『アラバマ物語』を紡いだ作家 の商品レビュー
『アラバマ物語』があまりにも気に入ったので、ついこれも読んでしまったけれど、読んでいるうちに『アラバマ物語』が少し色褪せて見えてきてしまった。 作品があまりにも気に入ると「どんな人が書いたんだろう」と書いた人のことが気になるものだけれど。 ファンって勝手だな、と自分に対して思った...
『アラバマ物語』があまりにも気に入ったので、ついこれも読んでしまったけれど、読んでいるうちに『アラバマ物語』が少し色褪せて見えてきてしまった。 作品があまりにも気に入ると「どんな人が書いたんだろう」と書いた人のことが気になるものだけれど。 ファンって勝手だな、と自分に対して思った。 『アラバマ物語』はフィクションだけれど、私が思っていた以上に、彼女の実体験や実在の人物がもとになって描かれているんだと知ってビックリした。だから二作目はずっと書けなかったのか、と腑に落ちた。 一作目で自伝的なものを書いて高く評価された作家の「あるある」な話だと思う。この本の言うような「性格がまじめすぎた」とか「プレッシャーが大きかった」ということ以上に、0から何かを創作することの壁にぶち当たったのかなと思った。 そういう意味では、やっぱりカポーティはプロの作家で、作家になるべくして生まれた人だと感じる。彼の作品には才能がきらめいている。 逆にハーパー・リーは依頼された内容に合わせて何かエッセイのようなものを書くこともうまくこなせなかったようで、それなのにピューリッツァー賞まで取ってしまったものだから、カポーティは本当に腹立たしかっただろうなと思う。 彼が大人げないのは確かだけれど、彼の感じた苛立ちはとても理解できる。クリエイティブな職業すべてに言えることだけれど、才能が評価や報酬に正当に反映されるわけじゃない辛さ。 また、明らかにハーパー・リーも2人の実力の差については分かっていたようで、そのことに関してとても謙虚だっただけに『冷血』での献辞の件は読んでいて哀しかった。 彼女はインタビューでカポーティの才能を認めてほめていたし、『冷血』でも友達としてすごく誠実に仕事をしただけに、あの仕打ちは本当に驚いただろうと思う。 ということで、なんだか読後はしょんぼりしてしまった。人間の悲しい部分、というか、人生の悲しい部分、が浮き彫りにされている伝記でした。 蛇足だけど、カポーティがハーパー・リーの恋愛について友達に書き送っていたという事実はとても嫌な感じがした。こういうこと(人の秘密)を、心配しているフリをして吹聴したがる人は世の中に多くいて、うへぇ~と思う。 でも、私はカポーティの『叶えられた祈り』はかなり好きで(けっこう、相当、好きです)、あの小説って、彼のそういう性格が大いに生かされた小説だと思われるので、なかなか複雑。エラそうに非難しながらも、そういう作品を楽しんで読んでいたりもして、私ったらどうなの、とも思う。 そうそう、映画については、私が原作で気に入っている部分の多くが映画には入っていなくて少しガッカリしたのですが、この本を読んで、それはグレゴリー・ペックのせいだったと分かった。割と好きな俳優だったけど、原作への理解力はその程度だったのかと幻滅した。知性派なイメージがあっただけに。この部分はできれば知りたくなかったかも。(笑)
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