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雪の練習生 の商品レビュー

4.1

52件のお客様レビュー

  1. 5つ

    13

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2025/02/04

シロクマ3代に渡る物語。熊なのに思索し、話し、自伝を書くのだが、違和感なくストーリーにのめり込む感じ。人に振り回され、ベルリンの壁崩壊などの世情に翻弄され、人によって囲われた世界から、外の世界を夢見る刹那さが漂う。2025.2.4

Posted byブクログ

2024/01/30

酉島伝法さんの作品を読んでいて「山尾悠子っぽいなあ」と思い、[酉島伝法 山尾悠子]で検索したら酉島氏のインタビュー記事がヒットし、みるとやっぱり影響を受けているようで、そこで山尾氏と同時に挙げていた作家さんが多和田葉子さんでした。多和田氏の作品の中から本作を選んだ理由は、表紙にホ...

酉島伝法さんの作品を読んでいて「山尾悠子っぽいなあ」と思い、[酉島伝法 山尾悠子]で検索したら酉島氏のインタビュー記事がヒットし、みるとやっぱり影響を受けているようで、そこで山尾氏と同時に挙げていた作家さんが多和田葉子さんでした。多和田氏の作品の中から本作を選んだ理由は、表紙にホッキョクグマが描かれていたから。読んでみたらマジでずっとホッキョクグマの話だったから、とてもよかった。高校2年生の秋に北大銀杏並木のライトアップを見に行ったとき、路上ライブしていた北大生水産学生がホッキョクグマについて熱く語っていて、その時のことを思い出しながら読んだ。本作に出てくるクマたちは皆どこか、あの水産学生の女の子に似た雰囲気がある気がする、なんか、切実さとか。 月刊誌に3ヶ月連続で掲載されたという中編3編ですが、どれも多分あんまりプロットとか考えずに書かれてるんだろうな、と勝手に考えました。思考垂れ流し、みたいな文章群で、難しい表現はあんまりないけど、平易な語彙の組み合わせで見たことない景色を見せてくれる(最終頁なんかはその真骨頂で、ふるふる感動した)。勢いよくエイヤと一筆で書くような物語は好きです、というか割とそういう小説家って多いらしい。小川哲も京極夏彦もプロットを考えずに書くって言ってた、それでアレが出力されるのえぐい。 読み終わった今、タイトルの意味を考えています。ホッキョクグマという依代を得て作者が描いたエチュード、ということですかね。多分、その逆なんでしょう。

Posted byブクログ

2023/12/24

人間のように考えたり、会議に出たりするものだからとても不思議な感じがする。人の感情を読み取る熊と、動物の感情を汲む人と、でもその溝は深いようで浅いようで。

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2023/11/12

ホッキョクグマという存在自体がなんとなく危うく、儚い動物の「アイデンティティ」をテーマにした3代にわたるストーリー(と読みました)。クヌートという実在したホッキョクグマは残念ながら勉強不足で知らなかったけど、なんとも全体的に危うい…でも生きていくってことを改めて考えさせられました...

ホッキョクグマという存在自体がなんとなく危うく、儚い動物の「アイデンティティ」をテーマにした3代にわたるストーリー(と読みました)。クヌートという実在したホッキョクグマは残念ながら勉強不足で知らなかったけど、なんとも全体的に危うい…でも生きていくってことを改めて考えさせられました。初めて多和田さんの本を読んだけど、どこか海外小説風の雰囲気は、後になって調べたら海外に在住とのことでこれも納得。

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2023/10/08

人なのか動物なのか主語がわからなくなったり、急にいろんな情報が自己開示されるのでドキドキする。体の感覚が試されているようで、グロテスクのようなそうでないような不思議な感覚。三代にわたるホッキョクグマの話だったのか。再度味わうように解説で確かめる。ドイツやロシアの近代史もちゃんと勉...

人なのか動物なのか主語がわからなくなったり、急にいろんな情報が自己開示されるのでドキドキする。体の感覚が試されているようで、グロテスクのようなそうでないような不思議な感覚。三代にわたるホッキョクグマの話だったのか。再度味わうように解説で確かめる。ドイツやロシアの近代史もちゃんと勉強しないといけない気になる。「クヌート」画像検索、なんと可愛らしいこと!母グマとの関係性が切ない。読み進めるのに根気がいる小説だった。解説にもあるように一筋縄ではいかない作家さんでした。

Posted byブクログ

2023/06/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

これは誰の物語なのだろうか。主人公はヒトなのかホッキョクグマなのか。「わたし」の正体に惑わされ、そういう世界観なのかと飲み込むまで戸惑いと気持ち悪さがあった。サーカスでは花形でそこには輝かしい人生が待ち受けているかと言えば、そうそう簡単には行かないのが世の常で、時代や情勢に翻弄されるのは男も女もホッキョクグマも同じかもしれないと思える説得力があった。

Posted byブクログ

2023/04/04

ホッキョクグマの3代にわたる物語。3つの中編からなる。 サーカスの花形クマが自伝を書き、オットセイの出版社の雑誌に連載。 その娘のトスカはバレエ学校を出るが舞台に出してもらえない。そこへサーカスから声がかかり、女性調教師のウルズラと出会う。トスカとウルズラは伝説の舞台を作り上げる...

ホッキョクグマの3代にわたる物語。3つの中編からなる。 サーカスの花形クマが自伝を書き、オットセイの出版社の雑誌に連載。 その娘のトスカはバレエ学校を出るが舞台に出してもらえない。そこへサーカスから声がかかり、女性調教師のウルズラと出会う。トスカとウルズラは伝説の舞台を作り上げる。 さらにその息子のクヌートは育児放棄により、人間に育てられる。育ててくれたのはマティアスという男性。クヌートは地球温暖化による北極の環境破壊を止めるための広告塔としての役割を求められていた。クヌートがミルクを飲んで満腹になると眠くて寝てしまうシーンは本当に可愛い♡ ソビエト連邦がまだある時代から現代までをカバーする背景、ちょいちょい出てくるソ連や東ドイツネタが笑える。 いろいろな要素で構成されている物語。普通に喋って新聞を読めるクマについ笑みがこぼれてしまう。全然違和感がないのも不思議なんだけど。 北極海の氷、なくならないで!と思います。

Posted byブクログ

2022/12/30

人間は想像できたことしか実現できないと何かで見聞きしたけれど、では想像できたことなら実現できるということなのだろうか。この本を読んでいるあいだじゅう、ずっとそんなことを考えていた。じぶんのなかには絶対にあり得なかった、あり得る可能性にもまったく気付かないままの物語はまさに未知で楽...

人間は想像できたことしか実現できないと何かで見聞きしたけれど、では想像できたことなら実現できるということなのだろうか。この本を読んでいるあいだじゅう、ずっとそんなことを考えていた。じぶんのなかには絶対にあり得なかった、あり得る可能性にもまったく気付かないままの物語はまさに未知で楽しかった。うつくしい冬の描写にときめき、おもいでの鮮やかさにこうべを垂れ、深く深く流れる憧れに空をあおいだ。冬場れが広がっているきょうに読み終えることができてよかった。夏の褒美が冬ならば、冬の褒美が夏なのか。一年が終わりを迎える。

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2022/09/09

初めて読む多和田さんの作品。 そして私がこれまで読んだことのないタイプの小説でした。 ホッキョクグマの「わたし」はケガが原因でサーカスの花形から事務職に転身。 ひょんなことから自伝を出版することとなり、世界的ベストセラーになるがー。 「わたし」の娘の「トスカ」、「トスカ」の息子...

初めて読む多和田さんの作品。 そして私がこれまで読んだことのないタイプの小説でした。 ホッキョクグマの「わたし」はケガが原因でサーカスの花形から事務職に転身。 ひょんなことから自伝を出版することとなり、世界的ベストセラーになるがー。 「わたし」の娘の「トスカ」、「トスカ」の息子の「クヌート」、3代にわたるホッキョクグマの物語。 こう書くと、ふわふわとした優しいファンタジーかと思われそうですが、そういう作風とはほぼ対極にあると言ってよいでしょう。 ホッキョクグマの視点から見た人間社会の問題点、滑稽さ、無駄などが浮き彫りにされていて、読み手のこちら(人間)がむむむ、と考えさせられてしまいます。 かと思えば、動物ならではの愛らしく無邪気な一面を覗かせたりもします。 なんとも不思議な物語であり、巧みな構成となっています。 私がこういった文体と作風に不慣れなため、面白いと思えたのは3代目のクヌートの章に入ってからでしたが、この何とも不思議な世界観に魅せられたのは間違いありませんでした。 レビューを書くのが難しい。 ちなみに、解説がよいです。 2020年18冊目。

Posted byブクログ

2022/08/04

祖母、母トスカ、そして息子クヌートの三代にわたるホッキョクグマの物語。 実はクヌートについては、名前を聞いたことがあるくらい。 映画か何かのキャラクターだと思っていたくらい。 それが、多和田さんの手にかかると、こんなめくるめくような言葉の構造物になる。 ただ、読み終わったあと、...

祖母、母トスカ、そして息子クヌートの三代にわたるホッキョクグマの物語。 実はクヌートについては、名前を聞いたことがあるくらい。 映画か何かのキャラクターだと思っていたくらい。 それが、多和田さんの手にかかると、こんなめくるめくような言葉の構造物になる。 ただ、読み終わったあと、どうにも悲しい。 自伝を書くホッキョクグマの「わたし」の物語から始まる。 サーカスの花形ウルズラとトスカの、濃密な関係。 しかし、それもサーカスが動物虐待にあたるという世論により、二人は引き裂かれる。 トスカの「死の接吻」の芸により、ウルズラの魂がトスカの中に入っていく。 ウルズラの死後、トスカがウルズラの自伝を書き継ぐ。 この作品にあっては、動物と人間の間の絆は、よくある感動もののそれとは趣が違う。 魂が交錯してしまうのだ。 「書く」という行為は、その証となる。 クヌートの物語は、さらにやるせない。 母に育児放棄され、飼育員に育てられて動物園のアイドル、自然保護活動のシンボルに祭り上げられる。 動物園の予算獲得のためでもある。 彼が物心つくのは、そんな騒動が起きてしまってから。 クヌートは読むクマに育っていく。 さらに過熱する世論の中で、訴訟騒動が起きたり、人工保育されたクマは自然に反するから安楽死させよという議論まででてくる(これは実話らしい)。 それを彼は知ることになる。 動物園でのショーで、育ててくれたマティアスをうっかり傷つけ、マティアスとも引き裂かれる。 そのマティアスの死を、彼は新聞を読んで知る。 ホッキョクグマが書いたり読んだりする。 小説的な設定ではある。 でも、そのことで、人間と動物の関係の難しさ、人間の身勝手さが浮かび上がる。 すさまじい構想力だと思う。

Posted byブクログ