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満願商店街 の商品レビュー

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場末の寂れた商店街で賑々しく乱舞する熟した人々

大体において「商店街」と名の付く作品は、そこに住まう面々の様々な人間模様や人情めいたものを賑々しく物語にしていると相場が決まっているが、本作においてもそれは基本線として踏襲されている。これに売れない官能小説家が逃げるようにこの商店街へ紛れ込んだことで巻き起こるチン騒動(?)が充分...

大体において「商店街」と名の付く作品は、そこに住まう面々の様々な人間模様や人情めいたものを賑々しく物語にしていると相場が決まっているが、本作においてもそれは基本線として踏襲されている。これに売れない官能小説家が逃げるようにこの商店街へ紛れ込んだことで巻き起こるチン騒動(?)が充分過ぎる面白さとして加味された作品と言えるだろう。軽妙洒脱な文字の運びが発する愉快なテイストに冒頭から惹き込まれるのは官能小説らしからぬ雰囲気を湛えているのだが、だからこそ読み物としての面白さがある。 多岐に渡る商店街の内外の面々において主に登場するのは逃亡中の電車内で主人公が一目惚れする若い女性【奈緒子】に、商店街にあるラブホテルの老齢なオーナー【桐島】と、そこで働く若い女性社員【亜希子】、そして、主人公が部屋を間借りする饅頭屋の女将さん【春子】に向かいの理髪店を営む【由梨絵】と場末感漂うスナックのママ【淳子】である。奈緒子と亜希子に「若い」と付けているのは、他の女性達がみな四十路をとうに過ぎた熟れ熟れの熟女だからである。桐島を中心に形成される熟女組にもちょいちょい顔を出しつつ若い娘組を受け持つ主人公という構図だが、熟女組の中には官能的に直接な場面が無い人もいる。 総じて愉快な人々なるが故に展開もまた面白さに満ちているが、官能面においても相当に明け透けである。とりわけ春子が発するダダ漏れないやらしさには、恥じらいなどとっくに捨てた熟女の本音が垣間見えるようでもあり、余りにも明けっ広げなために読み手たる男としては少々興醒めの杞憂もあるのだが、老人達と熟女達がそれぞれに繰り広げている争奪戦がある程度の結着を見る頃には逆に本気の春子が恥じらう場面があったりで、女性の「もう1つの本音」が見え隠れしているようでもある。 こうした騒動を脇に見ながら、時に巻き込まれながら進む主人公の恋物語もあるのだが、ここでも女性に秘められたしたたかさが描かれており、男が思っているほど女性はしおらしくもないし一筋縄でいかないことを示しているかの描写には、むしろ女性読者の方が「ならでは」のスパイスを汲み取れるのかもしれない。一見して官能小説らしくない表紙カバーイラストには本作を女性にも読んでもらいたいことを示唆しているものと推察する。

DSK

2016/02/10

 団鬼六賞優秀作受賞作家なんですね、どうりで文章はしっかりしている。面白かったとかエロかったかといえば、普通かな

Posted byブクログ