シュライアマハーの対話的思考と神認識 の商品レビュー
シュライアマハーの「弁証法」概念に焦点を合わせた研究。従来は解決が難しかった「弁証法講義」のテキスト問題が新たな全集の公刊によりある程度解決されたことを踏まえ、シュライアマハーの哲学体系において弁証法概念がどのような身分を持っているのかを、カントやフィヒテ、ヤコービ、ヘーゲルなど...
シュライアマハーの「弁証法」概念に焦点を合わせた研究。従来は解決が難しかった「弁証法講義」のテキスト問題が新たな全集の公刊によりある程度解決されたことを踏まえ、シュライアマハーの哲学体系において弁証法概念がどのような身分を持っているのかを、カントやフィヒテ、ヤコービ、ヘーゲルなどの哲学と比較しつつ論じている。タイトルからも分かるように、本書ではシュライアマハーの弁証法概念の特質は、見解の相違を前提した上で実際の対話による合意と概念と対象の一致という二つの基準を用いて真理を確定させようとする点にシュライアマハーの弁証法、あるいは哲学の独自性を見据えている。そうした分析のあとで、シュライアマハーの鍵概念である「感情」が『宗教論』と「弁証法講義」では異なっており、しかもフィヒテやヤコービが考える感情概念とも異なり、人間の立場から捉えられた神が現成する場として感情を措定する点にシュライアマハーの独自性があるとされる。フィヒテやヘーゲルなど、同時代の哲学者に比して哲学的に劣るとされてきたシュライアマハーの哲学を復権させようとする野心的な試みだと言えるだろう。
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