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カクレキリシタンの実像 の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2023/11/11

新しいことを知る喜び。目を開かれる思い。 そういう自分に出会えることが読書の楽しみの一つである。 私にとっては本書は、その位置づけであった。 世界遺産となった長崎と五島のキリシタン教会群を訪れていらい、隠れキリシタンとはなんなのか、なぜ大量の殉教者がでてしまったのかを、理解した...

新しいことを知る喜び。目を開かれる思い。 そういう自分に出会えることが読書の楽しみの一つである。 私にとっては本書は、その位置づけであった。 世界遺産となった長崎と五島のキリシタン教会群を訪れていらい、隠れキリシタンとはなんなのか、なぜ大量の殉教者がでてしまったのかを、理解したくて機会があるごとに本を読んでいた。 この本は前者の隠れキリシタンとは?という問いに明確に答える。それは土着宗教であると。 禁教期のキリシタン信仰は、先祖が命懸けで守った宗教が何なのかよく分からないままに、大事に守り通した。根底には先祖崇拝がある。 先祖を大切にし、徹底して現世利益を求める典型的な日本の民俗宗教の一つだと。 村単位の小さな集団で、3役などの役割を分担し、多くは年間80もの行事を実施してきた集団もある。かつては信仰をもとに皆でつながり、助け合うことが自らを守ることにもなったのであろうが、現在では後継者がおらず消えていく状態である。 著者はキリスト教ではもはやないと断言する。隠れてもないと。だからカクレキリシタン。 キリスト教じたいについても、ミッション系学校など数多くあり、ある程度日本になじんではいるが、「頑強に現世利益主義を否定し、来世志向的な一神教を保持」しようとしている限り、日本には土着しないと断言する。 「重層信仰的な世界観に慣れ親しんできた日本人を、一神教の世界に招き入れることは容易な作業ではない」と。 フィールドワークに基づいた、カクレキリシタンの話には納得しかないが、本書ではあまり語られない点が2つある。 ・殉教者が大量に出た理由。先祖を大切にするという理由だけれは納得感がない。 ・信仰告白したカクレキリシタンはどのような位置づけか。確か、数百年後に仲間が現れるという言い伝えを信じて信仰を続けた者たちもおり、カクレキリシタンの信仰にも濃淡というか、いろいろな方向性があったような気がする。 著者の講演を一度聞いてみたかった。

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2019/09/22

カクレキリシタンは隠れてもいないし、キリスト教的雰囲気を醸し出す衣をまとった典型的な日本の民俗宗教の一つ。

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2019/05/01

江戸時代に迫害されていたカクレキリシタンとはどのような人たちだったのかを解説した本。よく言われるように神仏を隠れのみにしていたのではなく、実際は神仏習合したようにキリスト教も混ぜ合わせた形で信仰していた。 秀吉、家康とキリスト教を禁じたため、教え導く宣教師がいない状態で信仰だけ...

江戸時代に迫害されていたカクレキリシタンとはどのような人たちだったのかを解説した本。よく言われるように神仏を隠れのみにしていたのではなく、実際は神仏習合したようにキリスト教も混ぜ合わせた形で信仰していた。 秀吉、家康とキリスト教を禁じたため、教え導く宣教師がいない状態で信仰だけが続いた。そのため本来のカトリックの教えとは似ても似つかない宗教を信仰していたのがカクレキリシタンである。しかも彼ら自身ですらその宗教行為の意味を分かっていない。ただ儀式だけが続けられていた。 こうやって書くと、本当のキリスト教ではないと言いたくなるが、当のカトリックもイエスの教えからはずいぶんと変質している。まずパウロによってユダヤ人以外にも合う形となり、西に広まってからはゲルマン系の宗教と合体する。もとより教えが変質するのは当然の流れと言えるだろう。

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2019/01/01

「厳しい弾圧に耐え、数百年にわたって信仰を守り続けてきた」、という隠れキリシタン像を覆す著作。著者は、現地の習俗の徹底的なフィールドワークを通じ、「隠れキリシタン(という言葉自体も明治以降の学者の造語)はキリスト教ではなく、現世利益と先祖崇拝を軸とする典型的な日本の土着信仰のひと...

「厳しい弾圧に耐え、数百年にわたって信仰を守り続けてきた」、という隠れキリシタン像を覆す著作。著者は、現地の習俗の徹底的なフィールドワークを通じ、「隠れキリシタン(という言葉自体も明治以降の学者の造語)はキリスト教ではなく、現世利益と先祖崇拝を軸とする典型的な日本の土着信仰のひとつ」である、と結論する。 誤解があってはいけないのだが、これは隠れキリシタン信仰を悪く言うものではない。実際、豊富な写真から垣間見える儀式には不思議な厳かさが漂う。 一方で、「土着信仰と交わっているから純粋なキリスト教ではない」という議論と「世界中でそれぞれの地域の特徴を取り込んだキリスト教が発達している(例えば南米やフィリピン)」という議論が混在している印象もあった。 ともあれ、長崎出身で自らも隠れキリシタンの末裔、という著者の既成概念への挑戦が清々しい一冊。

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2017/07/01

カクレキリシタンの認識が変わりました。もはやキリスト教ではなく、カクレキリシタンという日本独自の宗教へ変貌。キリストも数多いる神のうちのひとり。

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2015/09/12

カクレキリシタンは隠れてもなければキリシタンでもない。伝来初期から民衆はそもそも誰もキリスト教を理解しておらず、神仏教とハイブリッド化をしつつ本質は民俗宗教のまま変質しつつ継承されてきたその内容。苛烈を極めた弾圧とその秘匿性のドラマ性のみが取り沙汰され、大半の日本人が誤解をもって...

カクレキリシタンは隠れてもなければキリシタンでもない。伝来初期から民衆はそもそも誰もキリスト教を理解しておらず、神仏教とハイブリッド化をしつつ本質は民俗宗教のまま変質しつつ継承されてきたその内容。苛烈を極めた弾圧とその秘匿性のドラマ性のみが取り沙汰され、大半の日本人が誤解をもっている実像と、消滅しつつある現状のギャップ。 相当面白く、読んで良かった一冊。

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2015/02/11

烏兎の庭 第三部 雑評 5.6.07 http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto03/bunsho/kakure.html

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2014/05/27

安土桃山時代から現代に至るまで受け継がれる カクレキリシタン信仰について微に入り細に入り解説する。 読者がまさに知りたい内容を徹底した現地調査に基づいて 分かりやすく納得できるよう記している良書。 カクレの信仰とは何だったのかがスッキリと読み込める。 日本宗教史を知る上でぜひオス...

安土桃山時代から現代に至るまで受け継がれる カクレキリシタン信仰について微に入り細に入り解説する。 読者がまさに知りたい内容を徹底した現地調査に基づいて 分かりやすく納得できるよう記している良書。 カクレの信仰とは何だったのかがスッキリと読み込める。 日本宗教史を知る上でぜひオススメしたい一冊。

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2014/05/17

主題となるテーマは面白かった・・・けど、サマリーを5ページくらいにまとめてくれれば十分な内容だね。研究者でない限り、細かい内容には興味が持てないんじゃないかしら。

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2014/04/16

「カクレキリシタンは隠れているのでもなければ、キリスト教徒でもなく、キリスト教徒的雰囲気を醸し出す衣をまとった典型的な日本の民族宗教の一つと言っていいでしょう。」 隠れ切支丹といえば、島原・天草の乱。キリスト教の信仰を守り弾圧に対抗し戦った人たちの末裔。そして、その系譜は現在に...

「カクレキリシタンは隠れているのでもなければ、キリスト教徒でもなく、キリスト教徒的雰囲気を醸し出す衣をまとった典型的な日本の民族宗教の一つと言っていいでしょう。」 隠れ切支丹といえば、島原・天草の乱。キリスト教の信仰を守り弾圧に対抗し戦った人たちの末裔。そして、その系譜は現在にも残る天主堂に繋がっている...そんなふうにぼんやりとした認識しかなかった。 だが、キリスト教にしては、カクレキリシタンのオラショ"Oratio"や行事等の風習はかなり土着化した宗教のように思えていた。 本書はその違和感に応えてくれた。 日本に対するカトリック布教を行ったイエズス会のザビエルは、1549年に鹿児島に上陸し、約80年間に70万人以上のキリスト教信者が誕生した。しかし、当初キリスト教に寛容であった、豊臣秀吉は天下統一がなったその日に、バテレン追放令を出し、その後徳川家康もキリスト教を一掃する政策を続けた。 1664年に小西マンショが殉教した後、1873年までの約230年間、日本ではキリスト教の正しい(?)教義、あるキリスト教を理解し、信者を教え導く指導者がいない、信者だけが口伝えで、しかも日々の生活の基礎は仏教者(神仏習合)でもあるという特殊な事情のなか、キリスト教ではないカクレキリシタンという土着の信仰が定着していった。 カクレキリシタンは、このキリスト教不在の時代を、日本二十六聖人から大浦天主堂までを繋ぐ糸ではなかった。 現在はキリスト教を信仰することは自由であり、隠れる必要は無い。しかし、カクレキリシタンはキリスト教ではないので、キリスト教に吸収されることはない。そして、日本の独自文化土着信仰であるカクレキリシタンの信仰を続ける人は非常に少なくなっている。その消え行こうとしている分化を調査研究した本書は、カクレキリシタンに興味がある方にとっては一読すべきものだと思われる。

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