兎とかたちの日本文化 の商品レビュー
2014.6.22市立図書館 「かわいい」だけではない、日本固有の「うさぎ」をめぐる文化論。月の兎(見返り兎)、和菓子などの伏せ兎(玉兎)、そして擬古典的な(伝統的花兎文様とは一線を画した)花うさぎの3つのテーマで、歴史・宗教・文学・美術のさまざまな方向からうさぎの意匠にせまる。...
2014.6.22市立図書館 「かわいい」だけではない、日本固有の「うさぎ」をめぐる文化論。月の兎(見返り兎)、和菓子などの伏せ兎(玉兎)、そして擬古典的な(伝統的花兎文様とは一線を画した)花うさぎの3つのテーマで、歴史・宗教・文学・美術のさまざまな方向からうさぎの意匠にせまる。 それぞれ意匠の発生時期をさかのぼり謡曲や伝承などをたどることで原典をしぼっていくのは興味深いが、やや恣意的かなと思う部分もある。せっかく図版も多く、装丁・レイアウトも手にとりやすい雰囲気にしたのだから、文章ももう少し一般読者向きにかみくだいてあれば、と惜しい感じもする。とはいえ、上村松園の「待月」を擬古典という視点から解題していくあたりはとてもわくわくしたし、なるほど意匠の変遷の知識はこういうところでいきるのかと実感した。 雪月花から発展して花うさぎが生まれたという説は興味深いが、花うさぎと同じように擬古典として生き残っている文様には他にどんなものがあるのだろう。月との関係がないということで鳥羽僧正の鳥獣戯画のうさぎや雪で作る雪うさぎなどに言及がなかったのももったいない。和菓子だけでなく、手ぬぐいの図案などもひろくみるとさらに発見がありそう。 著者はミッフィーやピーター・ラビットのような西洋渡の「かわいいうさぎ」の氾濫で、古来から受け継がれてきた「かたち」や「ことば」が失われていくことに危機感を抱いているというが、これはうさぎのみならず、ゆるキャラブームに乗っている神仏から歴史的人物まであらゆる日本文化に共通するテーマに思う。 ともかくも「うさぎ」が一人や一冊では手に負えない大きなテーマだということを実感した。
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月と兎、波と兎などの図像から、神話や仏教美術、古典作品などとのネットワークを手繰り寄せていく。 兎デザインの裾野は、和菓子や文具と広い。 その領域を幅広く視野に入れた刺激的な論考だった。 これぞ、美術史の醍醐味というか、プロの凄みというか。
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私はうさちゃん好きではないけれど、兔の存在には気持ちが惹かれて「波に兔模様」は大好きでした。 この本は最高のミステリーを読むように面白い。最高です。勉強にもなり、そしてさらに「兔のかたち」に興味が湧いてきます。
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著者の本は、以前読んだ「秋田蘭画の近代」以来2冊目。 絵の解読はスリリングでおもしろい。同じ東京大学出版会の「江戸の動物画、花鳥画」も関心があるが何分大著なので未読。 入門的な新書版があるとありがたい。
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