小学生までに読んでおきたい文学(5) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
収録作品 ・星新一 「友だち」 ・国木田独歩 「画の悲み」 ・魯迅 「故郷」 ・菊池寛 「納豆合戦」 ・中島らも 「牛乳時代」 ・ヘッセ 「クジャクヤママユ」 ・吉行淳之介 「子供の領分」 ・ボルヒェルト 「シシフシュ」 ・岡本かの子 「みちのく」 ・モルナール 「ある小さな物語」 ・コールドウェル 「苺の季節」 ・タゴール 「ボライ」 ・中野重治 「菊の花」 ・V・ウルフ 「堅固な対象」 「故郷」は、中学校の国語の教科書に載っていた。 小学生のとき魯迅の「阿Q正伝」を読んでものすごく感動した私は、熱い高まりの全くない、逆に故郷や幼なじみへのすーっと冷えていく思いを抱えながら故郷を発つ主人公に、少しがっかりしたのだった。 けれど今読んだら、なぜ故郷や幼なじみを素直に懐かしめないのか。 彼らはどうして変貌してしまったのか。 中国の歴史を少し知った今は、そこで魯迅がなにをしたか知った今は、この作品で魯迅が伝えたかったことが以前より分かるようになった、と思う。 “思うに希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。” 授業で「故郷」を習っていた時、先生がプリントを配った。 そこには高村光太郎の「道程」が書いてあった。 “僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる” 何十年経っても、忘れていない。 小学生向けの本で「ともだちの話」という書名なのに、ほほえましい思い出話ではなく、少し苦い話が多い。 それは、「ともだち」を単なる遊び相手とするのではなく、自分を映す鏡としてのともだちの存在をテーマにしているから。 友だちとのやり取りの中で自分がとってしまった言動。 友だちが映す自分は、自分がなりたい自分よりなんとちっぽけな奴なのか。 恋のはじまり、友情のけじめ、花や鉱物に対する愛情など、「ともだち」の話としてはビターであり少し難しいものが多い中で、さすが中島らもは、脱力系の友情(?)物語。 でも、中島らもが書きたかったのは、友情の話ではないのでは?(笑) 一番好きなのは星新一の「友だち」 ひとりで本を読むことが出来るようになった子どもの前に現れた「友だち」 きっと私の前にも現われてくれたから、私は楽しく読書ができたんだと思う。
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