僕の家に来た美しすぎる家政婦 の商品レビュー
全てお見通しなスーパー家政婦が導く未来
作者のデビュー作と思われるが……しかし、いかにもブンデスリーガからプレミアリーグな日本代表のサッカー選手を安易にモジったかのようなペンネームを見るにつけ、根拠のない勝手な推測ながら、もしや既出作家の別名義なのでは?との疑問も沸いてしまうところ。作品の構成や展開、筆致などには新人ら...
作者のデビュー作と思われるが……しかし、いかにもブンデスリーガからプレミアリーグな日本代表のサッカー選手を安易にモジったかのようなペンネームを見るにつけ、根拠のない勝手な推測ながら、もしや既出作家の別名義なのでは?との疑問も沸いてしまうところ。作品の構成や展開、筆致などには新人らしからぬ完成度が見られるため、本当にデビュー作ならば相当に出来た作品と言わねばならない。 まずは、少なくとも「黒本」において初出と思われる『家政婦』をヒロインに据えたアイデアが秀逸である。メイドならばこれまでも幾つかあったし、中には和メイドと称する作品もあったが、純然たる家政婦に真正面から目をつけた慧眼には唸るものがある。 また、この家政婦である【瑞穂】が何ともミステリアス。良く出来た、というか出来過ぎたスーパー家政婦(36歳)という以外に素性が明らかでない。魅惑のプロポーションとのギャップを感じさせる可愛らしい佇まいと気立ての良さで17歳の高校生主人公を一目で虜にさせるのだが、この家族、というか32歳の後妻【沙恵子】のために一肌脱ぐ(文字通り脱ぐ)前半の流れもその理由が曖昧なまま進んでいく。この家にやって来るまでの経緯も過去さえも分からぬままながら、その割に小出しで思わせぶりな記述や台詞があるのは何ともニクいところ。これらが混然一体となって「知られざる瑞穂」を形成しているため、場合によっては瑞穂の過去を綴る続編を希望したくもなるし、もしやその準備もあるのでは?との思いも馳せてしまうほどである。 そして、後半のメインヒロインは沙恵子となる。瑞穂と主人公との仲を懸念するのがきっかけだが、その前に夫との不貞を疑う件もあって、この辺りの心情描写と前置きには冗長に感じる部分が多少あるものの、概ねしっかりしているとも言える。ただ、後妻となったばかりの新米母ならではの悩みを抱える沙恵子が、母として息子たる主人公との関係を改善するためにオンナの方向からアプローチを試みる心情には違和感が無いでもなく、瑞穂も含めて本作登場の女性陣にはいかにも男がイメージした女性像が透けて見えるようなところもある。しかし、『おっぱいは触ってもらうためにあるんですよ』とか『理想のおかあさんにはなれないかもしれないけど、私にしかできない母親にはなるから』といった、事の真偽や善し悪しを越えた、その理由は分からずとも何故だか腑に落ちるような不思議な説得力を感じさせる台詞もあったりする。 最終的には沙恵子と主人公との仲を取り持ってお役御免となるところを……?という瑞穂の行方には(過去を想像するのみだが)何とも言えず、ただ、ただ「良かったね」と声を掛けたくなる形を迎えるのだが、瑞穂の家政婦としての立ち位置を最後まで維持することでドロっとした修羅場にするでもない展開や、それでいて官能的には家政婦としての立ち位置を大いに逸脱した、許されぬ積極さをも垣間見せ、完璧で隙のない家政婦に見えながら実は敏感反応で昂り喘ぐのがオンナとしての魅力の隙になっている描写などはなかなかのものと言わずにいられない。押され気味ながらも大胆に振る舞おうとする沙恵子の誘惑も良好だし、興奮度の高いシチュエーションも随所に用意されているのだが、惜しむらくはその場面の多さに反して直接の官能描写には物足りない部分があることと、好みにもよるが、お尻責めは無くても、あるいはもっと少なくてもよかったかな?と感じたところか。 そして、家政婦は見た!と言うより見ていました、むしろ全てお見通し!といったところか。
DSK
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