたしはどうも、「しかけがある」っていう小説が苦手で。あと、「現状がどういう状態なのか説明がなされない」っていう小説も。絶対気づかない自信があるし、しかけがあるときいたら理解したと思っていてもいや気づいてないのかもって不安になるし。そういう意味で、「クリアリー家からの手紙」とか「最後のウィネベーゴ」とか「ナイルに死す」はけっこう苦手だった。よく理解できてないと思う……。 「空襲警報」は、もともと「史学部シリーズ」のファンなのでおもしろく読めた。文章にユーモアがあって、「クリアリー家」や「ナイル」みたいにこわくないし。ただ、「オールクリア」につながる「しかけ」があるのかなあと気になって気づいてないんだろうなと不安で、「オールクリア」の1940年セントポール大聖堂の場面を読み返したりしたけど、新たな発見とかはなく……。 いちばん好きなのは「マーブル・アーチの風」かな。ぜんぜんSFとしては読んでなくて、いやもう、あとがきで大森さんも書いているとおり、ただただ中年には身につまされる、という。ほんとに、もうこれからは「衰退と死」しかない、ってかなり苦しい気持ちになった。ラストになんとなく希望が見えて、さわやかで、それはよかったけれども。 あと、コニー・ウィリスはロマコメ成分が多くて大好きだとつねづね思っていたけれど、若者の恋愛だけじゃなくて、こういう、夫婦とか渋い大人の恋愛成分もあるんだなー、とか思った。「ナイルに死す」もそういう話だと思って読むとけっこういいかも。 それから、付録のコニー・ウィリスのスピーチがすごくよかった。本があったことへの感謝の気持ちとか、すごく共感する。コニー・ウィリスが挙げている本を読みたくなる。あと、ドラマとかにハマってるらしき姿とか、ほんとにキュートだし、友人が多くて明るい性格だってのがわかる。素敵ー。
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本書はヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞の作品のみを収録した全5篇の短編集です。なんとも贅沢な一冊ですね。 全5篇はどれもシリアスな作品でした。コニー・ウィリスは初めてだったもので、読み終えてから、シリアスな作風を得意とする作家なのだなぁと嘆じていたら、あとがきで言及されてました。どう...
本書はヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞の作品のみを収録した全5篇の短編集です。なんとも贅沢な一冊ですね。 全5篇はどれもシリアスな作品でした。コニー・ウィリスは初めてだったもので、読み終えてから、シリアスな作風を得意とする作家なのだなぁと嘆じていたら、あとがきで言及されてました。どうやら主要な作品群はシリアスとはまた違う作風なのですね。それはそれで楽しみです。 さて、全5篇のうち、とりわけ気に入ったのは、「マーブル・アーチの風」と「最後のウィネベーゴ」。 前者のテーマは、訳者あとがきによると「忍び寄る老いと死にどう立ち向かうか」らしい。読んでいて「老い」ではなく、「変化」というキーワードが頭に浮かんだのは、著者や訳者の半分ぐらいしか歳をとっていないからでしょうか。と考えていたら、あとがきでその点にも触れられていました。「若い読者にはぴんと来ないかもしれませんが、ぜひ二十年後に再読していただきたい」とのこと。なんだか見透かされた気分でした。 後者の「ウィネベーゴ」とは、キャンピングカーのこと。「新型パルボ」なる犬の伝染病により、ありとあらゆる犬が絶滅した世界が舞台。この作品に心を揺さぶられるひとは多いのではないでしょうか。「滅びゆくもの」への描かれ方にはなんともいえない哀愁をそそりますが、一風変わった話の進み方とドラマティックな展開が相まって、終盤は疾走感があり、興奮隠せぬ作品となっています。著者を一気に好きになった作品です。
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