この船、地獄行き の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
家出少年が運命の悪戯により国際貨物輸送船を舞台にした事件に巻き込まれた結果、ある理由で生きる意味を見失っていた大人に改めて人生を見つめ直させ、自らも生きる上での真の反省とは何か?を知るに至る海洋サスペンス物語です。 貨物船「海栄丸」、そして物語の鍵を握る人物との針路は「地獄行き」の筈でしたが、主人公の家出少年達の闖入により運命は劇的に変化します。件の人物が最後に、どんなことがあっても地に足をつけて前を向いて人生を続けることの大事さを少年に説いた言葉は、恐らく自分自身にも向けられたものであったに違いありません。 若苗のような少年の成長と、一度業火に焼かれた老木が再び芽吹いたような海の男の再生がまぶしくて爽やかなお話でした。 なお、この物語は40年近く前の古典児童文学ですが、巻末注記によるとつばさ文庫収録に当たり現代に合わせ改稿してあるようです。オリジナル版を未読なので具体的な改稿箇所は不明ですが、恐らく事件の発端となった家電類や、子供達が持ち込んだ飲み物に関する描写の部分であると推測しています。 ただラストで主人公が使う小道具だけはどうしても変えられなかったのでしょう。読み終えると、やはりあれは変えなくて正解であったと思います。
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