児玉誉士夫闇秘録 の商品レビュー
少年時代に目にしたロッキード事件の印象が強く、子どもにとって児玉誉士夫はまさに「闇社会の黒幕」にほかならなかった。しかし、高校時代に読んだ大森実『日本崩壊』の巻末インタビューで、彼は戦中・戦後の活動について縦横無尽に語るとともに、戦場で死を覚悟した兵士たちは皆「天皇陛下バンザイ」...
少年時代に目にしたロッキード事件の印象が強く、子どもにとって児玉誉士夫はまさに「闇社会の黒幕」にほかならなかった。しかし、高校時代に読んだ大森実『日本崩壊』の巻末インタビューで、彼は戦中・戦後の活動について縦横無尽に語るとともに、戦場で死を覚悟した兵士たちは皆「天皇陛下バンザイ」ではなく「お母さん」と言って死んでいったと述懐する。これは単純に「闇社会の黒幕」と割り切れる人物ではないと感じ興味を抱いた。本書『児玉誉士夫 闇秘録』はルポ・評伝作家の大下英治によるもので、戦前の右翼活動、戦中の児玉機関による大陸での物資調達、戦後の政財界・裏社会での暗躍を具に描く。子どもの頃は逆に「一日一善」のオジサンとしてしか知らなかった笹川良一との関係も面白い。戦後は少し離れたところから児玉を見ていた笹川は、児玉の脇の甘さを心配して注意するよう警告していたが、結局児玉はロッキード事件で外為法・所得税法違反で起訴されてしまう。笹川によれば、「児玉君はもらってもいない金を懐に入れたようにいわれ、晩節を汚したのである」「児玉君の知らぬ領収書の金は、(腹心の)福田君とアメリカ人が懐に入れていると私は信じている」という。その真偽を含めて、もはや真実を児玉に確認する術はない。
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昭和の巨魁 児玉誉士夫を追ったノンフィクション。混沌とした時代のエネルギーと児玉の行動力が共鳴した感がある。晩年に追い詰められたのは時代の変化。 先日、ロッキード裁判の特集番組を見ていた際に、息子から、「なんでこの人(児玉)こんなに力を持ってたの?」の問いに答えられず、、、orz...
昭和の巨魁 児玉誉士夫を追ったノンフィクション。混沌とした時代のエネルギーと児玉の行動力が共鳴した感がある。晩年に追い詰められたのは時代の変化。 先日、ロッキード裁判の特集番組を見ていた際に、息子から、「なんでこの人(児玉)こんなに力を持ってたの?」の問いに答えられず、、、orz 反省を込めて本書を読む。
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1960年の安保改定は、日本がふたたび「戦争のできる国」へと近づく第一歩で おおいに物議をかもし、またこれに反対する人々の運動を巻き起こした これには大きく分けて二つの流れがある ひとつには日米安保の廃棄を主張し、赤化をもくろむ社会主義・共産主義の流れ もうひとつは、「アメリカの...
1960年の安保改定は、日本がふたたび「戦争のできる国」へと近づく第一歩で おおいに物議をかもし、またこれに反対する人々の運動を巻き起こした これには大きく分けて二つの流れがある ひとつには日米安保の廃棄を主張し、赤化をもくろむ社会主義・共産主義の流れ もうひとつは、「アメリカの戦争に巻き込まれること」を恐れる市民運動の流れだ この「1960年安保闘争」は、条約調印に際し アイゼンハワー大統領の訪日を阻止することには成功したのだが しかし、そんなことにはまったくおかまいなしで 新安保条約は「自然承認」されてしまう …これが、日本の大衆運動史における、ひとつの絶望であった スケープゴートを倒したところでなんとなくごまかされてしまい 国家の意思決定を覆すことができなかったということは 民主主義をうたいながら、日本の政治はあくまで「聖域」にあるのだという印象を 国民に与える結果となった 絶望とあきらめは、人間を素直にする この演出を行うために、アイゼンハワーの「キャンセル料」として 6億円がアメリカに流れたのではないか?という見方は 妄想として、可能なんじゃないかしら 児玉誉士夫は、A級戦犯認定からの「逆コース」によって CIAエージェントに抜擢されたと言われる その立場をかくし、右翼の大物としてヤミ社会に君臨したのだが 晩年には、日航および全日空のジャンボジェット機種選定に際して 賄賂の手引きをしたという疑惑をかけられ 追及を受けることとなった(ロッキード事件) 昭和時代、冷戦下の日本における右翼は 旧帝国陸軍の「アジア主義」を、思想的・空気的に受け継いでいたようだ アジア主義というのはつまり、西欧列強を仮想敵とみなしつつ アジア諸国の独立・連帯を目指すというもので その中心には日本が立っているという いわゆる「大東亜共栄圏」のベースとなる考えだが 一方では、日本のエゴイズムと、大陸における軍の横暴を正当化する マッチポンプ的思想としての側面を持っていた その理想と現実のマッチポンプが、日本のヤミ社会にそのまま受け継がれたことは 戦後日本の状況を考えるに、自然なことと思える 児玉誉士夫というひとは 「フィクサー」すなわち、ヤミの仲介人として 理想と現実のボーダーラインに立つ存在だったのだなあ それはそれとして この本は事物の羅列に終始してる感じでちょっと読みづらい感じだったよ
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アメリカの小切手を日本国内でもらえば外為法違反だということも児玉は知らなかったという件が印象的でした。
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