図説 絵とあらすじでわかる!日本の昔話 の商品レビュー
かつて昔話は誰もが知る基礎知識のようなものであったと思う。あるところに、おじいさんがいました、と言っても時代や個人の特定をすることなく奇想天外の展開を楽しむという精神的風土は物事の価値観や世界観を形成する上で大切な要素だったはずだ。 ところがいまの子供は昔話を知らない。知って...
かつて昔話は誰もが知る基礎知識のようなものであったと思う。あるところに、おじいさんがいました、と言っても時代や個人の特定をすることなく奇想天外の展開を楽しむという精神的風土は物事の価値観や世界観を形成する上で大切な要素だったはずだ。 ところがいまの子供は昔話を知らない。知っているものも家族から聞いたものではなく多くは何らかのメディアを介しての「作品」として受容したものばかりだ。過度に洗練され、理不尽な角を削り落とした滑らかで美しい話が昔話だと信じている。かく言う私も民俗学というものをかじる前は同様なものであった。伝承としての昔話は現代にはすでにないのかもしれない。 本書は様々な昔話の基本的な話型を数ページでまとめたものであり、昔話の概要を見渡すのに便利な本である。海外との比較の視点もあるのも興味深い。ただ、こうした解説的な本を通してしか昔話に接することができない私達は、なにか大切なものを失ってしまった気がする。
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