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カジュアル・ベイカンシー(Ⅱ) の商品レビュー

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2019/02/04
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"responsibility" - 作者は当初タイトルをそう名付けるはずだった。とりわけワーキング・クラスでは貧困の連鎖がある。「恵まれない立場の人達に対する責任や、自分を幸福にする責任がある」という旨を作者は語っている。これは階級社会として知られる英国や欧米に限った話ではなく、日本も分かりにくいが階級社会なので、他人事ではない。私がいわばワーキング・クラス出身なのでとてもよく分かる。ローリング氏もまた思うところがあるのだろう。生まれた家庭である程度決まってしまう社会、学歴社会は確かに在り、個人を尊重した社会福祉が日本でも作られることを祈る。 この作品には、いじめ、失業、養子縁組、レイプ、児童虐待、ドメスティック・アビューズ、差別、階級格差、ドラッグ使用、ポルノグラフィ、レズビアン、自傷行為、そして自殺、というあらゆる社会問題が含まれている。世界の闇の事実に目を背けることなく描くことは、問題提起としてとても意味があると思う。マグル生まれだろうが貧乏だろうが、その人の人権が、そうでない人の人権より軽んじられていいわけがない。 作者はむしろ、「恵まれている人が持つ、恵まれない人達に対する責任」について読者に訴えたかったのであろうが、自分を蔑ろにして他人のことばかりかまける傾向にある私にとっては、自分を幸せにする責任があるということに今一度気付かされた。この本をきっかけに、ソーシャル・ワーカーの仕事に興味が湧いた。日本も全体主義ではなく個人主義になって、個人を尊重し、欧米のように子どものうちから成熟した人間が好まれるような社会に変わってほしい。 また、これが英国特有なのかは分からないが、英国ではかなり昔から、恵まれた階級の人が恵まれない階級の人達へチャリティーなどをする習慣があることを思い出した。その貢献たるや。私の知る限りではあるが少なくともジェイン・オースティンの時代からあった習慣で、現代を見ても確かにデルヴィーニュ家など上流階級は盛んに社会福祉活動をする人が多いし、市民が不要な服を教会に寄付する習慣もよく聞く。国民は寄付が身近で、寄付精神が幼い時から根付いているのだと思う。ダイアナの時代から王室も熱心になったし。

Posted byブクログ