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2024/07/10

新川和江さんの詩集ですね。 二十五篇の詩が掲載されています。 柔らかな語りかけるような詩編ですね。      見渡せば…  見頃は今日か 明日かぎりだろうというので  長年連れ添ったひとをうながし  土手の花見に出かけて来た  ちらほら散りかけてはいるが  さかりの時よりふ...

新川和江さんの詩集ですね。 二十五篇の詩が掲載されています。 柔らかな語りかけるような詩編ですね。      見渡せば…  見頃は今日か 明日かぎりだろうというので  長年連れ添ったひとをうながし  土手の花見に出かけて来た  ちらほら散りかけてはいるが  さかりの時よりふぜいがあるよ とは すっかり散りつくしたわたしへの労りか当てこすりか  見渡せばあちらの岸も  やなぎさくらをこきまぜて  らんまんの花の下 こちらの岸より多勢のひとが  しゃなりしゃなり 往き交っている  張り子の首降り人形みたいに  右を向いては にっこり  左を向いては にっこり  うつろな目を宙に泳がせ 頬ばかりゆるませて  鷹揚にうなずき合っている  聖徳太子もいれば   アインシュタイン 紀伊国屋文左衛門  時代も国籍も問わぬところが  あちらの岸のいいところだ  死ぬの生きるのと大さわぎしていた男女が  忘れ川の水を呑むと  ああもあっさり忘れてしまえるものなのか  久闊を叙するでもなく  笑顔を返し合っただけてま 過ぎて行く  あなたそろそろおべんとうに しましょ  のりまき いなりずし  お好きなだしまきたまごも今日はとくべつ念入りに  つくりましたよ と声を掛ければ  流れに届かんばかりに枝垂れて咲いているさくらに  身を乗り出し 見惚れていたひとが  何か 言ったかえ?  と振り向いた顔がおお こわ!  あちらの岸を往き来するひとらとそっくりの  うつろな目 満面ゆるみっぱなしの笑い顔ー  ユーモアがあり、命の喜びを歌え挙げた渾身の詩が納められています。 新川さんの詩は、おおらかに大自然と自身を呼応させた生命の賛歌が魅力的ですが、この詩編にはそれが縦横に高らかに詠み込まれています。とてもわかりやすい言葉で優しく語りかけてくるのが、素敵ですね。

Posted byブクログ