ひとさらい の商品レビュー
フランスの詩人シュペルヴィエルの名作は童話のように始まる。パリの街で捨て子や放置された子供たちを攫って自分の家族を作り心優しき父親となったピグア大佐だが、新たに迎えたマルセルという少女が美しい女性になるにつれて親心と恋愛感情のせめぎ合いに苦しみ始める。マルセルは大佐の子供のひとり...
フランスの詩人シュペルヴィエルの名作は童話のように始まる。パリの街で捨て子や放置された子供たちを攫って自分の家族を作り心優しき父親となったピグア大佐だが、新たに迎えたマルセルという少女が美しい女性になるにつれて親心と恋愛感情のせめぎ合いに苦しみ始める。マルセルは大佐の子供のひとり、乱暴なジョゼフに無理強いされて妊娠してしまう。大佐はジョゼフを追い出しマルセルの将来を考えて一家でアメリカに引越そうと船に乗るが水夫の中にジョゼフがいて、いつのまにか彼女はジョゼフに好意を持ち2人は結婚するという。まさに父親殺しのテーマ。大佐の心はここで完全に壊れる。これは苦しい。この年になると若者目線より完全に大佐の心にシンクロして悪夢のような絶望のラストへ。もう息ができない、窓を開けてくれ!悪酔い
Posted by
原書名:LE VOLEUR D'ENFANTS 著者:ジュール・シュペルヴィエル(Supervielle, Jules, 1884-1960、ウルグアイ・モンテビデオ、詩人) 訳者:永田千奈(1967-、東京都、翻訳家)
Posted by
憂いを帯びたエロスが、小説の舞台ロンドンの霧のように作品全体を包んでいる印象の残る一冊。 あとがきに書いてあった、続編も気になるところ。 同じシリーズから出して欲しい。
Posted by
マルセルにどうしようなく惹かれながらも、あくまで父性をもって接しようと奮闘する大佐。欲望に打ち勝とうとする描写等、滑稽といえば滑稽なのだけど、本人の真剣さと切迫感、それによって行動がちぐはぐになっていく様が切なく哀しかった。大佐を大好きになったわけじゃないけど、良くも悪くも根が...
マルセルにどうしようなく惹かれながらも、あくまで父性をもって接しようと奮闘する大佐。欲望に打ち勝とうとする描写等、滑稽といえば滑稽なのだけど、本人の真剣さと切迫感、それによって行動がちぐはぐになっていく様が切なく哀しかった。大佐を大好きになったわけじゃないけど、良くも悪くも根が真っ直ぐすぎるほど真っ直ぐな人なんだと思うと、余計にラストが辛くなる。
Posted by
大佐の誤解というか考えすぎな性格が、とても滑稽に思える。 ただ、彼の誰にも相談できず、 一人で思い悩んで苦しみ斜め上の方向に飛び去っていく姿は、 何だかわかる気がしないでもない。
Posted by
だれの目線でこの話を読むかでいろんな見方ができる作品だと思う。 大佐目線であれば、金も権力も社会的な名声も持つ大佐が完璧な疑似家族を創り上げたと満足していたかと思えばそれに綻びが生じて自ら壊れていく人間の葛藤の話。 子供たちの目線であれば、ある意味で崩壊した家族から“ひとさら...
だれの目線でこの話を読むかでいろんな見方ができる作品だと思う。 大佐目線であれば、金も権力も社会的な名声も持つ大佐が完璧な疑似家族を創り上げたと満足していたかと思えばそれに綻びが生じて自ら壊れていく人間の葛藤の話。 子供たちの目線であれば、ある意味で崩壊した家族から“ひとさらい”という形で歪んだ疑似家族に組み込まれるが、その崩壊と共に独立してくという話。
Posted by
ひたすら苦悩、滑稽なまでに苦悩。(ある人の苦悩は他人から見れば大抵滑稽なものではあるが。)個人的には「愛憎に振り回される苦悩」が嫌いなのでストーリーには良さを感じないが(フランスものと合わない理由は多分それ。)、訳文の雰囲気は好みで先を読みたいと思えた。解説にあるシュペルヴィエル...
ひたすら苦悩、滑稽なまでに苦悩。(ある人の苦悩は他人から見れば大抵滑稽なものではあるが。)個人的には「愛憎に振り回される苦悩」が嫌いなのでストーリーには良さを感じないが(フランスものと合わない理由は多分それ。)、訳文の雰囲気は好みで先を読みたいと思えた。解説にあるシュペルヴィエルの「密やかな海」という詩はとても好き。
Posted by
訳ありの子どもをさらうことで自分の家族を増やしていく地位も名誉も金もあるビグア大佐。 縁あってある少女を迎え入れてからというもの家族愛ではない愛情を抱いてしまう自分に戸惑い迷走していく。 なぜアントワーヌをさらったのかなど細かい部分で不可解あり。 ラストは大佐の不器用さが招いた...
訳ありの子どもをさらうことで自分の家族を増やしていく地位も名誉も金もあるビグア大佐。 縁あってある少女を迎え入れてからというもの家族愛ではない愛情を抱いてしまう自分に戸惑い迷走していく。 なぜアントワーヌをさらったのかなど細かい部分で不可解あり。 ラストは大佐の不器用さが招いた結果なのだろう。 続編も読みたい。
Posted by
子供をさらって養育することに快楽を覚えたおじさんの話。心と肉体の二重性、西欧と南米の二重性が描かれている。らしい
Posted by
詩人らしい感性の文体(訳者さんの力?)で、透明感のある世界を作っている。物語も二つに引き裂かれた個性の中でもがく大佐の心理が哀しい。
Posted by
- 1