流通大変動 の商品レビュー
流通研究の権威である伊藤元重氏による、現在の流通業界に関する書。実例を挙げながらわかりやすく流通について現状を説明している。研究書というより、気楽に書いたエッセイという感じである。流通についての第一人者だけあって、知識、経験が豊富であり面白い。 「書籍をまとめるには、いろいろな...
流通研究の権威である伊藤元重氏による、現在の流通業界に関する書。実例を挙げながらわかりやすく流通について現状を説明している。研究書というより、気楽に書いたエッセイという感じである。流通についての第一人者だけあって、知識、経験が豊富であり面白い。 「書籍をまとめるには、いろいろな準備が必要だ。図書館にこもって関連の文献を調べなくてはいけない。データを整理して、それが語る動きを読み取ることも必要だろう、読者の方が何気なく手に取った本でも、実はその著者の膨大な作業があって初めてその本ができている」p4 「日本の個人が保有する金融資産の6割以上は60歳以上の世帯が保有している」p43 「マクドナルドでは客が注文してから60秒以内に商品を出せるような仕組みを構築しているという。吉野家では、牛丼の注文が来てから商品が出てくるまでに1分というのが目処であるようだ。コンビニのレジでもそうだが、客に無駄な時間を使わせないということが、いかに小売業や外食産業にとって重要であるかがわかる」p58 「(ユニクロの少品種多量戦略)紳士用のヒートテックのソックスが1時間あたり50足売れるとしてみよう。12時間店が開いているとすれば、600足になる。ユニクロの店舗は全国に2000以上あるので、単純計算をすれば1日の総販売数は120万足ということになる。これを30日間続ければ、3600万足ということになる」p67 「(ユニクロに)競合する小売業がユニクロと同じように魅力的で低価格の商品を展開しようとすれば、ユニクロに匹敵するだけのボリュームを実現しなくてはならない。そのための店舗数、ブランド認知、アジアでの有力縫製工場の手配、メーカーからの新製品の調達などが必要となる。そうしたものを他社に先駆けていち早く確立し、規模の利益を確立したユニクロを追撃するのはそう簡単なことではない」p68 「(安い)アジアでの生産メリットを享受するためには、大量のロットを確保することが前提条件となる」p70 「そうは問屋が卸さない(それだけ問屋の力は強かった)」p89 「ローソンではある菓子を、売上げランキングでは上の方ではないが、店に常に置くことを決めたという。それは、その菓子を購入している人の多くが継続的にそれを購入していることがわかったからだ。その菓子が手に入ることを期待して来店した人をがっかりさせるようなことがあれば、来店客を減らすことになりかねない。リピート率というのは販売戦略を考える上で重要な指標であるが、ポイントカードを利用することで簡単にその情報がとれるのだ」p131 「(スマホ、タブレットの業界で)アップルだけが大きな利益を上げているのはどうしてだろうか。その答えを一言でまとめれば「アップルはこの世界でチャネルリーダーのポジションをとったからだ」と言うことができる。価格決定権を握っているのはアップルである」p171 「戦後日本ではずっと、多くの商品でチャネルリーダーはメーカーであった」p172 「(生産者保護のための価格補填政策)一定の価格で買い取ってもらえるということで、生産者は質より量を求めるようになった」p229 「農業者の一部が、農地を手放さないで兼業農家を続けている理由の1つは、農地の転売や貸し出しで利益が出ることを期待しているからだということは専門家から何度も聞かされていた」p242 「円高が進めば、海外から輸入した商品の価格は大幅に安くなるはずである。しかし、現実には国内での価格下落の動きは非常に鈍かった。流通の構造がそれに深く関わっていることは間違いない」p243 「企業が持続的に成長を続けるためには、安売りだけではだめなのである」p246
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商売、経済の縦の繋がりがよくわかる。 生産があり、中間流通があり、小売店があり、商品が人々の手に渡る。その流通が、それぞれにプレイヤーがいて、利益を求めている。駅前の百貨店から郊外店、コンビニへ、ネット販売へ。流通は商品と人々をどう結びつけて、その中でコストを下げて他社より有利に...
商売、経済の縦の繋がりがよくわかる。 生産があり、中間流通があり、小売店があり、商品が人々の手に渡る。その流通が、それぞれにプレイヤーがいて、利益を求めている。駅前の百貨店から郊外店、コンビニへ、ネット販売へ。流通は商品と人々をどう結びつけて、その中でコストを下げて他社より有利になるか。
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非常に平易な文章で読み進めやすい。 主観的な記述が多々あるため、事実と筆者の考察は区別しながら読む必要がある。 全体を通して、流通初心者にはとっつきやすい本だった。
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誰が「リーダー」であるのかが時代とともに変遷したことやその理由が分かりやすく書かれている。ある程度は知っていたが、このようにまとめられると再理解しやすい。
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何となく、メーカーか流通か、というような軸でとらえがちですが(私は)、流通は上流(素材)から下流(消費者)まで商品が流れていく全ての過程に影響を与え得る、という流通のより大きな可能性を感じさせてくれました。
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2014.08.13 お盆の真っ只中に読了。経済成長期以降の流通業の変化を概観するのにちょうど良い。ひとつひとつは深くはないが、全体像を把握する上ではちょうど良い。
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※このレビューにはネタバレを含みます
東京大学大学院の伊藤元重先生の新書。 経済学やマーケティングなどの教科書も執筆されている同氏だが、現場における講演会や執筆業なども手がけている。流通に関してはかなり以前から携わっているようだ。同書からもそれは伝わってくる。 個人的にも、過去に何度かお仕事をさせていただいたことがあり、ざっくりとしたお題の講演もきちっとこなしていただき、かつお話が面白い。また、ご自身も非常に謙虚な方で、大手町で講演を依頼した際には、自身の研究室から歩いていらっしゃったこともあった。まだ駆け出しの社会人であった自分にはなかなか感慨深い人である。 本書において、流通の現場ということで、非常に示唆の富む内容であった。大店法の撤廃などの機微やセブンイレブンの考察、個人的にはダイエーの盛衰についてのお話は自分自身の過去の経験的にも納得のいく内容だった。彼らのビジネスモデルと歴史的経緯でどうしてあのような事態になったのかを理解できた。 近年ではネットが普及し、利便性も高くなったが、本書は大いに読む価値がある。新書なのでサクッと読めてしまう事もおすすめ。 ■目次 第1章 流通から見えてくる日本経済 第2章 なぜセブン‐イレブンはミールサービスを始めたのか 第3章 アジアが日本の流通を変えた―ユニクロの成功の秘密を探る 第4章 そうは問屋が卸さない―いま中間流通に何が起きているのか 第5章 情報通信技術で変わる日本の流通 第6章 都市の変容とともに小売業も変わる 第7章 チャネルリーダーの地位を確保せよ 第8章 アジアの需要を日本の内需に 結びにかえて―流通の現場は刺激に満ちている
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チャネルリーダーの大事さと、ダイエーとイトーヨーカドーのビジネスモデルの違いが印象に残った。 イノベーションのジレンマ。読んでみたくなりました。
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勝ちパターンというものは、時代の様々な因子により変わる。 その中で敏感に在り方を変えていくことが必要。 時には、逆風吹きすさぶ中を耐え忍び、先を読む。 長生き企業は、それができてきたということなんでしょうか? 差別化による付加価値を提供し続けることが鍵なのは普遍のテーマでしょう。...
勝ちパターンというものは、時代の様々な因子により変わる。 その中で敏感に在り方を変えていくことが必要。 時には、逆風吹きすさぶ中を耐え忍び、先を読む。 長生き企業は、それができてきたということなんでしょうか? 差別化による付加価値を提供し続けることが鍵なのは普遍のテーマでしょう。 キーワードは 日本の人口減少と都市への人口集中、少子高齢化。 アジアの隆盛と製造*販売のグローバル化、アジア需要の取り込み。 産業を縦に掘る、流通機能としての問屋、直販の考え方。 IT進化で変わる、代替と補完、ネットとリアルの関係模索。 チャネル政策。
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大規模小売店舗法により守られていたのは、小売店や商店街で働く人々。 この法案の撤廃により、現代の大型店が台頭し、価格競争が激化。 色々なブランドや企業が価格だけでなく、差別化を図り生き残りを図る。 ダイエーは、大規模小売店舗法撤廃により郊外に大型店をたくさん出し、1972年には売...
大規模小売店舗法により守られていたのは、小売店や商店街で働く人々。 この法案の撤廃により、現代の大型店が台頭し、価格競争が激化。 色々なブランドや企業が価格だけでなく、差別化を図り生き残りを図る。 ダイエーは、大規模小売店舗法撤廃により郊外に大型店をたくさん出し、1972年には売上トップの三越を抜かしてトップとなる。しかし、ダイエーのビジネスモデルは、不動産を購入し、そこに店を構えたため、バブル崩壊で地代が下がりイオングループに吸収される形となる。 ユニクロは、SPA という小売店にも関わらず、商品企画から製作、物流までを全て行うビジネスモデルを展開し、成功した。ユニクロも低価格で一時、大フィーバーを起こしたが、低価格だけでは商売は続かない。他社と異なる差別化の戦略を立てることが重要。 ただし、同じ業態でも相手にする客や企業の規模により、戦い方は異なると思うので、筆者の考えを鵜呑みにできない。(機屋の話)
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