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胃ろうとシュークリーム の商品レビュー

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2022/12/10

自身も介護の現場で働く、元記者の著者が書く「胃ろう」についての本。  勝手ながら、題名「胃ろうとシュークリーム」から、冒頭に登場する秋元さんを始めとする、介護している側からの事情について、補足的に医療現場の声も逐一挟む形で進行するものかと想像していたら、実際は逆でした。  冒頭...

自身も介護の現場で働く、元記者の著者が書く「胃ろう」についての本。  勝手ながら、題名「胃ろうとシュークリーム」から、冒頭に登場する秋元さんを始めとする、介護している側からの事情について、補足的に医療現場の声も逐一挟む形で進行するものかと想像していたら、実際は逆でした。  冒頭とエピローグを挟む大部分は医療側(医師・看護師・PT/OT/STなどのリハビリ専門職・介護職員・大学教授など)に取材した内容となっています。  題名に惹かれて本書を手に取った私としては、「QOL(シュークリームを食べること)を大切にできるのが目指す理想だよね」という内容に落ち着くのかと考えていましたが(実際、そこに落ち着いているとも言えます)、シュークリームのくだりはエピローグにちょこっとあるのみ。  他に、介護者に対して「口から食べること」「胃ろうにする決断について」を取材した感じはかなーり薄い内容でした。やっぱり現在進行形で介護をされておられる方に対して、そういった取材は難しかったのでしょうか。  とはいえ、膨大な取材を重ねられていることは一目瞭然で、なかにはガイドライン作成のワーキンググループに入っていた方も取材対象となっているのは凄いことだと思いました。  医師と一口にいっても開業医、大病院の勤務医という違いもあれば意見もさまざまで、明確な正解がないから、みんな迷いながら日々医療人として生きておられるのだなと感じます。医療人は「救うのが正義で死んだら負け」というのはなるほどそうなんだなという感じ。「胃ろうや人工呼吸器は一度つけたら外せない(=殺人になるから)」というのも、どこかで聞いたことのある話です。  最後まで読んでみて、「初めは胃ろうをやってみて、後から家族負担や本人のQOLを考慮して、相談の機会を設け、本当にだめならやめる」という決断が実質的な落としどころなのかなと思いました。  それって簡単ではないし、ケースバイケースで、一律対応ができないので一番難しい作業・決断になりますが、「一度きりしかない人生を仕舞う」と考えれば、やっぱり大切なことなんだと思います。  エピローグでの秋元さんの素朴な疑問も胸に迫るものがありました。人は想いが刻々と変わっていくからこそ、確実性のあるものなんて何もないのだと改めて感じました。そして外側から働きかけている我々にとっては「想像する」ということしかできないということも。  この本の出版は2013年で、今からおよそ10年が経とうかとしています。今の「胃ろう周辺」はどのようになっているのでしょうか。  他にも興味深い関連書籍があれば読んでみたいです。

Posted byブクログ