保守とは何だろうか の商品レビュー
「保守」が新自由主義と結託している現状を「保守」の混迷とみなす著者が、イギリスの詩人であるコールリッジの政治経済思想の再評価をおこなうとともに、著者自身の考えるほんとうの「保守」像を論じている本です。 本書における新自由主義に対する批判には、説得的だと感じたところもすくなくはな...
「保守」が新自由主義と結託している現状を「保守」の混迷とみなす著者が、イギリスの詩人であるコールリッジの政治経済思想の再評価をおこなうとともに、著者自身の考えるほんとうの「保守」像を論じている本です。 本書における新自由主義に対する批判には、説得的だと感じたところもすくなくはないのですが、たとえばマルクス経済学者でありながらハイエクの思想の積極的な側面を評価する松尾匡が述べていることと共通するところも多く、この議論だけでは「保守とは何だろうか」という問いをタイトルに掲げる理由にはなりえないように思います。 他方、本書の「序章」には、1958年に丸山眞男がおこなった「政治的判断」という講演に触れられています。この講演のなかで丸山は、国民の保守感覚を利用することで革新イデオロギーへの支持を広げていくという戦略を語っており、福田恆存の「私の保守主義観」で語られているような態度は、「丸山の狡猾な戦術に対抗できなかった」と断じています。こうした問いかけは、「戦後民主主義」がわれわれの直接の足下を支えている「伝統」となっている現代の日本社会において「保守」の思想的な中身を明確にするために避けて通ることのできない問いだと思うのですが、本書がこうした問いかけに対する明瞭な回答を示すことに成功しているとは思えません。 そうした意味で、ややタイトル負けの感があるように感じました。
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保守政党がなぜTPPをゴリ押ししたり新自由主義をとるのかやっと意味がわかった気がした。日本共産党のポジションは余計わからないけど。聖書研究に費やされている第4章はちょっと手に余ったけど、読んでよかった冬休みの宿題。
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―――――――――――――――――――――――――――――― 国家の富強こそが、政府の財源の本質である。159 ―――――――――――――――――――――――――――――― コールリッジは言う。国家とは、穀物の山のような、個人の単なる集合体ではない。かといって、国家は、有機的生体...
―――――――――――――――――――――――――――――― 国家の富強こそが、政府の財源の本質である。159 ―――――――――――――――――――――――――――――― コールリッジは言う。国家とは、穀物の山のような、個人の単なる集合体ではない。かといって、国家は、有機的生体のように、全体がすべてで、個人を国家全体の中に埋没させてしまうようなものでもない。国家とは、無機物と有機体の中間にある概念である。すなわち、個人は国家の一部でありながら、同時に個人としても存在しうる。そういう個人が「国民」であり、そういう国家が「国民国家」なのである。 それと同じことを説明するため、コールリッジは「常に原初状態にある社会契約」という、じつに興味深い概念を提示している。237 コールリッジは、イギリスという国民国家について、個人が常に社会契約を結び続けている状態であるという比喩を用いて表現した。この場合、人々は常に、自発的な意思によって、自分の国を選び続けていることになる。238 ―――――――――――――――――――――――――――――― 侵略も制服も、国民国家の独立を損なうのである。それゆえ、真のナショナリストであれば、無謀な野心に駆られた侵略や制服を企てたりはしない。 一般に、国民国家のナショナリズムこそが、戦争の原因であるとみなされがちである。しかし、コールリッジは、そうは考えない。真のナショナリストは、現実主義的な政治判断に立ち、独立した国民国家から構成される多元的な国際社会を理想とする。239 ――――――――――――――――――――――――――――――
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目次 序章 迷走する「保守」 第1章 財政―なぜ保守は積極財政を支持するのか 第2章 金融―「過剰な営利精神」を抑制せよ 第3章 社会―「改革」はどのように行うべきか 第4章 科学―保守が描いた「知の方法論」 第5章 国家―保守のナショナリズムとは何か
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タイトルに惹かれ購入しましたが、新書とはいえ、深い内容で、勉強になりました。いまの日本の政策課題を理解する上でも、相当参考になります。コールリッジのマクロ経済論あたりから、引きこまれてしまった。
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コールリッジの思想を主に経済学の観点から見ることができる。 フランス革命が始まってから間もない時期に経済について広い視野を持っていたことに驚く。 人間は保守的な動物であり、革新を保守するという状況が現在の日本で起こっている。 人間だれもが身の回りの事をよく考えれば保守であることに...
コールリッジの思想を主に経済学の観点から見ることができる。 フランス革命が始まってから間もない時期に経済について広い視野を持っていたことに驚く。 人間は保守的な動物であり、革新を保守するという状況が現在の日本で起こっている。 人間だれもが身の回りの事をよく考えれば保守であることに気づくと思う。誰も壊すことなど望んではいない。 保守を広めていくことが今後の日本にとって重要なのは、革新を求め続け国柄を失った現在の日本を見れば、明らかである。
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